科別の看護師さんの仕事をご紹介

教えて!精神科の看護師の待遇やお仕事って?求められる人材は?

教えて!精神科の看護師の待遇やお仕事って?求められる人材は?

看護師の勤務先として、医師が標榜する診療科の数と同じだけの、多くの科があります。看護師の資格があれば、どの科でも働くことは可能なわけですが、それぞれの科によって接する患者さんの状態は違いますし、お仕事の内容や求められる人材も違ってきます。

また、同じ診療科でも大学病院や総合病院なのか、救急指定病院になっているのか、開業医院なのか等によって、仕事や勤務体系が大きく異なることもあります。

今回は、数ある診療科の中から「精神科」にスポットを当てて、お仕事内容や勤務先、待遇や気を付けるべき点などについてご紹介していきます。他の科では味わえないやりがいが得られる精神科。ぜひ、その世界を覗いてみて下さい!

精神科ってどんなところ!?扱う病気と看護師の役割とは

誰でも一度はお世話になったことがあるであろう内科などと違って、縁のない人には全く未知の世界といってもよい精神科。実は、どんな人でも掛かる可能性がある科なのですが、偏見を持つ人も少なくないのが実情です。

まずは精神科がどんなところかをご紹介しますので、ぜひ正しい知識を持っておきましょう!

精神科で扱う病気

精神科に来る患者さんは、どんな病気の方が多いのでしょうか。実際のところ、精神科領域の病気って、とてもたくさんあるんです。

  • 統合失調症
  • うつ病・躁うつ病
  • 薬物・アルコールなどの各種依存症
  • 人格障害
  • 適応障害
  • 強迫神経症・パニック障害などの各種神経症
  • 自閉症・注意欠陥多動性障害などの発達障害
  • 震災・犯罪被害・虐待等によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 認知症

細かく見ていけばもっともっと多くの病気があります。

精神疾患の患者数
患者数の推移としては、こちらの表が参考になります。高齢化社会という情勢を反映してか、認知症が増加してきていますね。

発達障害は原則として3歳までに診断が付くものですし、認知症は基本的に高齢者の疾患です。また、うつ病や適応障害、PTSDなどは環境によってどんな人でも罹り得るものです。

というわけで、精神科を受診する方々は、幼児からお年寄りまで幅広い年齢層になっており、誰もが受診する可能性のある科なんです。

精神科看護師の仕事内容とは

精神科で働く看護師の基本的なお仕事は、以下のようなものです。

  • 投薬・注射・採血
  • 予診(アナムネ)
  • デイケア・ナイトケア

薬剤の投与や注射・点滴、血液検査などの各種検査は、どの科でも看護師の仕事の基本であり、精神科も同様です。そして、精神科ならではのお仕事としては、デイケア・ナイトケアや予診があります。

デイケア・ナイトケアは心を病んだ人が社会復帰するためのリハビリのようなもので、患者さんが集団でスポーツやゲーム、レクレーション、作業、ディスカッションなどを行います。総合病院はもちろん、近年は開業クリニックでもデイケアやナイトケアを行うところが増えています。

予診の重要性

また、予診は精神科において非常に大切なお仕事のひとつです。初診の患者さんは、医師の診察を受ける前に予診を受けます。そこで、来院の目的・現在困っている症状・生育歴・家族構成・睡眠や食事は取れているか等、詳しく聞き取ります。

精神科の病気は、たとえばガンや骨折などと違って、レントゲンやMRIなどによって治療すべきところが目で見えるわけではありません。たとえば、不眠という症状ひとつとっても、うつ病なのかトラウマによるものなのかは、患者さんの過去を聞き取らなければ分かりません。

診断が違えば薬や治療方針も違ってきますから、医師が正しい診断ができるような情報を予診でしっかりと得ておかなければなりません。しかし、精神科に来るのは心が弱っている患者さんですから、いろいろ聞かれると不安になったり状態が悪くなる危険性もゼロではありません。

患者さんの心に土足で踏み込まないようにしつつ必要な情報を過不足なく聞き取るという、なかなか高度なテクニックが必要になります。

病院によっては、予診を研修医、臨床心理士や精神保健福祉士などが取る場合もありますが、看護師に任されているところもあります。精神科が初めてで自信がない方は、上記の他職種の人の予診に陪席させてもらうと、勉強になると思います。

他職種との連携

他職種との連携

精神科で働くコメディカル(医療現場で働く医師以外の職種)として、看護師以外にも臨床心理士や精神保健福祉士、作業療法士などがあります。彼らと連携をうまくとっていくことも他科にはあまりない重要な仕事のひとつです。

チーム医療にうまく加わるためにも、他職種の役割を理解しておくことも大切です。以下に、それぞれの職種について簡単にご紹介します。

職種 役割
臨床心理士 心理検査やカウンセリングを行う
精神保健福祉士 精神障碍者手帳の手続きや社会資源の提供などを行う
作業療法士 基本的動作や社会適応力を高めるための作業療法を行う

