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床ずれ(褥瘡)は予防できる!しっかり対処して大切な人の肌を守ろう

床ずれ(褥瘡)は予防できる!しっかり対処して大切な人の肌を守ろう

床ずれは寝たきりや座ったままなど同じ状態でいることで、皮膚の一定の部位が圧迫されて血の巡りが悪くなる、または血流が途絶えることで起きます

大切な人の肌を守ることができるのは最も身近にいる家族です。床ずれはなかなか治すことが難しいので、発症する前にしっかり予防しましょう。

床ずれを予防するには圧迫やずれを防ぎ、皮膚の健康状態の維持・観察を行い、バランスの良い食事を心がけます。皮膚の圧迫を防ぐのに有効なのは、定期的に体の向きを変える体位変換。しかし体位変換は介護者にとって大きな負担にもなります。

そこで役立つのが体位変換を補助するアイテムです。

この記事では床ずれの予防法や体位変換に加えて、体位変換の負担を軽減できるアイテムについて紹介します。あわせて床ずれなどに関わる在宅介護に対する国や企業、医療機関の取り組みなどもお伝えしていきます。

きちんと予防して床ずれ(褥瘡)対策!基本の予防法4つを紹介

床ずれは褥瘡(じょくそう)ともいいます。長時間の圧迫によって酸素や養分が途絶える状態が続くと、細胞が死滅し皮膚は壊死してしまいます。床ずれを起こさないために必ず覚えておきたい予防法を紹介します。

    <基本の床ずれ予防法>

  • 圧迫やずれを防ぐこと
  • 皮膚の健康状態を保つこと
  • 皮膚の観察を毎日行うこと
  • しっかりと栄養をとること

それではさっそく予防法について詳しく説明していきます。

1、圧迫やずれを防ぐこと

床ずれの大きな発生要因の一つが圧迫・ずれです。そのために行いたいのは体位変換と褥瘡予防マットレスの使用。マットレスは介護保険を利用してレンタルすることもできます。

体位変換の仕方については次の項目でお伝えするので、ここでは褥瘡予防マットレスについて説明していきます。

褥瘡予防マットレスとは体圧分散寝具のことです。床ずれは骨の突出している部分などが長時間圧迫することでおきます。体圧分散寝具は骨の突出している部分などにマットレスをフィットさせるこで、圧がかかる面積を拡大(分散)し床ずれを予防します。
褥瘡予防マットレス

参照元:ケープ

体圧分散用具はマットの素材によって主に5つに分けられます。それぞれのマットの種類についてメリット・デメリットを確認してみましょう。

マットの素材 メリット デメリット
エア 個人に合わせて体圧を調整できる マットがパンクしやすい
ウレタンフォーム 圧分散の効果がある 個人に合わせて体圧を調整できない
ハイブリッド エアとウレタンを組み合わせるなど、素材の長所を合わせられる 体圧分散の効果を示すデータが十分でない
ウォーター 個人に合わせて体圧を調整できる 浮力感を不快に思うことがある
ジェル・ゴム 電気などの動力が必要ない マット表面の温度が低いため、使用者の体温を下げる

個人の状態にあったマットレスの使用は床ずれ予防に効果的ですが、体に合わないマットレスを使用した場合は床ずれが悪化してしまいます。

マットレスを使用する場合は医師や看護師、担当のケアマネージャーなどに相談してみましょう。

また、以前は行われていたことでも現在では行われていない対処法もあります。円座(ドーナツ型クッション)の使用や床ずれ部位周辺のマッサージは行わないようにしてください。

2、皮膚の健康状態を保つこと

床ずれ予防には、皮膚の健康状態が良好であることが欠かせません。そのために入浴や清拭を正しく行いましょう。

入浴は皮膚を清潔にするだけでなく、血行を促進する効果もあります。力を入れてゴシゴシ洗うのは厳禁。皮膚を洗うときは、優しく丁寧に泡で包み込むようにしましょう。

入浴や清拭を行ったあとは肌が乾燥しないように、保湿クリームなどを塗ります。

3、皮膚の観察を毎日行うこと

皮膚の観察も毎日行うことが大切です。

もしも骨が突出しているところが赤くなっていたら、その部位がマットなどに触れないように体位を変えます。

30分経って赤みがなくなっていたら褥瘡ではありません。逆に赤みが消えないときは褥瘡になっている可能性があるので医師または看護師などに相談してください。

4、しっかりと栄養をとること

低栄養は床ずれが発生する原因の一つでもあるので、栄養バランスを考えた食事をとるように注意しましょう。床ずれを予防するために取り入れたい栄養素は次のとおりです。

<床ずれ予防に関わる栄養素>

栄養素 主な作用 主な食品
たんぱく質 血液や筋肉をつくる 肉・卵・大豆・乳製品
亜鉛 皮膚や粘膜の健康維持を補助する 魚介・海藻・肉
赤血球をつくる レバー・魚・大豆・緑黄色野菜
鉄が赤血球をつくるのを補助する 魚介・ナッツ・大豆・ココア
カルシウム 骨や歯をつくる 小魚・海藻・牛乳・大豆製品
ビタミンA 肌の健康を維持する 緑黄色野菜・バター・チーズ・卵
ビタミンC 皮膚・粘膜の健康維持 果物・野菜・いも

