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不整脈治療手術やメタボ患者のためのメディコトリム!青森県の病院

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この記事で紹介するのは、青森県にある「弘前大学医学部附属病院」と「青森県立中央病院」です。

弘前大学医学部附属病院は、「完全皮下除細動器S-ICD」による不整脈治療手術を成功させました。この手術を成功させたのは、国内では初めてのことです。

青森県立中央病院では、メタボリック・シンドローム外来を設置。メタボ患者を対象とした、運動指導・栄養指導などを積極的に行っているんですよ。

まずは弘前大学医学部附属病院から見ていきましょう。

国内初の不整脈治療手術を成功!弘前大学医学部附属病院

弘前大学医学部附属病院は、国内で初めて「完全皮下除細動器S-ICD※」による不整脈治療手術を成功させました。

完全皮下除細動器S-ICDとは

不整脈の発生時に心臓へ電気ショックを送り、正常な心拍に戻す機器のこと。本体を、体の左側胸部の皮下に植え込んで使用します。

致死的不整脈の症状には、除細動器の使用が最も確実な治療法であると言われているんですよ。

「完全皮下除細動器S-ICD」について詳しく見ていきましょう。

合併症の発生率減少を目指す!電気ショックで治療するS-ICD

「完全皮下除細動器S-ICD」は、不整脈の症状に対して電気ショックで治療を行う医療機器「除細動器」の1つです。

除細動器はほかに、次のようなものがあります。

除細動器の種類と特徴
除細動器の種類 特徴
体外式自動除細動器
(AED)
・病院外で置かれていることも多い
・操作する第三者が必要
着用型自動除細動器
(WCD)
・患者さんの意思でショック一時回避が可能
・着用することで効果がある
植込み型除細動器
(ICD)
・プログラムに従って患者さんの状態を診断
・患者さんの意思と関係なく作動

従来の不整脈治療では、電気ショックを心臓に伝えるリードを血管内に配置する「植込み型除細動器」が使用されていました。

今回、弘前大学医学部附属病院が手術で使用したS-ICDの最大の特徴は、システム本体やリードが血管外にあることです。

この特徴によって生じるメリットは次のとおり。

完全皮下除細動器S-ICDのメリット
  • 多くの人が利用できる
  • 合併症の発生率が低い

除細動器のリードを血管内に通す場合、患者さんの体型や血管の状態によってリードが入らないことがありました。ですがS-ICDは、血管にリードを通せない患者さんでも利用が可能。

本体やリードが心臓や血管に触れないため、合併症の発生率も大幅に低くなるのです。

完全皮下除細動器S-ICDの植込み手術にかかる時間は、およそ1時間。術後の回復も比較的早く、患者さんは術後短期間の入院で自宅に帰ることができます。S-ICDは、患者さんが安心して日常生活を送ることを可能にしているんですよ。
弘前大学医学部附属病院の基本情報
所在地 青森県弘前市本町
最寄り停留所 バス停「大学病院前」
病院HP 弘前大学医学部附属病院
病床数 644床
福利厚生 ・単身寮
・院内保育園

弘前大学医学部附属病院は北海道・東北地方で初めて、遠隔操作型内視鏡下手術支援システム(ダ・ヴィンチ)を導入。ダ・ヴィンチを利用した手術は2016年6月に500症例に到達し、ダ・ヴィンチを製造したアメリカの会社から記念の盾をもらいました。

メタボ患者さんに指導を行なう専門外来を設置!青森県立中央病院

青森県立中央病院では、メタボリック・シンドローム※外来を設置しています。

メタボリック・シンドロームとは

内蔵肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患を招きやすい病態のこと。

メタボリック・シンドローム外来の主な取り組みは、次の2つです。

「メタボリック・シンドローム外来」の取り組み
  • メタボリック・シンドロームの患者さんに診察・検査・個別指導を実施
  • 運動・栄養指導などの集団指導(メディコトリム)を実施

メタボリック・シンドローム外来が実施するメディコトリムは、NHKの「寿命を延ばすプロジェクト」として特集されたこともあるんですよ。

メディコトリムについて詳しく見ていきましょう。

患者さんの生活習慣改善を促して健康な体をつくる!メディコトリム

メディコトリムとは、メディカル(医療)とトリム(整える)の言葉を合わせた「医療の力で体を整える」という意味の造語です。

メディコトリムは、患者さんに対して運動・食事指導を行い、生活習慣病の予防や改善、薬の減量などに繋げて、健康な体づくりを目標としています。

メディコトリムの概要は次のとおり。

「メディコトリム」概要
開催日 奇数月の第1・第3木曜日
開催時間 18:00~20:00
参加費 無料
対象者 ・メタボリック・シンドローム該当者や予備軍の人
・生活習慣病の人
・ロコモティブ・シンドロームの予防・改善を望む人
講義・指導内容※ ・体力測定
・ストレッチ
・栄養講義
・運動講義
※講義・指導内容は、第1・第3木曜日でそれぞれ別のものになります。

