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日帰り手術や救急医療に力を入れる病院!広島県の病院を紹介

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この記事で紹介する広島県の病院は、救急に力を入れる「広島大学病院」と、県内で初めて日帰り手術を開始した「マツダ病院」です。

広島大学病院は、県内で唯一「高度救命救急センター」の認定を受けました。救急搬送された患者さんの治療や、被ばく傷病者への治療を行っています。

広島県安芸郡にあるマツダ病院は、広島県で初めて「日帰り手術センター」を設置。日帰り、もしくは1~2泊で手術を行い、患者さんの生活リズムを変えることなく治療を行っているのです。

それでは、広島県の2つの病院について詳しく見ていきましょう。

救急医療や緊急被ばく医療を提供!広島大学病院

広島大学病院は、広島県で唯一「高度救命救急センター」としての認定を受けています。

生命の危機にある救急患者を治療する救急医療や、被ばく傷病者を対象とした緊急被ばく医療の提供を行っているんですよ。

まずは広島大学病院の高度救命救急センターが提供する、救急医療について詳しく見ていきましょう。

救急患者だけでなく入院患者にも救命処置を!高度救命救急センター

広島大学病院の高度救命救急センターでは、最重症患者(3次救急※)の救急搬送を受け入れて治療を行っています。

3次救急とは

生命の存続に危険がおよび、一刻を争う重篤な状態の患者さんに対応する救急医療のこと。2次救急では入院が必要な患者さんに対応し、1次救急では外来で治療可能な軽度の患者さんに対応します。

救急搬送された患者さんがまず運ばれるのは、救急初療室です。そこで治療を受けた後、高度救命救急センターで必要に応じてほかの診療科とも連携した治療を受けます。その後の患者さんの管理も、センターの医師が主体となって行うのです。

さらに高度救命救急センターでは、RRS※による院内での急変対応も積極的に行っています。

RRS(Rapid response syastem)とは

病院内で患者さんの異常状態を早期に発見し、心停止になる前に専門チームが治療を開始する院内救急対応システムのこと。患者さんの異常状態を看護師が直接医師に連絡し、医師が早期に治療を開始することで、致死性の高い急変に至ることを防ぎます。

広島大学病院が導入するRRSのメリットは次のとおりです。

RRSのメリット
  • 院内心停止率の低下
  • 入院日数の削減
  • 医療安全管理レベルの向上

RRSの導入により、病棟で働く看護師が入院患者の異変に気づいた際は、すぐに高度救命救急センターの医師に連絡。入院患者が重篤な状態に陥る前に治療を開始し、心停止状態になったり入院期間を延長したりする可能性を減らします。

安全で質の高い医療を患者さんに提供するためにも、RRSは重要な役割を果たしているんですね。

また広島大学病院内の急変患者は、集中治療室(ICU)で受け入れます。最大で14日間の集中治療を行い、さらに入院継続が必要な場合はハイケアユニット※で治療を継続するんですよ。

ハイケアユニットとは

集中治療室(ICU)から移動してきた患者さんを治療する病室のこと。一般病棟の病室と集中治療室の中間にあたる位置にあり、患者さんに高度な治療や看護ケア・処置を行っています。

福島県へ医療スタッフを派遣!広島大学病院が提供する緊急被ばく医療

広島大学病院は「原子力災害医療・総合支援センター」と「高度被ばく医療支援センター」の指定を受けています。

この2つの指定を受けている病院は、全国に4か所しかありません。

日本は世界で唯一、原子爆弾が落とされた国です。被爆地の1つである広島県にある広島大学病院は、日本の緊急被ばく医療体制の一端を担っているんですよ。

2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故が発生した際、広島大学病院は福島県へDMAT※や緊急被ばく医療チームの継続的な派遣を行いました。

DMATとは

災害急性期に活動できる機動性を持った、トレーニングを受けた医療チームのこと。Disaster Medical Assistance Team(災害派遣医療チーム)の頭文字をとり、DMATと呼ばれています。

福島県に派遣された病院スタッフは、現地住民の線量測定や健康管理、被ばく医療体制の構築などを実施。自衛隊のヘリコプターに同乗し、被ばく傷病者を搬送中の診療も行います。

広島大学病院ではHICARE(放射線被爆者医療国際協力推進協議会)やIAEA(国際原子力機関)と連携した教育も行っています。病院スタッフだけでなく、近隣病院や隣接県への講習・指導も実施。緊急被ばく医療への理解を深めてもらう努力をしているのです。

広島大学病院が福島県に継続派遣したDMATとは!

