> > 還付金はいくら?手続きから計算方法まで、医療費控除の基礎知識

還付金はいくら?手続きから計算方法まで、医療費控除の基礎知識

医療費控除で節税

高額な医療費を払った年は、医療費控除を行うと税金が一部戻ってきます。しかも所得税が戻ってくるだけでなく、翌年の住民税まで安くなるので必ずやるべきなんです。

「医療費控除の手続きって難しそうだな」とか「面倒なんだろうな」と思っている人もいるかもしれませんが、ネットで簡単に申請書類が作成できるので、安心してください。

この記事では、医療費控除の手続き方法や、安くなる所得税・住民税の額について説明します。所得税の還付金が数万円、住民税も万単位で安くなるケースがざらにありますので、やらない手はありません!

今すぐ確認できる!医療費控除での還付金の計算方法

家庭内で1年間に支払った医療費から、 保険金等で補填される額を引き、そこからさらに10万円(年間所得が200万円未満の人は、10万円ではなくて年間所得の5%)を引いた額が医療費控除額となります。

医療費控除の計算方法と、計算のもとになる課税所得金額・所得税率の調べ方をご紹介します。

簡単!医療費控除額の計算方法とシミュレーター

医療費控除の計算方法はこのようになっています。

1年間の医療費支出 - 保険金等の収入 - 10万円 =  医療費控除額

この医療費控除額に所得税率をかけたものが、返ってくる還付金の額です。

医療費控除額 × 所得税率 = 還付金

「医療費控除は医療費から10万円を引いた額が返ってくる制度」と勘違いしがちなのですが、「医療費の実質負担額から10万円を引いた額に応じて、所得税が安くなる(還付金として返ってくる)」という制度です。

課税される所得が400万円(所得税率20%)で、1年間に40万円の医療費を払い、保険金で10万円が補填された場合には、次のように還付金が計算できます。

医療費40万円 - 保険金10万円 - 10万円 = 医療費控除額20万円
 
医療費控除額20万円 × 所得税率20% = 還付金4万円

つるま歯科医院の医療費控除金額計算シミュレーターなど、還付金がいくらになるか簡単にシミュレーションできるホームページもあります。自分で計算するのが面倒な方は、数値を入力して計算してみてください。

自分の課税所得金額と所得税率を知っておこう

還付金を計算するために最後に掛け算する所得税率は、その名の通り、所得に対して、いくら税金を納めるかの割合です。所得が多い人ほど、税率は高くなります。

そのため、家族分をまとめて医療費控除を受ける場合には、所得税率が高い人(=所得が多い人)が申請すると、還付金額が大きくなります。

所得税率の早見表(平成27年以降)です。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円~330万円以下 10%
330万円~695万円以下 20%
695万円~900万円以下 23%
900万円~1,800万円以下 33%
1,800円~4,000万円以下 40%
4,000万円~ 45%
課税される所得金額とは、毎月の給料やボーナスなどを合計した年収とは別物。年収から、定められた給与所得控除や扶養控除、基礎控除、社会保険料控除などを引いた額です。

収入が給料だけの場合、源泉徴収票の「所得控除後の金額」から「所得控除の合計額」を引いた金額が、課税される所得金額(1,000円未満は切り捨て)となります。

医療費控除すれば、所得割の住民税も安くなる

医療費控除を受けると、所得税が返ってくるだけではなく、翌年の住民税も安くなります。

住民税は誰でも一律に課税する均等割と、所得に応じて課税する所得割にわかれています。所得割は、名古屋市や神奈川県などを除いて、全国一律10%です。

医療費控除額が20万円だと、20万円分所得が減ったということになります。課税対象額が20万円減ることになりますから、20万円×10%で、2万円も住民税が少なくなります。

