睡眠不足は危険がいっぱい!睡眠の質を高めて健康リスクを回避する方法
日本人は世界の中でも睡眠時間が特に短い国民で、「日本人は寝る間も惜しんでマジメに働く」といったイメージが海外でも共通の認識になるほどです。
そのような背景もあり、日本人のなかで睡眠不足を特に大きな問題と感じている人は少ないと思います。もし健康に影響があっても、頭痛や集中力の低下くらいだろうと軽く考えるのではないでしょうか。
もしかしたら、睡眠に時間をとるなんてもったいないと考えている人もいるかもしれませんね。しかし睡眠不足に関する研究では、実は恐ろしい健康リスクがいろいろ発見されているんですよ。なんと睡眠不足の人は、糖尿病やガンにかかるリスクが高くなるという研究結果もあるんです。
今回は睡眠不足が引き起こす健康被害を説明し、その対策として睡眠の質を上げる8つのポイントを紹介しましょう。
寝る時間が取れなくて困っている人も、睡眠の質を上げれば睡眠不足は解消できます。
ぜひ参考にして、今日からでも生活に取り入れてください。
睡眠不足は脳に老廃物が溜まりアルツハイマーの原因に
人間は寝ている間に体の浄化や修復、回復を行っています。つまり睡眠時間が十分でないと、体には老廃物や疲労が蓄積して、ある日突然生活に支障が出てくるなんてこともあり得るんです。
全身の老廃物を運ぶのにリンパが働いていることは知っていますか?毛細血管と同じように体の隅々まで張り巡らされたリンパが、日常の活動で出た老廃物を集めて排出させます。
しかし、脳にはリンパがありません。
脳は老廃物を排出するのに別の方法があり、脳内を満たしている脳脊髄液(CSF)と呼ばれる液体が老廃物を吸収し、血液中に排出しているんです。
この脳脊髄液なんですが、実は寝ている間しか働かないんです。
脳は日中の活発に活動している間は老廃物の排除を後回しにし、睡眠中にようやくその日に蓄積された老廃物を排出し始めます。脳の老廃物としては、脳で常に作りだされているタンパク質のアミロイドβが有名です。
このアミロイドβは脳に蓄積するとアルツハイマーなどの恐ろしい病気の引き金になると言われています。
まだまだある!睡眠不足には他にもいろいろな健康リスクが!
睡眠不足で恐いのは、アルツハイマーだけじゃありません。それ以外にもさまざまな健康被害を引き起こすリスクがあるんです。
次に睡眠不足が引き起こすその他の健康リスクについて紹介しましょう。
1、糖尿病やガン
イギリスのBBCニュースが行った実験では、睡眠時間を1時間減らすと糖尿病やガンのリスクが上がることがわかりました。
実験では8人の被験者に1日7時間半の睡眠を1週間とってもらい、次に1日6時間半の睡眠を1週間とってもらいました。睡眠時間が1時間減ったことで体にどのような変化が現れたか検査した結果、糖尿病やガンに関する遺伝子が活発になっていたのです。
2、心臓病
睡眠不足が続くと体に疲労が蓄積していき、高血圧や動脈硬化にも繋がります。その結果、心臓に負担がかかり心臓病のリスクが増すというわけです。
アメリカのハーバード大学は、睡眠時間が5時間以下の人は8時間以上の人よりも1.45倍も心臓病のリスクを抱えているという調査結果を発表しました。
過労から心筋梗塞で亡くなる方も、睡眠不足のため疲労回復が十分にできなかったのが原因と考えられます。
3. 精神状態が不安定になる
睡眠不足の状態が続くと不安や緊張などに反応する脳の扁桃体の活動が活発になるため、精神状態が不安定になります。
日常的にストレスが溜まりやすい状態になるので、イライラして短気になり、小さなことでもキレやすくなってしまいます。
4. 記憶力の低下
人間は日頃の記憶の整理を寝ている間に行っています。睡眠時間が減れば、脳内で記憶の整理が十分に行われないまま新たな記憶が上書きされてしまうため、物覚えが悪くなってしまいます。
何度も同じことを質問してしまったり、昨日食べたものを思い出せなくなってしまったら、リラックスして十分睡眠をとるよう心がけてください。
5. 肥満になりやすい
睡眠不足が続くと食欲を増すグレリンと呼ばれるホルモンが多く分泌されるようになります。それと同時にレプチンと呼ばれる食欲を抑えてくれるホルモンの分泌量が減ってしまうんです。
さらにグレリンが増えると、より高カロリーな食べ物が食べたくなります。満腹感を感じにくく、高カロリーの食べ物ばかり食べてしまうので太りやすい体質になってしまうというわけです。
6. 免疫力の低下
睡眠不足は体の免疫力を低下します。これは免疫細胞の活動が活発になるのが、寝ているときだからです。
アメリカのシカゴ大学の研究結果によると、睡眠不足の人は病原菌に対抗する体の中の“抗体”が、睡眠を十分とっている人より約50%も弱くなるそうです。
免疫力が低下してしまうと悪いウイルスへの対抗力が落ち、風邪を引きやすくなったり、病気にかかりやすくなります。
このように、睡眠不足になると様々な健康被害のリスクが増すことが理解できましたか。他にも頭痛など挙げ出したらキリがないので、睡眠不足は危険だということを覚えておいてください。
なかなか睡眠不足がここまで健康に影響するとは、想像つきませんよね。これらのリスクを回避して健康に過ごすためには、睡眠不足を解消する必要がありますが、そうは言っても仕事が忙しく、なかなか睡眠時間を確保することができない人もいるでしょう。
