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宮城県で注目の病院!東日本大震災で活躍・日本初の地域医療支援病院

宮城県で注目の病院!東日本大震災で活躍・日本初の地域医療支援病院

宮城県には約140の病院、約1,600のクリニック(一般診療所)があります。ここでは数ある宮城県内の医療施設のなかで、特に注目したい2つの病院を紹介します。

一つ目は「石巻赤十字病院」。東日本大震災発生時、混乱のさなか市内で唯一機能する病院として整然と対応しました。その対応の影には1人の医師の存在があるんですよ。

二つ目は「仙台オープン病院」。医療機関の連携や支援を目的とした「地域医療支援病院」は全国にいくつかあるかご存知ですか?・・・その数は300以上にも上ります。実は地域医療支援病院の第一号は宮城県にあるんです。

それでは宮城県で注目の病院「石巻赤十字病院」と「仙台オープン病院」について、お伝えします。

東日本大震災発生時に市内で唯一機能「石巻赤十字病院」

石巻赤十字病院は東日本大震災後、市内で唯一機能していた急性期病院。地震発生後の迅速な対応や、避難所アセスメントなどは「災害が起きた際のモデルケースになるのでは」と注目されています。

石巻赤十字病院は地震発生から4分後には対策本部を設置、さらに3分後には通常の診療を中止して災害対応へと切り替え。

発生から1時間以内には、ビニールシートを敷いてトリアージ※エリアを完成させました。

トリアージとは

患者の重症度に応じて治療の優先順位を判断すること。順位は4段階あり、それぞれ色分けされている。

赤:最優先治療群(重症)
黄:非緊急治療群(中等症)
緑:軽処置群(軽症)
黒:不処置群(死亡もしくは、助かる見込みが極めて低い)

この迅速な対応の裏には、石巻赤十字病院の医師による活躍があったんですよ。続いては、震災発生当時に石巻赤十字病院の外科医にして、災害医療コーディネーターを務めていた石井正(いしいただし)医師についてお伝えします。

1万5千人のスタッフの指揮を執った医師

石井正医師は2007年に医療社会事業部長(石巻赤十字病院)に就任し、災害時マニュアルの全面改定を開始しました。

これは「近い将来に起こる」といわれていた、宮城県沖地震に備えてのことだったのです。1年間に及ぶマニュアル改定の末に、それぞれの担当や責任者を実名記入した実用的なマニュアルが完成。

そして震災発生一カ月前の2011年2月に、石井医師は宮崎県から災害医療コーディネーターを委託されています。

震災発生後は実名入りの改定マニュアルが大きな役割を果たし、初動の対応は迅速に行われました。

その後、石井医師は全国から集まった1万5千人、3633もの医療チーム(石巻圏合同救護チーム)の指揮を執り、震災により機能停止した役所に代わり避難所の情報収集を実施。

16のチームで300カ所以上の避難所を回り、献身的な努力によって避難所アセスメントはわずか3日間で終了。そして、このアセスメントは一度だけでなく、継続的に実施されました。震災発生直後からの継続的な調査・記録は日本の災害史上初めてです。

石井医師の対応によって、未曾有の大震災という混乱にあっても、看護師などの医療スタッフは整然と対応することができました。

石井医師は現在、東北大学病院で活躍しています。

石巻赤十字病院の基本情報
住所 宮城県石巻市
蛇田字西道下71
病院HP 石巻赤十字病院
病床数 約460床

「災害医療ACT研究所」は東日本大震災の教訓を生かすために、石巻赤十字病院や石巻圏合同救護チームのメンバーが中心となって設立しました。研究のみでなく、有事の際は現場へ向かったり、統括支援を行ったりしています。

全国初の地域医療支援病院!「仙台オープン病院」

平成10年9月、仙台オープン病院は全国初となる「地域医療支援病院※」の承認を受けました。

地域医療支援病院とは

原則として紹介外来制であり、特殊な診療や治療が必要な患者に対し、地域の診療所・クリニックでは対応できない高度な治療を行う病院のことです。

地方の医療機関の連携や支援を目的として作られた医療機関の区分のひとつで、各都道府県知事が個別に承認しています。

地域医療支援病院の承認を受けた病院は、全国に300以上。そのなかでも第一号として、地域医療支援病院に承認されたのが宮城県の仙台オープン病院です。

同病院では設立当初の昭和51年から、地域の診療所などと連携して診察に取り組んできました。

地域の診療所などで受診をして、さらに高度な医療が必要な場合に紹介状をもらい、基幹病院を訪れるシステム。今となっては当たり前の仕組みですが、仙台オープン病院では40年前から取り入れています。

仙台オープン病院は成り立ち・システムが「オープン」!

仙台オープン病院は医療機器、病床を登録医師に開放したり、共同利用施設や生涯研修などの場としても活用できるような診療体制をとっているんですよ。

それでは同病院の「オープン」について詳しく見ていきましょう。

仙台オープン病院の「オープン」
  • 成り立ち
  • 登録医師
    (かかりつけ医)
  • 仕組み
    (システム)
  • 365日24時間対応

仙台オープン病院は、市と医師会により設立された病院です。公設民営型のため「成り立ち」がオープン。

また登録医師(かかりつけ医)は600名を超えていて、高度医療が必要な場合はオープン病院と協同で治療を行います。「登録医師・仕組み」ともにオープンなんですよ。

そして救急受入れには、「365日24時間」オープンに対応。救急医療に力を入れるだけにとどまらず、退院支援・在宅医療の支援なども行っています。

その名のとおり「オープン」な仙台オープン病院は、地域医療の頼もしい味方ですね。

仙台オープン病院の基本情報
住所 宮城県仙台市
宮城野区鶴ヶ谷5-22-1
病院HP 仙台オープン病院
病床数 約330床

地域医療支援病院として認められるには、病床数や紹介患者数など医療法に記載された要件をすべて満たす必要があります。数院しか認定されていない都道府県もあるんですよ。

災害医療・地域医療を支える宮城県の病院

この記事では宮城県で注目の2つの病院を紹介しました。

「石巻赤十字病院」は東日本大震災発生時から、地域医療を支え続けてきました。その影にはマニュアルを全面改訂し、1万5千人を指揮、避難所アセスメントを実施した、医師の存在がありましたね。

そして献身的に医療を提供した医師や看護師や薬剤師などの医療チーム。大学病院や日本赤十字社、総合病院など、さまざまなチームが枠を超えて団結していたそうです。

仙台オープン病院は日本初の「地域医療支援病院」。いち早くから地域医療の連携に取り組んできました。いざという時の頼もしい病院です。

宮城県には、まだまだ特徴のある病院がたくさんあります。気が向いたときにでも、近くの病院の取り組みに注目してみてはどうでしょうか?意外な発見があるかもしれません。