上でも述べたように、DMATとは「災害急性期に活動できる機動性を持った、トレーニングを受けた医療チーム」のこと。最近では2011年3月11日に発生した東日本大震災や、2016年4月14日に発生した熊本地震などの災害時に活躍しました。

ここでは、DMATの成り立ちや具体的な活動内容について紹介します。

DMATが作られたきっかけとなったのは、1995年1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」です。

阪神・淡路大震災の発生時、通常通りの救急医療を提供されていれば「避けられた災害死」が500件存在した可能性があったと報告されています。その後「1人でも多くの命を助けよう」という思いが形になり、2005年4月に日本DMATが発足したのです。

DMATの主な活動は次のとおり。

DMATの主な活動内容

 

具体的な内容
病院支援 ・医療機関からの情報発信
・病院でのトリアージ※
・診療支援
地域医療搬送 ・災害現場から被災地域内の医療機関へ搬送
・被災地域内の医療機関から近隣地域の医療機関へ搬送
現場活動 ・災害現場でのトリアージ
・災害現場での緊急治療
本部機能支援 ・医療本部・医療支部の運営補助
・災害医療コーディネーターの活動支援
トリアージとは

患者の重症度に応じて治療の優先順位を判断すること。順位は4段階あり、それぞれ色分けされています。

赤:最優先治療群(重症)
黄:非緊急治療群(中等症)
緑:軽処置群(軽症)
黒:不処置群(死亡もしくは、助かる見込みが極めて低い)

DMATが活躍するのは災害だけでなく、多数の死傷者を出した殺人事件や事故現場でも活躍しています。この事故対応は、2008年6月に発生した「秋葉原無差別殺傷事件」でも実施されました。

DMATには「日本DMAT」と「都道府県DMAT」の2種類あります。厚生労働省が発足させたのが「日本DMAT」で、各都道府県が独自に発足させたのが「都道府県DMAT」です。多くのDMAT隊員が両組織への登録を行い、必要に応じてそれぞれの指揮下で活動しています。
広島大学病院の基本情報
住所 広島県広島市南区霞1-2-3
最寄り停留所 バス停「大学病院」
病院HP 広島大学病院
病床数 746床
福利厚生 ・看護師宿舎
・院内保育園

広島大学病院はドクターヘリコプターの基地病院です。多数の傷病者が発生した際には、防災ヘリと連携して救急搬送に向かいます。また中国地方の5県と協力し、県域を越えて活動できるよう体制を整えているんですよ。

広島県で初めて日帰り手術を実施!マツダ病院

マツダ病院はマツダ株式会社が運営する企業立病院です。

特徴は、広島県で初めて設置された「日帰り手術センター」。

入院を伴う手術は、患者さんやその家族にとってさまざまな面で負担がかかります。患者さんやその家族の生活リズムを変えることなく、快適な環境で手術を受けてもらうために「日帰り手術センター」を開設したのです。

マツダ病院の日帰り手術センターについて、詳しく見ていきましょう。

1日で入院・手術が終わる!マツダ病院の日帰り手術センター

マツダ病院の日帰り手術センターでは、日帰り手術や短期入院手術を実施しています。日帰り手術の対象となる疾患は、ヘルニアや下肢静脈瘤、痔、胆石症など。

患者さんの体への負担や痛みが少ない手術を実施し、その後の状態や経過に問題がなければ日帰り可能となります。

そのほか、日帰り手術を受けるための条件は次のとおり。

日帰り手術を受けるための条件
  • 日帰り手術の対象疾患である
  • 患者さんが日帰り手術を強く希望している
  • 来院時や帰宅時、帰宅後に付き添い人がいる
  • 通院できる距離に自宅がある

