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社労士に頼る前に知るべき障害年金の申請方法と必要書類

障害年金の申請方法を解説

病気やケガなどが原因で障害が生じた時には、生活や仕事の状態に応じて障害年金を受け取ることができます。

障害年金でいう障害とは、肢体不自由や視覚障害だけを指すのではありません。働いている人でも、がんの通院治療や人工透析を受けていたり、心臓ペースメーカーを使っていたりして、仕事に大きな支障が出ていれば障害年金は受給可能です。

ただ、障害年金は障害がある状態になった時に自動的にもらえるものではなく、自分で請求しないといけません。とは言え、請求したくても、方法が複雑で、何から手を付けていいかわからない人も多いのではないでしょうか。

そんな人は、障害年金専門の社会保険労務士を頼ることもひとつの方法です。しかし、自分でもできるならそれにこしたことはありませんし、依頼するにしても制度を理解しておくと安心ですよね。

そのために最低限知っておきたい、障害年金請求方法の基礎知識をご紹介します。

初診日や障害の状況に応じて違う障害年金の申請方法

障害年金の請求では、初診日や障害の状況によって必要な書類や年金の支給開始日が変わり、主に5つの請求パターンがあります。障害年金の請求のパターンをご紹介します。

説明に入る前に理解しておきたい言葉と書類がありますので、おさえておいてください。

  • 初診日:障害の原因になった病気やケガで、初めて病院を受診した日
  • 障害認定日:障害が認定されるべき日。初診日から1年6ヶ月後の日、または病気やケガがなおって障害の状態が固定(安定)した日です。
  • 診断書:障害の状態などを証明するもので、お医者さんに作成してもらいます。障害年金の請求には必須の書類です。

1、最もスタンダードな障害年金請求方法は認定日請求

認定日請求は本来請求ともいい、障害認定日から1年未満に障害年金を請求する方法です。

障害認定日後3ヶ月以内に、お医者さんの診察を受けて、診断書を書いてもらう必要があります。

認定日請求の場合は、障害認定日の翌月分から、障害年金が支給されます。

ただし、実際に年金の振込が開始されるのは請求日の5~9ヶ月後です。初回振込時には、障害認定日の翌月から、その月の支給額までがまとめて振り込まれます。

  • 診断書:原則として、障害認定日後3ヶ月以内の診断書が必要
  • 年金支給:障害認定日の翌月分から

2、時効に注意!さかのぼって障害年金を受給する遡及請求

障害認定日から1年以上たってから障害年金を請求することを、遡及(そきゅう)請求といいます。遡及請求とは、さかのぼって請求するという意味です。

本来請求との手続きの違いは、診断書の枚数が増えること。

障害認定日から3ヶ月以内の診断書に加えて、請求する時点での診断書が必要になります。時間が立つと障害の状態が変わることもあるので、現在の状況を確認するためですね。

年金は、障害認定日の翌月分から支給されます。ただし時効があるため、5年前までしかさかのぼれません。

  • 診断書:障害認定日後3ヶ月以内の診断書と、請求日前3ヶ月以内の診断書(計2枚)が必要
  • 年金支給:障害認定日の翌月分から(遡及は5年前まで)

3、障害の程度が重くなれば「事後重症による請求」

障害認定日時点では障害が軽く、障害年金をもらえる障害等級に該当していなかったものの、後日悪化するということもありえます。

州外認定日より後に障害等級にあてはまったら行うのが、事後重症による請求です。

請求時点での診断書が必要になり、年金は請求日の翌月分から支給されます。

事後重症による申請の期限は、65歳に達する日の前日(誕生日の前々日)までとなることに注意してください。

  • 診断書:請求日前3ヶ月以内の診断書
  • 年金支給:請求日の翌月分から

4、元の障害と別の傷病が発生!「はじめて2級による請求」

はじめて2級による請求とは、「もともと障害等級2級に該当しない程度の障害があった人が、別の病気やケガをして、それを合わせて2級以上の障害になった」ときの請求パターンです。

後からかかった病気やケガのことを「基準傷病」と呼ぶので、基準傷病請求という言い方をすることもあります。前の障害と基準障害を合わせて2級になった時に申請できます。

別の病気になるというのが、事後重症による請求とは違うポイントです。また、事後重症は65歳に達する日の前日までに請求する必要がありますが、はじめて2級による請求では65歳以降でも請求可能です。
  • 診断書:請求日前3ヶ月以内の診断書(もともとの病気・ケガ分1枚、基準傷病分1枚)
  • 年金支給:請求日の翌月分から