エネルギーと水分をしっかりとったうえで、床ずれ予防に関わる栄養素を取り入れましょう。

栄養をとることは大切ですが、無理やり食べさせるようなことは絶対にしてはいけません。QOL(生活の質)が低下するだけでなく、誤嚥を起こす可能性もあります。食べないときの原因には次のような理由があります。

  • 食事が合っていない
  • 食べようという意欲がない
  • 食べさせ方がよくない
  • 食べ方がよくない

食事を見て、口を開き、口に入れる、噛む、舌を使って喉に食物を送る、食物を飲み込むという一連の動作はリハビリにもなります。

口から食べる力(経口摂取)があっても、食べようとしない場合は家族だけで解決しようとせずに医師や看護師、ケアマネに相談しましょう。場合によっては嚥下の検査や経口摂取の訓練も検討しましょう。

食べる力がある場合は食べ物にとろみ調整食品を使ったり、自助食器を使ったりして食事がとりやすくなるような工夫が大切です。

自助食器は食器が持ちやすくなっていたり、食材をすくいやすくなっていたりとさまざまな工夫がされています。自助食器には次のようなものがあります。
自助食器

参照元:Sanshin

口から食事をとれない場合は、消化管に栄養剤を直接投与する経腸栄養になります。ですが、この先ずっと口から食事をとれなくなるわけではありません。

経腸栄養でバランスのとれた栄養を取り続けることで健康状態がよくなり、口から食事をとれるようになったというケースもあります。

皮膚の健康状態に関わるので、失禁があるときは医師または看護師に相談しましょう。失禁は治ることもありますし、おむつなどのケア用品は個人に合わせて使用することも大切です。何かあったときは自己判断せずに専門家に話を聞くことを忘れないようにしましょう。

床ずれ予防に効果のあるポジショニング!好発部位に注意しよう

同じ個所を長時間圧迫するのを防ぐためには、2時間ごとの体位変換を行う必要があります。

体位によって、床ずれのできやすい部位は異なります。あお向け(仰臥位)、横向き(側臥位)、座位の後発部位は次のとおりです。
床ずれのできやすい部位

床ずれは特に骨が突出している部位にできやすいので要注意。もし皮膚が赤くなっていたり、すでに床ずれができている場合はその部位を圧迫しない体位にしましょう。

床ずれ予防に有効なポジショニングは30度仰臥位(ぎょうがい)と90度側臥位(そくがい)と言われています。

床ずれ予防のポジショニングには30度ルールというものがあります。身体を少し傾けてクッションなどを挟むことで、接触面積を拡大し皮膚の一部分に負荷がかかるのを防ぎます。

しかし日本褥瘡学会は30度ルールが床ずれに有効としつつも、必ずしも推奨する体位とは明言していません。あくまでも個人の状態や好みの姿勢に合わせた体位を選択することが大切だとしています。

床ずれ予防のポジショニングについてお伝えしたところで、続いては体位変換の仕方をチェックしてみす。次の動画は「上方への移動方法」と「あお向けから横向きへの体位変換」について解説しています。

「画像による体位変換マニュアル」医療法人社団 慈恵会 久藤総合病院 

体位変換やポジショニングなどをした後はシーツや衣服のズレ、皮膚の圧迫感を取り除くために、背抜き・足抜き・腰抜きも行いましょう。

背抜き・・・角度が斜めになるように首筋に手を入れて、腰の上あたりで手を横に抜きます。
足抜き・・・ヒザ下に手を入れて、かかとまでなぞって手を横に抜きます。
腰抜き・・・お腹のくびれ部分に斜めに手を入れて、手を横に抜きます。

床ずれ予防のために必ず行いたい体位変換ですが、「つい忘れてしまう・・・」という人もいるのではないでしょうか。

体位変換のし忘れを防ぐためにはスケジュールを決めるのが効果的です。ベッドサイドなど目のつきやすいところに体位変換スケジュール表を貼っておきましょう。

<体位交換スケジュール例>

時間 体位 チェック
10
12
14
16
18
20
22
24

皮膚が赤くなっている場合はスケジュールを変更して体位変換を行ってください。上のスケジュール例はあくまでも一例なので、個人に合った体位になるように工夫してみてください。また、体位変換をするときは本人へ声をかけてから行うことが大切です。