所得税と合わせて考えてみると、所得税率が20%の人の場合は、所得税と住民税を合わせて、なんと6万円も税金の負担が軽くなります。

所得税の還付 医療費控除額20万円×20%=4万円
住民税の減額 医療費控除額20万円×10%=2万円

差し引かれる「保険金等」には、健康保険の給付金も含まれる

医療費控除の計算をする際、かかった医療費から差し引かれる「保険金等」について、ご説明します。

「保険金等」には保険会社や共済から受け取った入院給付金や手術給付金などが含まれますが、それだけではありません。公的な健康保険から支給されたものも含まれます。

「保険金等」の例を挙げました。

  • 高額療養費
  • 家族療養費
  • 出産育児一時金
  • 家族出産育児一時金
  • 交通事故の被害者になり医療費として受け取った慰謝料や損害賠償金
  • 入院給付金や手術給付金(保険金)
医療費控除額の計算の際、年間所得が200万円未満の場合は、引く金額が10万円ではなく所得の5%となります。なお、医療費控除額の上限は200万円です。

不妊治療や交通費も対象!医療費控除の対象になる費用

医療費控除の対象になる医療費は、病気や怪我の治療のために払った費用です。

治療のための薬代や、通院のための交通費も含まれます。

一方で、美容整形や美容のための歯科矯正、病気の予防のための予防注射やビタミン剤の購入、自分の車で通院した場合のガソリン代や駐車場代などは対象になりません。

対象になるもの、ならないもの、場合によって扱いが違うもののうち、主なものを表にまとめました。

対象になるもの
・病院や歯科医院での治療費(インプラント治療含む)
・子どもの歯列矯正
・入院中の食事代(病院で出されるもの)
・治療に必要な義手、義足、松葉杖の購入代金
・処方箋に基づく薬の購入代金
・治療を受けるために通院したときの公共交通機関の交通費
・妊婦の定期健診、検査費用、出産費用
・不妊症の治療費
・母体保護法にも基づいて行う妊娠中絶
・リハビリ費用
・治療のためのマッサージ代、鍼灸の費用
対象にならないもの
・医師や看護師への謝礼・心づけ
・予防注射
・病気予防のためのビタミン剤や健康食品の購入費用
・メガネやコンタクトレンズを購入するための眼科受診
・歯石除去や美容のための歯科矯正
・自家用車で通院した時のガソリン代や駐車場代
・妊婦が里帰り出産のために実家に帰るときの交通費
・妊婦の出生前診断
・無痛分娩口座への参加費
・入院のための購入した日用品
・自宅でおこなう食事療法のための食品購入代
場合によって扱いが違うもの
・健康診断や人間ドック(健康診断で病気が見つかり、引き続き治療をした場合は対象になる)
・タクシー代(緊急時や、体の状態によって公共交通機関を利用できない場合は対象になる)
・差額ベッド代(治療のために必要な場合は対象になる)
・処方箋のない薬(治療のためで、極端に高くない場合は対象)

子どもの通院に付き添うための交通費や破水時のタクシー代も対象

子どもの通院付き添い交通費は対象

一人で通院できない子どもに親が付き添う場合には、付き添う人の交通費も控除の対象になります。ただし、入院している子どもの病院に、親が世話のために通う場合は対象外です。

タクシー代は基本的には対象外ですが、「妊婦が破水した」など緊急の場合や、深夜や早朝で他の交通手段がないとき、病気や怪我の状態によって電車やバスの利用が難しいときには認められます。

緊急時にタクシーを利用した場合には、「深夜の急病だったので、タクシーを利用した」など、タクシーを利用した理由を説明できるようにしておきましょう。メモ書きでいいので記録を残しておくのがおすすめです。

医療費控除(還付申告)の手続き方法と必要書類

医療費控除の申請は還付申告ともいい、確定申告と同じ書類で手続きをします。還付申告・確定申告は難しいものではなく、ネットで簡単に書類が作れますので、「やったことないし不安だな」という方でも大丈夫です。

いざ還付申告するときに慌てないために、日頃からかかった医療費や交通費をエクセルなどの表計算ソフトにその都度記録しておくと便利です。

家族それぞれが病院にかかった場合は、個人ごと、病院ごとにわけて、医療費と交通費がいくらかかったかを記録しておきましょう。

医療費の領収書も必要になるので、整理して保管しておくといいですね。

交通費はタクシー以外だと領収書がもらえないことが多いですが、記録していく時に、「この病院に通院したとき、いくら交通費がかかった」とわかるようにしておけば大丈夫です。