どの職種も、デイケアなどを看護師と共に行う病院も少なくありません。彼らは高い専門性を持ち合わせた職種なので、上手に連携をとることが患者さんのためになっていきます。

しかし、精神科のコメディカルの中で最もひとりひとりの患者さんの傍にいる時間が長く、日常の中の些細な変化に気づけるのは、看護師とも言えます。看護師ならではの視点で気づいたことや考えたことを伝えて共有していけば、他のコメディカルにも喜ばれるでしょう。

精神科で起きるつらいこと

精神科で診る主要な病気のひとつであるうつ病には、「希死念慮・自殺企図」という症状があります。死にたくなってしまう、本当に自殺を図ってしまうというのが症状のひとつなのです。そのため、うつ病の自殺は「自殺」というより「病死」と捉える向きもあります。

医師もコメディカルも患者さんの自殺を防ぐために全力を挙げていますが、どうしても防ぎきれないこともあります。他科に比べれば、圧倒的に患者さんの自殺が多いのが精神科です。

また、自殺までいかなくても、心を病んだ患者さんを相手にすることで自分も疲弊してしまう看護師も多いです。統合失調症の急性期や依存症の患者さんは、妄想があったり感情をコントロールできなかったりするケースも多いので、その状態にある患者さんから暴力や暴言を受けることも時にはあり得ます。

このようなことから、精神科の看護師には、タフでしなやかなメンタルが求められます。

研修会に出席したり、オフタイムにうまくストレス発散したりするのも、大切なことですね。

従来からの統合失調症やうつ病などの他、近年では発達障害や認知症の患者さんも増えているのですね。

患者さんの心に配慮しつつ予診を取ることや、医師や精神保健福祉士、臨床心理士など他の専門家との連携も、精神科看護師の重要なお仕事なんですね。

精神科にはどんな勤務先があるの?夜勤はあるの?それぞれの特徴

精神科の特徴をお伝えしてきましたが、「なんだかすごく大変そう…」と感じた方も多いかもしれません。確かに楽ではないお仕事ですが、勤務先によっては比較的大変な事が少ないところもあります。

精神科看護師の勤務先にはどんなところがあるのか、それぞれどんな特徴があるのか、見ていきましょう。

精神科看護師の勤務先

精神科には病院の規模や形態によって、以下のものがあります。

  • 大学病院や総合病院の精神科
  • 単科の精神病院
  • 開業医院(クリニック)

どれも精神科という点では同じなのですが、それぞれで扱う患者さんの病気や看護師の勤務形態が異なります。

一般的に、大学病院や総合病院では統合失調症などの重い患者さんが多く、開業医院は入院の必要のない軽い患者さんが多い一方で、人格障害などの対応が難しい患者さんも多いです。

また単科の精神病院には歴史が古いところも多く、アルコール依存症を専門で診ているというようなところもあります。依存症を始めとする何か特定の病気を専門的にやりたいという希望がある看護師は、その病院で多く見ている症例をサイトなどで確認してみてもいいでしょう。

病棟の種類

クリニック以外の精神科には基本的に病棟があり、以下のような種類があります。それぞれの病棟の特徴を大まかにまとめると、このようになっています。

病棟の種類 特徴
急性期病棟 ・興奮、混乱、混迷などの症状がある患者さんが多い
・投薬管理が非常に重要になる
・暴力や暴言を受けるリスクが高い
・病状が落ち着いたら一般病棟などへ移動する
慢性期病棟 ・病状は落ち着いている患者さんが多い
・中期~長期的な治療や療養を要する患者さんが多い
・病院によっては10年以上の長期入院患者も多い
閉鎖病棟 ・急性期/慢性期にかかわらず病棟入口に鍵がかかっており、
患者も外部の人も自由に出入りができない
一般病棟(開放病棟) ・他科の病棟と同様に自由に出入りできる
・病状が軽い患者さんが多い

閉鎖病棟か開放病棟かは、患者さんの状態にもよりますが、各病院の理念によるところも大きいものです。人権や社会復帰を重視して、病状が重い患者さんでも開放病棟に入院するという病院も増えてきました。

そういった病院では、看護師はより高い注意力を持って患者さんを見守らなければなりませんので大変ではありますが、患者さんの人間らしさを奪わない看護ができるため、やりがいも大きいものです。

夜勤はあるの?