5、初診が20歳未満なら「20歳前障害による請求」

20歳前請求では保険料納付要件は不問

  • 20歳未満(年金に加入していない時期)に初診日がある病気・ケガが原因の障害
  • 生まれつきの障害 など

これらの障害を持つ人は、20歳に達した日(誕生日の前日)に、年金の請求ができます。

20歳直前に初診日がある場合など、20歳になった日にまだ障害認定日が来ていない(初診から1年6ヶ月たっていない)場合には、障害認定日に請求します。

20歳未満だと、国民年金の保険料を全く払っていないのですが、この場合には保険料納付要件は問われません。

ただし、20歳前障害による請求の場合は、所得制限が設けられています。例えば、2人世帯で所得が398万円を超えると年金額が1/2になり、500.1万円を超えると全額支給停止になります。

  • 診断書:20歳に達した日の前後3ヶ月の診断書、または障害認定日3ヶ月後までの診断書
  • 年金支給:20歳になった日の翌月分から、または障害認定日の翌月分から
はじめて2級による請求の場合、請求は65歳以上でもできます。

ただし65歳になる前に、もともとの障害と新たな障害を合わせて「はじめて2級障害」に該当したことが診断書などで証明されている必要があります。

診断書必須!障害年金申請の手続きと必要書類

障害年金の請求パターンがわかったところで、障害年金の申請のおおまかな流れをご説明します。

1、受給の条件を満たしているか確認
2、必要書類を集めて記入
3、提出
4、年金支給

請求してから年金支給開始(初回振込)までは5~9ヶ月かかるのが一般的で、最近では障害年金の申請が多くなったので、さらに審査に時間がかかることもあると言われています。

そうなると、できるだけ早く手続きする必要がありますね。

書類の提出先は人によって異なり、会社員などの厚生年金加入者は年金事務所、自営業者主婦など(国民年金第1号・第3号被保険者)は自治体の年金係です。

この中でもっとも大変なのは、必要書類を集めたり、書いたりすること。個人の状況に応じて必要な書類が増え、たくさんの書類を用意しないといけない人もいるんです。具体的に見ていきましょう。

障害年金を申請したい!まず受給資格を満たしているか確認

障害年金を申請しようと思ったら、まずは年金事務所や市役所の年金窓口で、自分が受給の条件を満たしているか確認してもらいましょう。

  • 年金の保険料を、一定期間ちゃんと収めていたか(保険料納付要件)
  • 初診日に公的年金に加入していたか(初診日要件)

受給の条件など、障害年金の制度の基礎知識については、「がん患者も対象!仕事してても申請可能な障害年金の受給条件と金額」でご紹介しています。

初診の病院と診断書作成した病院が違うなら証明書が必要

必要書類は人によって異なる

条件を満たしていることがわかったら、必要な書類を準備します。必ず用意しないといけない、最低限の書類がこちらです。

  • 年金請求書(国民年金と厚生年金で異なる)
  • 年金手帳
  • 戸籍抄本(記載事項説明書)または戸籍謄本
  • 医師の診断書(障害の状態を証明するもの)
  • 病歴・就労状況等申立書(本人が障害の状態や困難さを訴えるための書類)
  • 振込先通帳等の写し
  • 印鑑

これだけならまだ簡単そうなのですが、個人の状況や申請のパターンに応じて必要書類が次々と追加されます。必要な診断書の数が申請パターンによって違うことも、先ほどご説明しましたね。

全ては書ききれませんが、状況に応じて準備する書類には、このようなものがあります。

  • 受診状況等証明書:初診の病院と診断書を作成した病院が違う場合
  • 請求者本人の所得証明書:20歳前障害の場合
  • 年金加入期間確認通知書:共済組合に入っていことがある場合
  • 世帯全員の住民票:子どもがいる場合
  • レントゲンフィルム:呼吸器(肺など)の病気の場合
  • 心電図のコピー:循環器(心臓)の病気の場合 など
初診日からかなり時間が経っているとか、初診の病院と障害の状況の診断書を書いた病院が違う場合には必要書類の準備が複雑になります。次に説明しますね。

請求手続きで注意すべきポイントと書類の書き方

請求の必要書類がたくさんあることはわかっていただけたと思います。

住民票や所得証明などは市役所に行けば比較的簡単に手に入りますが、集めたり書いたりするのに苦労する書類もあります。

特に苦労しやすいパターンはこの3つです。

  • 受診状況等証明書がとれなくて、初診日の証明ができない
  • 決められた期限内に診断書を書いてもらえなかった
  • 病歴・就労状況等申立書の書き方がわからない

それぞれについて詳しくご説明します。

受診状況等証明書が取れない場合は申立書と証拠書類を作成

障害年金を申請するには、初診日に公的年金に加入している必要があるので、初診日を証明することが重要です。

初診の病院と、診断書を書いてくれる病院が同じ場合には、初診日は診断書に記載されますから、なんの問題もありません。

問題になることが多いのは、初診の病院と診断書を書いてくれる病院が違う場合。引越したり、体の状態によって転院せざるを得なかった人があてはまります。

この場合、初診の病院で書いてもらう「受診状況等証明書」という書類が必要です。初診の病院で受診状況等証明書を書いてもらえれば一件落着ですが、実際にはこんなこともあります。

