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睡眠学習って本当にできるの!?睡眠時の脳の働きについて

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最近は海外旅行も身近な世の中になってきました。海外から日本への旅行者も増え、今後は英語を話す機会も増えてくるでしょう。

英語をマスターすれば仕事の幅も広がるし、海外旅行などプライベートも充実させることができます。しかし英語を勉強するとなると、壁になるのがなんと言っても語彙力ですよね。

学生時代に単語帳など使って、ひたすら覚えのに苦労したことを思い出してしまいます。もっと簡単に覚えれないかな~?と、きっと多くの人が思ってたんじゃないですか?

そんなあなたにとっておきの学習法を紹介しましょう。その名も「睡眠学習」です!

なんか怪しいですか?そんなことはありません!

実は、暗記だけなら寝ながらだってできるんですよ。

この睡眠学習の効果を実証するため、世界各国でいろいろな実験が行われていました。今や睡眠学習は科学的に効果が証明できる時代なんです。

睡眠学習は可能だった!国内外の実験結果で明らかに

睡眠学習について代表的な各国の実験
  • スイス国立科学財団(SNSF)によるオランダ語の単語学習実験
  • イスラエルのワイツマン科学研究所による音と匂いの識別実験
  • 日本の熊本大学による睡眠と記憶の神経回路分離研究

この中で1つ、スイス国立科学財団(SNSF)によるオランダ語の単語学習実験について紹介しましょう。

実験は学生60人で行いました。午後10時、全員に初めて聞くオランダ語の単語を学んでもらいます。

そのうち30人は仮眠室で仮眠をとり、学んだ単語の録音を流しておきます。残りの30人はそのまま学習室に残り、同じように学んだ単語の録音を聞いてもらいます。

午前2時に仮眠をとっていた学生は起こされて、60人全員でオランダ語の単語テストを行いました。

結果は、なんと!仮眠していた30人のほうが成績が良かったというから驚きですね。

これが睡眠学習の効果です。

寝てただけなのに、なぜ起きて録音を聞いていた学生より成績が良いのでしょうか?この謎を解くためにまず、人間が記憶するときの脳の働きについて説明しましょう。

睡眠学習に関しての実験はここで紹介したもの以外にもたくさんあります。興味のある人は一度調べてみると面白いですよ。

記憶には短期記憶と長期記憶の2種類があり、短期記憶の情報は忘れやすい

記憶には大きく分けて2種類あります。

一時的な記憶で忘れやすい「短期記憶」と、なかなか忘れにくい「長期記憶」です。

昼間の出来事や学習した内容は、まず短期記憶として脳に保存されます。短期記憶は保存できる量も限られていて、情報が上書きされればすぐに忘れてしまいます。

その短期記憶の中で、一部の情報は長期記憶へと移動します。長期記憶は保存できる量に制限がなく、保存時間も数日から生涯にわたってと、とても長いことが特徴です。

学習したことを忘れないようにするためには、長期記憶に情報を移さないといけないんですね。長期記憶に移されない情報は短期記憶のままとどまって、いずれ上書きされて削除されます。

日頃集めた多くの情報は、そのほとんどが短期記憶のまま忘れてしまうんです。

物覚えが悪く、嘆いているあなた!あなただけじゃありません。

人間は学習したことを1時間後には約半分も忘れてしまう驚きの実験結果があるんです。次は人間がどれだけ忘れやすい生き物か説明しましょう。

短期記憶を長期記憶に移すにもコツがあり、物覚えの良い人はそのコツをうまく利用しています。短期記憶を長期記憶に移すコツについて次に説明します。

「人は忘れてしまう生き物」 記憶するには何度も復習することが大切

エビングハウスの忘却曲線を見たことがありますか?

エビングハウスの忘却曲線

これは学習した情報量を100として、経過時間後にどれだけの情報量を覚えているかグラフで示したものです。

このグラフを見ると

学習した内容を

20分後には42%忘れる
1時間後には56%忘れる
1日後には74%忘れる

ということがわかります。

20分後にはすでに42%も忘れちゃうなんて、びっくりですね。

じゃあ忘れないようにするためにはどうしたら良いか?それは定期的に復習するしかありません!忘れるたびに復習して覚え直すんです。

忘れると覚えるを繰り返すことによって、脳が重要な情報だと判断して長期記憶として保存してくれるからです。

記憶の定着率の違い

上のグラフはエビングハウスの忘却曲線を元に、復習した場合と復習しなかった場合の記憶の定着率の違いを示しています。

忘れるたびに復習をした場合は、記憶の定着率が復習しなかった場合にくらべて、ものすごく高いのがわかりますよね。

人間は忘れやすい生き物で、物事を記憶するには復習がいかに大事か理解できましたか?それではその記憶がいつ、どのように行われるか説明しましょう。

学生時代に予習と復習が大切だと教わりましたが、記憶の定着率を上げるための方法だったんですね。短期記憶だけで終わらないよう、忘れるたびに復習して定着させましょう。

記憶は寝ている間に行われる!睡眠時の脳の働きについて

人間は睡眠に入るとまず深い眠りに入ります。この深い眠りをノンレム睡眠といい、逆に浅い眠りをレム睡眠といいます。

ノンレム睡眠とレム睡眠は約90分かけて入れ替わり、これを一晩で約4~5回繰り返します。

ノンレム睡眠とレム睡眠

眠り始めは深い眠りの時間が長く、レム睡眠よりノンレム睡眠の割合が大きいです。しかし朝方になるにつれ、徐々に浅い眠りのレム睡眠の割合が大きくなるため、体が目覚めるようになります。