精神科も他の科と同様、病床がある病院であれば夜勤もあります。したがって、大学病院や総合病院、単科の精神病院には夜勤があります。一般的に開業医院には外来のみで病床はないので、夜勤もありません。ただし、病床がある医院ならば、夜勤もあります。

夜勤でのお仕事は、ナースコールへの対応や見回りなど、基本的には他の科の夜勤と同じです。しかし、精神科ならではのお仕事もあります。

精神科の入院患者さんには不眠症状がある方も多く、また、夜間に不穏になる患者さんもいるため、丁寧にお話を聞くなどの対応が必要になることもあります。

したがって、精神科の病棟勤務のナースは精神的・身体的負担も多く、特に夜勤は他科の夜勤よりも大変なケースが多いことを覚悟したほうが良いかもしれません。

慢性期病棟での長期入院患者さんが多いことや、閉鎖病棟があることは、精神科の特徴ですね。急性期病棟では特に、患者さんから暴力や暴言を受けることもあり得ます。

でも、暴力などは病気の症状なので、投薬管理をしっかりすることが予防にもなります。看護師としての仕事をしっかりすることで、患者さんの治療になるだけでなく、自分の身も守れるわけですね。

精神科の看護師のお給料は?専門資格や職探しのことも知りたい!

精神科の看護師には、いろいろな勤務先や職務内容があることをお話しました。やりがいがある反面、大変な事も多い精神科ですが、お給料はどのようになっているのでしょうか。精神科看護師のお給料やキャリアアップ法などについて、ご紹介します。

精神科看護師のお給料

精神科の看護師のお給料は、大きな病院では、「精神科手当」というものがつく病院もありますが、基本的に他科とそれほど変わりがありません。

ただし、精神科の特徴として残業が少ないということがあり、残業手当を稼げないために支給額が他科よりも少なくなるということはあり得ます。

さらに夜勤のない開業医院は、残業手当はもちろん夜勤手当がつかないこともあって、大学病院などの精神科看護師よりも、さらにお給料が低くなる傾向があります。ただし、開業医院の給料は院長の考えによりけりですので、看護師を高く評価している医院なら良いお給料を出しているところもあるかもしれません。

キャリアアップしたいなら資格を取ろう!

お給料アップしたいなら、専門的スキルをみがくことが前提となります。精神科で働く看護師のための専門資格として、

  • 精神専門看護師
  • 精神科認定看護師

という認定資格があります。これを取得すれば、患者さんに還元していけるだけでなく、資格手当や基本給アップも期待できます。どちらも日本の看護師資格を持っている人を対象にした上級資格です。

また、どちらも取得までに時間も労力もかかり、簡単に取れる資格ではないだけに、持っていれば精神看護のプロフェッショナルとしての評価が期待できます。

確実にお給料アップにつながりますし、専門家としての知識や経験を認められるため、職場内で治療方針などの意見も言いやすくなります。

資格の取得方法

まずは、精神専門看護師からご紹介します。精神専門看護師とは、以下のような制度に基づいています。

専門看護師制度は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的としています。
引用元:公益社団法人 日本看護協会

つまり、様々な医療分野に専門看護師があり、中でも精神科を専門とするのが精神専門看護師というわけです。

この資格を取るのはなかなか大変で、大学院で専門教育を受けて実務経験を積み、書類審査と筆記試験を受けて合格する必要があります。

ちょっとハードルが高すぎると感じた方は、まずは精神科認定看護師の方からチャレンジしても良いかもしれません。こちらは、

精神科で5年以上の実務経験

受講資格試験を受験・合格

研修会と実習の受講

認定試験を受験・合格

このような流れで取得できます。

精神科で働くには

さて、ここまでお読みになって、「精神科で働いてみたいな」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。精神科は、新規開業する医院も多いですから、職場としては比較的見つけやすいかと思います。

精神科で働くには、ハローワークや就職情報サイトなどで求人を探すほか、看護師求人専門のサイトもあるので、ぜひご活用ください。

「精神専門看護師」や「精神科認定看護師」といった精神科ならではの専門資格を取得すれば、お給料アップはもちろん、自他ともに認める精神科看護の専門家としてキャリアアップが可能です。頑張ってチャレンジしてみるのもいいですね。

精神科ナースの求人は決して少なくありません。看護師の転職サイトや各病院のサイトにも求人情報が載っていますから、参考にしてください。

タフな心と人への優しさが必要!精神科の看護師はやりがい充分!

精神科は閉ざされた領域というイメージもあるかと思いますが、基本的なお仕事としては他科と変わりません。もしも精神科が初めてで不安ならば、まずは開業医院でメンタルの不調を抱える方々と接する中で、人の心や病気への理解を深めていくのも良いですね。

ただし、外来だけの医院には統合失調症や重いうつ病の方はほとんどいないので、より深く精神科領域を学びたいならやはり大きな病院がオススメです。大変ですが、やりがいがありますし、お給料も夜勤がある分期待できます。

また、ご自身の精神衛生を保つのも、精神科看護師の大事なお仕事と言えます。タフな心身に自信のある方、人に優しくするのに喜びを感じる方には向いている科だと言えます。