「ロコモティブ・シンドローム」については後ほど「メタボの次に注目したい!ロコモティブ・シンドロームとは?」の章で紹介していますので、参考にしてください。

メディコトリム1回目の参加で、患者さん自身の現在の体力を知り、安全な運動処方を行うための体力測定を実施。2回目で体力測定の数値や食事記録をもとにして、患者さんに合った運動・食事の処方箋を出すため、両方への参加が必要です。

メディコトリム参加後の患者さんは、自宅で自主トレーニングや生活習慣の改善を実施。定期的にメタボリック・シンドローム外来を受信し、医師によるサポート・指導を受けます。

メディコトリムで指導された運動や食事を継続することで、体重減少・血圧低下・お薬減量などの効果が期待できるんですよ。

青森県立中央病院では、県内市町村や一般企業でも「出張メディコトリム」を実施しています。メディコトリムによりメタボリック・シンドロームなどの生活習慣病が予防でき、結果として医療費の抑制にも繋がるのです。
青森県立中央病院の基本情報
所在地 青森県青森市東造道2-1-1
最寄り停留所 バス停「県立中央病院前」
病院HP 青森県立中央病院
病床数 684床
福利厚生 ・院内保育所(病後児保育)
・女性看護師寮

メディコトリムの中で指導するトレーニングの1つに「スロー筋トレ」があります。スロー筋トレとは「休まずにゆっくりと軽い負荷をかける筋トレ」のことで、自宅でも簡単にできるトレーニングです。80秒程度で終わるので、空いた時間で実践できるんですよ。

メタボの次に注目したい!ロコモティブ・シンドロームとは?

この記事で紹介した「メタボリック・シンドローム」という言葉は、2006年の流行語の1つ。今では多くの人が知っている言葉です。

では厚生労働省が、メタボの次に「ロコモティブ・シンドローム」の認知度向上のために取り組んでいることをご存知ですか?

「ロコモティブ・シンドローム」とは骨や関節などを痛めて、歩くなどの動作を満足に行うことができない状態のことです。

ここでは「ロコモティブ・シンドローム」になる原因や、合わせて発症しやすくなる病気について説明します。

症状が悪化すると歩けなくなることも!ロコモティブ・シンドローム

厚生労働省は「メタボリック・シンドローム」の認知度向上に成功。続いて、ロコモティブ・シンドロームの認知度を上げるために取り組んでいます。

ロコモティブ・シンドロームとは、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態のことです。

筋肉や骨、関節、軟骨などの運動器に障害が起こると、「立つ」「歩く」などの簡単な動作の機能が低下。症状が進行すれば、日常生活に支障をきたすことも考えられます。

2007年、日本整形外科学会が日本の超高齢社会となる未来を見据え、この「ロコモティブ・シンドローム」という概念を提唱しました。

ロコモティブ・シンドロームになる原因や症状について見ていきましょう。

ロコモティブ・シンドロームを発症する原因は次のとおりです。

ロコモティブ・シンドロームになる原因
  • 活動量の低下
  • 過度なスポーツや事故による怪我
  • 運動習慣のない生活
  • 痩せすぎ・肥満
  • 痛みやだるさの放置

ここで特に注目したいのは「痛みやだるさの放置」。

腰が痛い・膝が痛いなどの症状を「歳のせいだから」と放っておくのは危険です。運動器の衰えは確実に進行し、重篤な病気が隠れている場合もあります。

ロコモティブ・シンドロームにより、発症する可能性のある病気は次のとおり。

ロコモティブ・シンドロームにより発症しやすい病気
病名 症状
骨粗しょう症 ・骨が弱くなる
・骨折しやすい
変形性関節症 ・関節軟骨がすり減る
・関節に痛みが生じる
・関節の曲げ伸ばしが十分にできない
変形性脊椎症 ・椎間板がすり減る
・骨が変形する
・足の痛みや痺れを生じる
思うように体が動かせなくなると、外出するのが面倒になったり、できなくなったりします。一日中家で過ごすことで、さらに運動器の衰えが進行。外出しないことが、認知症を発症する一因になることもあるんですよ。

生活習慣の見直すことで予防ができる!メタボとロコモ

この記事で紹介した「メタボリック・シンドローム」と「ロコモティブ・シンドローム」は、どちらも「メタボ」「ロコモ」と3文字で表現されます。ですが、共通点はそれだけではありません。