褥瘡予防マットレスの種類や個人の状態によっては、4時間を過ぎない程度で体位変換を行っていい場合もあります。褥瘡予防マットレスを使用する場合は医師や看護師に、何時間おきに体位変換をするのが適切か相談してみましょう。

床ずれ予防におすすめのアイテム!クッションやグローブを活用しよう

床ずれ予防に欠かせない体位変換ですが、介護者にとってはなかなか負担が大きいですよね。実は床ずれ予防に役立つアイテムはいろいろあるんですよ。

体位変換や移乗の負荷を軽減するスライディングシートや背抜きやポジショニングなどのズレを直すのに使える介護グローブ、ポジショニングをサポートするクッションまであります。

それではさっそく、床ずれ予防におすすめのスライディングシート、グローブ、クッションをお伝えします。

「移座えもん」
移座えもん

参照元:モリトー

上方移動やベッドから車いすへの移動(移乗)、体位変換にも便利なシートです。滑りのいい生地を筒状に縫製しているため、キャタピラーのように生地を回転させながら移乗させることができます。コンパクトに折りたためるので、持ち運びにも便利です。

使用イメージは次の動画で確認できます。
「NASVA療護施設での看護と在宅介護に向けて 07.体位変換・移乗」

「介護グローブ」
介護グローブ

参照元:ケープ

背抜きや移乗、ポジショニングに役立つグローブです。

滑りのいい素材でできているため、重い部位にも簡単に手を差し込められる優れものです。丸洗いができるのも嬉しいポイント。

「フィットサポート」
フィットサポート

参照元:ケープ

褥瘡0を目指している専門メーカの商品です。30度側臥位のポジショニングをサポートしてくれるクッション。丸洗いができるので清潔に使い続けることができます。

体位変換はとても大切なものですが、介護者への負担は大きいですよね。介護者の約8割は腰痛を経験していると言われています。体位変換をするときは次のポイントに注意しましょう。1、体位変換時に腰を屈めすぎないうようにする。2、腰をひねらないようにする。

床ずれ対策に追い風が吹く!褥瘡対策チームにロボットスーツも

疾患を抱える高齢者が増えるなか、床ずれ対策は医療の重要な課題となりました。

平成26年度に診療報酬が改定されて「褥瘡対策未実施減算」や「褥瘡対策管理加算」が新設されたりと、国の褥瘡に関する意識は高まっていることがわかります。診療報酬が改定されたことで、褥瘡対策チームを発足する病院も増えているんです。

褥瘡対策チームは医療に関わる他職種のメンバーで構成され、各専門領域の特性を活かして床ずれの予防や治療を行うことを目的としています。参加メンバーは医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、薬剤師、作業療法士、理学療法士など。

床ずれの対策に向けて前向きな取り組みが増えるのは嬉しいことですよね。そのなかでも注目したいのがロボットスーツです。

移乗をするときに介護者の負担を軽減するためのロボット、本人の自立をサポートするためのロボットも登場しています。

「HAL®介護支援用(腰タイプ)」
HAL®介護支援用(腰タイプ)

参照元:CYBERDYNE

厚生労働省は「介護従事者の負担軽減に資する介護ロボット導入促進事業」を行っており、介護ロボットを導入する施設への費用を助成しています。現時点では費用の助成を施設に限っていますが、今後在宅医療の場でも導入費用が助成されることに期待したいですね。

内閣府が3,000人を対象に行った「介護ロボットに関する特別世論調査」では、介護ロボットを知っている人は73.8%で介護ロボットを利用したいと答えた人は59.8%でした。介護ロボットの魅力として最も多かったのは「介護をする側の心身の負担が軽くなること」。介護者の負担は重要な課題であることがわかります。

頼れる制度はしっかり利用!在宅での床ずれ予防をスムーズに

床ずれ予防には体位変換が効果的ですが2時間おきに行うのは、なかなか大変ですよね。在宅介護をするうえで忘れてはいけないのが一人で頑張りすぎないことです。在宅で介護をする際に頼れる制度はいろいろあります。

国では在宅医療を推進しているため、家族など介護者の労力面や経済面の負担を軽減する福祉制度を設けています。介護保険をしっかり活用して訪問看護やデイサービスを利用しましょう。

マットレスや車いすなどレンタル可能な福祉用具もさまざまです。用途に合わせて、介護生活が便利になるような用具がないかチェックするのも忘れずに。

そのほかバリアフリーへ住宅改修する際も補助金も受けることができます。気になる人はケアマネに相談しましょう。

安心して在宅介護ができるように、頼れる制度はしっかり使うことが大切です。

※記載されている制度や情報などは2016年12月現在のものです。