緊急でタクシーを利用した場合などは、交通費の欄に、備考としてタクシーを利用した理由を記載しておきましょう。

<エクセルで記録するときの例>
医療費の明細のエクセル記入の例
※この例では、○○一郎さんが申告するものとして記載しています。

源泉徴収票と領収書があれば、申告書類はネットで簡単に作れる

提出は郵送でも可能

還付申告の書類は確定申告と同じで、ネット上で簡単に作れます。勤務先からもらう源泉徴収票と、かかった医療費の記録を用意しておけば、それを見ながら入力していくだけなので、何も難しいことはありません。

国税庁のWEBサイトに、医療費控除を受ける場合の確定申告書の記載例がありますから、参考にしてください。源泉徴収票のどの金額をどこに入力すればいいかも指示してくれていますから、わかりやすいですよ。

確定申告書と一緒に提出する書類は、会社からもらう源泉徴収票、医療費を払った時に病院や薬局でもらう領収書、医療費の明細書です。このうち、医療費の明細書については自分で作る必要があります。

提出は郵送でもOKなので、わざわざ税務署に足を運ぶ必要もありませんよ。

医療費の明細書はどうやって書けばいい?エクセルが楽

医療費の支払先が多い場合や、支払った医療費がかなり高額になる場合には、確定申告書に加えて「医療費の明細書」を作る必要があります。

この明細書の上半分には、治療を受けた人と、治療を受けた病院をわけて医療費の内訳を記載していきます。治療を受けた人と病院が一緒ならまとめて記載することもできます。

交通費がかかった場合は、「治療内容・医療品名など」の欄に「交通費」と記入し、「支払った医療費」欄に交通費の金額を入れればOKです。

「医療費の明細書」のテンプレートは国税庁のWEBサイトに掲載されていますが、今のところPDFしか掲載されていないので、印刷して手書きすることになってしまいます。

医療費の明細書記入例

上半分の明細部分は別の用紙に記載しても構わないので、エクセルで医療費を記録しておくと、それを加工して使えるので簡単です。

受診する度にエクセルに記録しておくと、後から楽ですね。

下半分では、先ほどご紹介した医療費控除の計算式に従って、医療費控除額を計算します。

領収書をなくした場合にとれる対応策は3つ

医療費控除を受けるには領収書が必要ですが、万一領収書をなくしてしまった場合は、こんな対応ができます。

  • 病院に再発行をお願いする
  • 再発行ができない場合は「領収額証明書」の発行をお願いする
  • どちらも発行してもらえない場合は、家計簿などを税務署に持ち込んで相談する

ただ、税務署に家計簿を持ち込んでも、必ず認めてもらえるとは限りません。領収書をなくすととても面倒ですし、医療費控除が受けられなくなる可能性もありますから、きちんと保管しておきましょう。

医療費控除はいつ申請すればいい?実は税務署で年中受付可能

医療費控除の申請は、5年間遡れます。例えば、平成23年分の医療費控除は、平成24年1月1日から平成28年12月31日まで申告が可能です。

2月・3月の確定申告の時期にする人が多いですが、もともと確定申告の義務がない会社員が医療費控除(還付申告)だけしたいという場合なら、1年中受け付けてくれます。

過去5年前に、1年間の医療費が高かった年があったのに申告していなかった会社員のみなさんは、遡って還付申告することをおすすめします。

確定申告をすれば自治体にも情報が送られますので、住民税の減額に関して自治体の窓口で改めて手続きをする必要はありません。

病院の領収書をすぐ返却してほしいときは直接税務署や確定申告会場に持ち込みましょう。その場でチェックして返してくれますよ。

医療費控除で住民税も所得税も安くなって家計が助かる

還付金の計算方法、医療費控除の対象になる費用とならない費用、手続きの方法についてお伝えしてきました。
  
医療費控除の手続きや準備を少し面倒に思うかもしれませんが、領収書を保管して、医療費や交通費をメモしておくだけですから、家計簿感覚で習慣化すれば大きな手間ではありません。
 
所得税も住民税も安くなる医療費控除は、医療費がかさんでしまった家庭にはとても嬉しい制度ですから、ぜひ利用しましょう。