メタボとロコモはどちらも、生活習慣の変化が大きな影響を及ぼすのです。

そのほかの共通点は次のとおり。

メタボとロコモの共通点
  • 40歳を超えると発症率が上がる
  • 生活習慣を見直すことで予防できる
骨や筋肉量は、20代~30代でピークを迎えます。弱った骨や筋肉のままだと、40代・50代で体の衰えを実感し、60代以降には思うように体を動かせなくなることも。若い頃から運動習慣を身につけることで、メタボやロコモを予防することができるんですよ。

またメタボの人は腰や膝に過剰な負担がかかり、ロコモを誘発。

腰や膝が痛いために動かずにいると、それが原因でさらに肥満度を高め、腰や膝の痛みが増すことに繋がるのです。

生活習慣を見直し、メタボとロコモの悪循環を早期に断ち切ることが、治療するうえで重要なことなんですね。

ロコモティブ・シンドロームを予防!運動と食事のバランスが大切

ロコモティブ・シンドロームを予防するには、生活習慣を改善することが重要であると紹介しました。

では、具体的にどのような生活を送るのが良いのでしょうか?

ロコモティブ・シンドロームを予防するために最も大切なのは「毎日の生活の中で運動習慣を持ち、栄養バランスのとれた食事を1日3回とる」ことです。

ロコモを予防することは、メタボなどの生活習慣病の予防にも繋がります。ここではロコモとメタボ予防のために行いたいことを、1日の流れに沿って見ていきましょう。

ロコモとメタボを予防するための1日の流れは、次のとおりです。

ロコモ・メタボを予防する生活(一例)
時間 行動 注意点
6:00 起床 ・できるだけ昼食の弁当を作る
7:00 朝食 ・パンだけでなく、牛乳・果物も摂取
8:00 出勤 ・アパートの階段や駅の階段を利用
9:00 始業 ・姿勢を正し、背筋はまっすぐ伸ばす
・だらだらと歩かない
・トイレは和式を利用する
12:00 昼食 ・主食(米・麺類)、主菜(肉・魚・卵・大豆)を中心に摂取する
15:00 勤務中 ・こまめに動く
・壁や椅子の背にもたれない
18:00 帰宅 ・アパートや駅の階段を利用する
19:00 夕食 ・朝・昼に取れなかった栄養を意識して摂取する
(野菜・きのこ・海藻・イモなどが中心)
・お酒を飲みすぎない
20:00 家事 ・週に1回でなく、まめに掃除をする
・横着せずに動く
・座りっぱなしを避ける
21:00 入浴 ・浴槽内で筋肉をほぐすストレッチを行う
(足首や膝をしっかり曲げて伸ばす)
22:00 就寝 ・遅くなりすぎないよう、健康的な生活リズムを意識する

毎日の食事で気をつけたいのは「主食・主菜・副菜・果物・乳製品を必ず摂取する」ことです。

毎食バランスよく摂取するのが難しい場合は、1日または1週間で総合的にバランスを考えて摂取しましょう。

毎日の運動は、横着せずにこまめに動くことが重要。

通勤時の階段利用や普段の歩く姿勢の改善など、日々のちょっとした工夫で、ロコモ・メタボ予防の効果が期待できます。

毎食バランスのとれた食事を摂取するには、食べたくなるような工夫が必要です。和食・洋食・中華などメニューに変化をつけるだけでなく、家族や友人などと一緒に食事をとるのも効果的ですよ。
日本における「ロコモティブ・シンドローム」の認知度は、平成27年の時点で44%。厚生労働省は、平成34年度までに認知度を80%まで上げることを目標としています。今後「ロコモティブ・シンドローム」が流行語として話題になる年が、来るかもしれませんね。

被災地での活躍やコンサートの実施も!青森県の病院に注目

この記事で紹介した「弘前大学医学部附属病院」と「青森県立中央病院」では、ほかにもさまざまな取り組みを行なっています。

弘前大学医学部附属病院は、青森県DPAT(災害派遣精神医療チーム)の一員として熊本地震の被災地で活躍。被災者が感じるストレスへの対応を、協議・指導しました。

青森県立中央病院では年に数回、患者さんやその家族にゆったりとした時間を過ごしてもらうための「ふれあいコンサート」を開催。演奏に使われる楽器は毎回さまざまで、管弦楽団が来ることもあれば、三味線の演奏者が来ることもあるんですよ。

何を重視して取り組んでいるのかは、病院によってさまざま。

青森県にある病院がどんな取り組みをしているのか、近くの病院を調べてみるのもいいかもしれませんね。