日帰り手術のメリットは次のとおりです。

日帰り手術のメリット
  • 拘束時間が短い
  • 費用が安い
  • 術後の復帰が早い

日帰り手術を受ける患者さんは、朝に入院し、問題がなければ夕方には退院します。入院費用は医療費の多くを占めるため、通常の入院と比べて治療費が2~5割ほど安価です。

さらに血管内手術や内視鏡手術など、体への負担を最小限にした手術であるため、比較的早く生活復帰できます。

日帰り手術の標準的な流れは次のとおりです。

日帰り手術の流れ(一例)
来院日 実施内容
手術の3~4週間前 初診・検査
手術の1週間前 再診・面談
手術当日 ・8:00 入院
・9:00 手術開始
・10:00 手術終了
・15:00 退院判定
・15:30 退院
手術後1週間以内 再診・創部チェック
再診から1週間後 再診

日帰り手術センターでの手術自体は1日で終わりますが、手術前後で診察を受ける必要があります。初診時に診療・検査を行い、再診時には医療コーディネーター※との面接や、手術前のオリエンテーションなどを実施。

医療コーディネーターとは

病院側と患者さんの間に立って、患者さんの納得のいく治療や療養の選択・意思決定をサポートする医療スタッフのことです。

日帰り手術後は、1週間以内に創部チェックを実施。さらにその1週間後にも再診を行い、患者さんが健康な生活を送れるようにサポートしています。

手術に伴う患者さんの不安を軽減するためにも、定期的な診療を実施しているんですよ。

マツダ病院では地域住民への医療提供はもちろん、産業看護師として会社従業員の健康管理も行っています。社内の医務室で働く産業看護師については、次の記事で詳しく紹介していますよ。

カープやサンフレッチェに救護班派遣!イベントナースの仕事を紹介

マツダ病院では、スポーツの試合会場に救護班を派遣しています。医師と看護師で構成される救護班は試合会場で待機し、負傷者の救護に関する業務を行っているんですよ。

マツダ病院が救護班を派遣するスポーツチームは次のとおり。

マツダ病院の救護班が活動するスポーツチーム
  • プロ野球チーム「広島東洋カープ」
  • プロサッカーチーム「サンフレッチェ広島」

試合会場に派遣された看護師は、イベントナースとして働くことになります。

イベントナースの主な仕事は応急処置です。

派遣先は医療機関ではないので、医療行為を行うことはありません。重症であると判断された負傷者は病院へ救急搬送されるため、それまでの救急対応を行います。

また負傷者が運ばれてこない間の待機中は、自由に過ごすことが可能。

スポーツ好きの看護師さんなら、待機中に試合観戦するのもいいですね。

イベントナースについての詳しい内容は次の記事でも紹介されていますので、参考にしてください。

マツダ病院の基本情報
住所 広島県安芸郡府中町青崎南2-15
最寄り駅
(所要時間)
JR向洋駅
(徒歩4分)
病院HP マツダ株式会社 マツダ病院
病床数 270床
福利厚生 ・職員宿舎
・院内託児所
・車両購入時割引制度あり

マツダ病院では、患者さんごとにクリニカルパスを作成しています。クリニカルパスとは、患者さんの治療や検査、看護ケア、経過などをスケジュール表にまとめたものです。患者さん自身で治療内容をよく理解し、自ら積極的に治療に参加することが期待できます。

世界平和のための活動を積極的に行う広島県の病院に注目

広島県内で唯一「高度救命救急センター」がある病院や、県内で初めて「日帰り手術センター」を開設した病院を紹介しました。

広島県は、戦時中に原子爆弾が落とされた被爆地の1つです。

原爆投下から70年以上経った現在も、広島県内の多くの病院がその当時の記憶を受け継いでいます。

広島大学病院がある広島大学は、国内最大規模の原爆放射線医科学研究所を設置。原爆や放射線による疾病の研究や、その治療法の開発を行っています。

マツダ病院は原爆投下直後、マツダ株式会社の寄宿舎や食堂を開放しました。原爆被害者を社内に受け入れ、救護にあたった記録もが残っているんですよ。

世界平和を訴え続ける広島県の病院では、このような歴史を教訓とした看護が学べそうですね。