そんなときは、睡眠の質を高めましょう。
睡眠の質を高め、ぐっすり眠るための8つのポイント
今回は長距離バスの運転手さんに、睡眠の質を高めるためにぐっすり眠る秘訣を8つ聞きました。
バスの運転手さんは長いときは1日中運転している場合もあり、居眠り運転は大事故にも繋がるため少ない睡眠時間を有効に使って、できるだけ質の良い睡眠を得るのが必須となるお仕事です。
それでは、睡眠の質を高める8つのポイントを見てみましょう。
- どんなに忙しくても必ず4時間半以上は寝る。:健康維持に最低限必要な睡眠時間で、詳しくは「ショートスリーパーになる方法」の記事を参照。
- 寝る前に心地よい音楽を聴いてリラックスする。:ストレスが溜まると眠りが浅くなる。
- お風呂は湯船でしっかりお湯に浸かり、心身をほぐす。:お風呂に入って体温を上げることで、深部体温がスムーズに低下して眠りやすくなる。ただし、寝るときに体が暖かいままだと眠りが浅くなるので、1時間前には入浴を済ませたり、時間がないときはぬるま湯に浸かる。
- 起きたら日光にあたり、目覚めを促す。:日光に当たると体内時計がリセットされ、夜に自然と眠くなる。
- 通勤中に歩く時間を長くするなど、生活の中でも工夫して軽い運動ができる時間を作る。:体に適度な疲労感を与えることで、夜ぐっすり眠ることができる。
- 「30分以上の昼寝」は夜の睡眠に影響があるので避ける。ただし、20分程の昼寝は心身共にリラックスさせるといわれているのでOK。:20分程度の昼寝について効果について詳しくは「アメリカで人気の昼寝方法 パワーナップ」の記事を参照。
- 休みの日の寝だめは避け、長くても7時間30分程度の睡眠に抑える。:生活リズムを崩さず、次の日に眠れなくなるのを防ぐ。
- マッサージ等を利用し身体の血行を良くする。:マッサージは副交感神経を優位にし、体が休まる準備を整える。
どうでしょうか?どれも簡単に実践できるものばかりなので、今日からでも試すことができますね。
その他にも睡眠の質を上げる方法を説明した記事を紹介しましょう。
→「不眠症に悩む人が急増中!現在社会が抱える夜眠れない理由」
これはNG!睡眠の質を下げてしまうやってはいけないこと
睡眠の質を高める方法と同時に、質を下げるためやってはいけないことも覚えておきましょう。せっかくの大事な睡眠時間なので、ぐっすり眠れなかったらもったいないです。
次に紹介するやってはいけないことを守り、睡眠の質を下げないよう注意しましょう。
1、カフェイン、アルコール、タバコを多く摂る
コーヒーなどのカフェインが眠気を覚ますのは、みなさん知っていますよね?そのほかにアルコールやタバコも睡眠の質を下げる作用があるんです。
アルコールを飲んで眠たくなったという人もいるかもしれません。そのため、アルコールを飲めばぐっすり眠れると誤解を持っている人もいるのではないでしょうか。
少量のアルコールを飲むと、寝付きが良くなるのは間違いありません。アルコールは脳内の神経伝達物質に働き、鎮静や催眠作用を促すからです。
しかし、アルコールが体内で分解され始めるとアセトアルデヒドという毒素を発生し、交感神経を刺激します。
交感神経が刺激されると、眠りが浅くなってしまい、睡眠の質が悪くなってしまいます。
また、タバコを吸うと血管の収縮がおきるため、血圧は上昇して鼓動が早くなります。血圧と心拍数が上がるということは、体が運動をしたときと同じ状態になってしまいます。
寝る前にタバコを吸うということは、体を叩き起こすのと同じ効果があるんです。
夜はカフェイン、アルコール、タバコをなるべく控え、睡眠の質を下げないよう注意しましょう。
2、寝る前にスマホやパソコンを見る
スマホやパソコンの使用は、脳を活性化させてしまい、睡眠時間を短くする原因になります。また、スマホやパソコンの画面から出るブルーライトはメラトニンと呼ばれる眠気を誘う睡眠ホルモンの分泌を抑制してしまい、睡眠の質を下げてしまいます。
寝る前の30分前にはパソコンの電源は落とし、スマホはベッドに入ってからは見ないようにしましょう。
3、寝る時間と起きる時間がバラバラ
寝る時間は起きる時間によってだいたい決まってきます。それは起きた時間から体内時計が働き、約17時間後から眠気を誘う睡眠ホルモンが分泌され始めるからです。
体内時計に合わせて規則正しい生活リズムを送ることが、ぐっすり眠るための秘訣になるのですが、睡眠ホルモンの分泌が始まっていない状態で寝ても、深い眠りにつくことはできません。
体も寝る状態に準備を整えてから寝たほうがぐっすり眠れるので、睡眠の質は良くなります。
起きる時間をできるだけ同じ時間に調整して、生活リズムを整えるよう心がけましょう。
睡眠時間が取れなくても睡眠の質を上げて、睡眠不足を解消
睡眠の役割は体の修復や回復なので、寝なかったら体がボロボロになっていくのは想像していましたが、睡眠がこれほど多くの恐ろしい病気と密接に関係しているとは正直驚きました。
睡眠時間が足りなくても、無理は続けられますが、このままだと大きな病気にかかるなど大変なことになってしまいます。
1日も早く考え方を改めて、睡眠不足を解消できるよう意識してください。