  • 初診の病院が廃業していて、受診状況等証明書作成を依頼できない
  • すでにカルテが廃棄されたので、受診状況等証明書を書いてもらえない

こうなると「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を作りますが、初診日が特定できないという理由で不支給になってしまうこともありえます。

病院にかかったことがわかるものを一緒に提出すれば、年金を支給される可能性が高まるので、探してみましょう。

<病院にかかったことが証明できる書類の例>

  • 障害者手帳
  • 民間保険給付申請時の診断書
  • 健康診断の記録
  • 母子手帳
  • 健康保険の給付記録
  • おくすり手帳
  • 診察券
  • 領収書 など

3ヶ月を過ぎた診断書で申請して受給できた事例もある

障害認定日後3ヶ月以内の診断書が必要

次に診断書についてです。

認定日請求(本来請求)の場合は、障害認定日から3ヶ月後までに診断書が必要になることはご説明しました。障害認定日から3ヶ月以内に、お医者さんの診察を受けて、診断書を書いてもらわないといけません。

6ヶ月後の診断書でも、障害認定日当時の状況が推察できるような内容であれば、年金をもらえた例もあります。しかし、当然、スムーズに認められるわけではなく、支給されない可能性もあります。

そこで、3ヶ月以内の診断書がない場合は、事後重症での請求を行うことが多いです。障害認定日まで遡って年金を請求することはできませんが、請求日時点での診断書をもらって、請求することができるというわけです。

病歴・就労状況等申立書は困っていることを具体的に記入

もうひとつ、大事な書類があります。診断書をもらったあとに書く「病歴・就労状況等申立書」です。

この書類は、本人が自分の障害の状況や、障害があることによって起こっている日常生活や仕事上の困難さを訴えるためのものです。

どのくらい仕事に支障があるのか、誰が読んでも理解できるように書く必要があります。

具体的な作業名を挙げて「前にできていた○○が今はできない」と書くとか、勤務時間や日数などの数字を使ったりするといいでしょう。

ダメな記入例と良い記入例を挙げましたので、参考にしてください。

ダメな例 病気の治療をしながら仕事をしていて、仕事量を減らしてもらってなんとか仕事ができているものの、かなり辛い。
良い例 今までは○○作業をしていたが、病気のせいで起こるしびれのために負荷の軽い●●作業しかできなくなった。病気になると比べて○割くらいしか働けない。
良い例 今までは連続して○○分作業ができていたが、抗がん剤の副作用で疲れやすくなり、連続●●分しか働けなくなった。

60~65歳の人は老齢年金の繰上げ請求に要注意

最後に、60~65歳未満の人が障害年金を請求するときに気をつけておきたいことをご紹介します。

老齢年金の繰上げ請求※を行っていると、初診日の日付によっては障害基礎年金をもらえない場合があります。

繰り上げ請求の手続きをした日より後に初診日があると、障害年金はもらえません。ただし、初診日時点で厚生年金に加入していれば、例外として請求は可能です。

老齢年金の繰上げ請求とは
 
老齢年金とは、65歳からもらえる、老後の生活のための年金(一般に「年金」というときにイメージするもの)のことです。

繰上げ請求という手続きをすれば、60歳からでももらうことができます。男性は生年月日が昭和28年4月2日~昭和36年4月1日、女性は昭和33年4月2日~昭和41年4月1日の人が対象です。

病歴・就労状況等申立書については注意点がもうひとつ。

お医者さんの意見である診断書や受診状況等証明書と内容がずれていると信頼性が疑問視されてしまいます。診断書をもらったあとで、診断書を見ながら記入してくださいね。

書類準備が難しいなら社会保険労務士に相談を

障害年金の請求方法は状況によっていろんなパターンがあり、書類が増えたりして複雑でしたね。
 
特に、初診日や障害認定日からかなり時間が経っている人ほど、初診日の証明ができそうにないとか、指定されている期限内の診断書がないといった問題を抱えやすいです。
 
請求の基礎知識をおさえた上で、必要な書類を自分で用意するのが難しそうだと感じた人は、そこで諦めるのではなく、社会保険労務士に相談してみるのもいいでしょう。
 
障害年金を専門に扱っている社労士事務所もありますし、相談だけなら無料の事務所もありますよ。
 
さかのぼれる範囲に時効がある遡及請求、請求日の翌月分からの年金がもらえる事後重症やはじめて2級の請求では、請求が早いほどもらえる年金が多くなります。
 
障害年金をもらえる可能性がある方は、いますぐ行動を起こしましょう。