深い眠りのノンレム睡眠は主に脳を休める睡眠で、浅い眠りのレム睡眠は体を休める睡眠のことをいいます。

体を休めるレム睡眠のときには脳は活発に働いているので、夢を見るのはこのレム睡眠のときだということがわかっています。

このように脳を休めるノンレム睡眠と体を休めるレム睡眠にはそれぞれに重要な役割があり、人間が何か記憶するには脳が働いているレム睡眠時に行われています。

記憶の整理を行うレム睡眠!1日のうち情報整理に集中できる唯一の時間帯

人間は夢を見ている間に記憶の整理を行っているって知ってましたか?昼間の出来事や学習した内容を脳が重要か重要じゃないかを判断し、夢を見ているレム睡眠時に重みづけをしているんです。

この情報は生きてく上で必要なものか?自分にとって大切な情報か?と判別した上で、重要だと判断した情報が長期記憶として脳に保存されるんです。

この短期記憶から長期記憶への変換は、浅い眠りのレム睡眠時にしか行われません。

人間は一日にものすごい量の情報を集めますが、睡眠時にちゃんと脳が必要な情報、そうでない情報を振り分けて整理しているんですね。

では、深い眠りであるノンレム睡眠時には何が行われているんでしょうか?

睡眠学習はノンレム睡眠に行おう!寝付いて始めの90分がオススメ

ノンレム睡眠は主に脳が休まる睡眠と説明しましたが、体は起きているため光や音は多少感じることができます。

また、寝返りがうてるのもこのノンレム睡眠のときなんですね。

一方、記憶の整理をするレム睡眠のときは体が休んでいるため寝返りもうたないし、耳や目も働かないため物音がしたり明るくなっても気付きません。

つまり睡眠学習をするなら、周囲の音が聞こえるノンレム睡眠時に音声を聞く必要があります。

じゃあ寝ている間のいつ聞けば良いかというと、寝始めの90分に聞くのがおすすめです。

寝始めは深い眠りのノンレム睡眠の割合が大きく、朝方になるにつれ徐々に浅い眠りのレム睡眠の割合が大きくなると説明しましたね。

音声を一晩中聞いていては脳も疲れてしまうので、脳を休めるノンレム睡眠の割合が大きい寝始めの90分に聞くようにしましょう。

人間はすぐ忘れてしまうので、学習と睡眠の間の時間が短ければ短いほど多くの情報を長期記憶に保存できます。

では、どうすれば学習と睡眠の間の時間を短くできるか?やはり睡眠学習しかないでしょう!

睡眠学習は、睡眠時でも周囲の音が聞こえるノンレム睡眠時に行いましょう。寝始めはノンレム睡眠の割合が大きいので、イヤホンなどを付けながらそのまま寝てしまうのがオススメです。

睡眠学習を利用した最強の学習方法はこれ!最速最短で英単語を覚える方法

ここで実際に睡眠学習を利用した効率の良い学習方法を紹介しましょう。今回は例として、英単語を覚える場合の方法を説明します。

1、昼間に音声データを用意する

睡眠学習には必ず音声データが必要です。スマホアプリのボイスレコーダーを利用し、学習も兼ねて自分で英単語と意味を録音しましょう。

始めに英単語、次に日本語の意味を読むというように、英単語と意味をセットで録音してください。睡眠中は90分聞き流すので、内容を繰り返すなどして90分の音声データを用意すると良いでしょう。

2、昼寝をする

音声データを作ったら、すぐに1時間ほど昼寝をしてください。寝ることで学習した内容を脳へ定着しやすくします。

3、夜寝る前に英単語を復習する

1で学習した英単語を復習してください。時間が経つと忘れてしまうので、なるべく寝る直前に復習しましょう。

4、音声データを聞きながら寝る

スマホなどからイヤホンを使って聞き流しましょう。寝付いて最初の90分、聞きながらそのまま寝るようにしてください。

たったこれだけです。昼寝する時間がない場合は、夜寝る前の学習と睡眠学習だけでも構いませんよ。

起きたらテストをして、どれだけ覚えたか確認してみてはどうですか?睡眠学習をやったときと、やってないときで比較すれば、睡眠学習の効果を自分でも実感できるはずです!

例えば次の日に大事なプレゼンがあり、自社の商品名や比較商品などを大量に覚えなきゃいけない場合は、プレゼンの内容を寝る前にボイスレコーダーで録音して、寝ている間に聞き流すのも睡眠学習が使える効果的な実践方法です。

ここで、注意しなきゃいけない点を3つ紹介しましょう。

  1. 音声データが必要
  2. 丸暗記の学習に効果がある
  3. 寝る前に一度学習が必要
睡眠学習はあくまで復習にしか効果がありません。起きている間に一度学習した内容を寝る前までに音声データとして準備し、聞きながら眠りについてください。

睡眠学習は一度学習した記憶の強化を行う

睡眠学習はすでに一度学習したことの復習(記憶の強化)にしか利用できません。

睡眠中に新しく内容を覚えることはできないので、注意してください。

このように睡眠学習は可能ですが、始めに学習しなきゃいけないことには変わりません。やはりコンピューターのように気軽にインプットするようにはいきませんね。

しかし、睡眠学習にこだわらなくても脳の働きを知った皆さんは、寝る前の学習と睡眠がとても重要だと理解できたはずです。

昼間に勉強したことでも寝る前にもう一度復習して寝れば、睡眠中に脳へ記憶させやすくなります。

今まで物覚えが悪く困っていた人は、睡眠学習や寝る前の学習をぜひ一度試してみてください。