大病院にしかない!?血液内科で働く看護師の仕事内容と役割とは
様々ある診療科の中でも、珍しい診療科・専門性が高く特定の病院にしか設けられていないというものがあります。その1つが血液内科です。
血液内科は専門医が少ないことや設備の面から、総合病院のような大病院にしかありません。中病院やクリニック・診療所には無いのです。
血液内科で看護師として働きたい!そんな貴方の為に、血液内科の特徴・看護師の仕事内容、そして血液内科で働くために必要な能力についてご紹介していきましょう。
専門性が高く大病院にのみ設置!?血液内科の特徴とは
血液内科というのは、どの病院にも設置されている診療科ではありません。その専門性の高さから、血液内科があるのは総合病院や大学病院のような大病院のみとなっていて、中病院やクリニックには設けられていないのです。
そんな血液内科はどのような診療科なのか、その基本情報を押さえておきましょう。
血液内科で取り扱うのは、血液や骨髄、リンパ腺に起こる病気です。
血液の疾患は、悪性腫瘍や難病など治療の難しい病気が多いという特徴があります。その為、高い専門性と高度な治療が求められているのです。
主に行われる治療法は、以下のようなものですね。
- 化学療法
- 骨髄移植
治療行う際、患者の血液中の白血球数が大幅に減少している場合は、感染症に注意しなければいけません。ですから、血液内科では無菌室で治療が行われることも珍しくないのです。
無菌室での治療・看護は、看護師にとって良い経験になるでしょう。
副作用も多い!?血液内科で行われる化学療法
化学療法は、主に抗がん剤を用いた治療法になります。抗がん剤は日々進化しており、がん患者の平均余命をどんどん伸ばしている一方で、忘れてはならないのが副作用です。
- 吐き気・食欲不振
- 脱毛・皮膚障害
- 下痢・便秘
- 感染症
- 心障害、肺障害、肝障害、腎障害
がん細胞だけに作用してくれれば良いのですが、抗がん剤はどうしても正常な細胞をも攻撃してしまいます。ですから、このような副作用が起こってしまうのです。
副作用にどのように対処するか、どのように軽減していくかについて、医師・看護師の手腕が問われると言えるでしょう。
また、抗がん剤は高価であり、患者が治療を続けていく上で経済的な負担も大きな問題となってくるものです。かかる医療費や補助制度についても、病院側が患者にきちんと説明することが求められているのです。
血液の主な病気は4つに分類される!?その内容とは
血液内科で取り扱われる血液の疾患は、大きく4つに分類されています。分類ごとの主な病気をご紹介しましょう。
分類 | 病気 |
---|---|
貧血 | 再生不良性貧血 溶血性貧血 |
リンパ球 | 急性リンパ球白血病 悪性リンパ腫 |
骨髄 | 急性骨髄性白血病 骨髄異型性症候群 |
血小板 | 突発性血小板減少紫斑症 |
それぞれ治療が難しい病気になりますし、白血病や悪性腫瘍に関しては再発のリスクもあります。ですから、血液内科での治療は長期にわたって行われることが多いのです。
難しい治療が行えるだけの設備が必要となりますので、総合病院や大学病院でしか対応することが出来ないわけですね。
血液疾患の状況把握のために必須!骨髄検査とは
血液疾患の状態を把握するためには、検査をする必要がありますよね。そこで行われる検査が骨髄検査です。骨髄検査のために行われるのが、骨髄穿刺です。
骨髄穿刺は、骨髄中の血液・組織を胸部または腰から採取して調べるもので、痛み止めや麻酔を行いますが患者が強い痛みを感じてしまう検査としても知られています。
骨髄穿刺で採取した血液、組織は顕微鏡や遺伝子、病理検査が行われ血液の状態がチェックされます。病気の判定だけでなく、治療の進行状況を確認するためにも行われる検査です。
血液内科での看護師の仕事は主に4つ!その内容をチェック
では、血液内科で看護師がどのような仕事をするのか、その内容をご紹介してきましょう。
看護師の仕事内容は主に4つです。
- 検査内容・方法についての説明
- 医師の診療補助
- 患者の全身管理・点滴や各種検査
- 患者の健康状態把握・精神的なケア
医師の診療補助を行うという仕事は、どの診療科でも変わりませんね。血液内科での特徴的な仕事の1つが、検査内容・方法についての説明です。
検査・治療への不安感を少しでも和らげられるよう、きちんとした知識を身に付けてどんな質問に対しても応えられるようにしておきましょう。
また、患者の全身管理も重要な仕事ですね。
正常な白血球数が減少している患者は、無菌室での治療が行われます。
感染症に注意すると共に、ちょっとした変化・異常を見逃してはならないのです。
また、治療中の全身管理も重要な仕事です。無菌室での治療は、他の診療科ではなかなか経験できないものと言えるでしょう。
血液内科の看護師に求められる能力・スキルをご紹介
血液内科の看護師には、どのような能力・スキルが求められるのでしょうか。主に求められるのは次の3点です。
- 精神的なケアを行う能力
- 新しい知識への向上心・勉強意欲
- 点滴ルート確保スキル
それぞれの要素について、簡単にご紹介しましょう。
患者が治療を続けられるように精神的な支えになろう
看護師の仕事内容でも紹介しましたが、血液内科では重い思い病状の患者と接する機会がとても多くなります。
その為、精神的なケアを行うスキル・コミュニケーション能力が求められるのです。
血液疾患は急に症状が現れることも少なくなく、緊急入院をしている患者もいます。自分に何が起こっているのか理解できず、ストレスを感じてしまうことが多いのでそのフォローも必要ですね。
入退院を繰り返すことも多いですから、患者の精神面での支えになることはもちろん、医師との信頼関係を作るといった意味でも、看護師は大きな役割を持っているのです。
だからこそ、特に病棟看護師は、緊急入院した患者、長期で入院している患者に対するケアを行うことが求められます。
治療の副作用も多く、途中で治療を断念したいと考えてしまう患者も少なくありませんからね。
日々のコミュニケーションを取っておくことで、ちょっとした異常・変化にも気づくことが出来るようになります。患者としっかり向き合うことが重要となりますね。
特殊な治療・検査への知識が必要!新たな事への好奇心が大切
また、血液内科は他の内科とは異なる技術・知識を求められます。今まで働いていた診療科では行われていない治療・検査も多いですし、血管内科特有のものもあります。骨髄移植がその代表的なものですね。
ドナーから抽出した骨髄液を、患者の静脈に点滴するというもの。骨髄液に含まれている造血幹細胞が機能し、移植された患者の骨髄で血液細胞を作ることが出来れば成功となります。
血液成分の減少や、正常な血液が作れなくなってしまう病気に対して有効な治療法。
骨髄移植を必要とする病気としては、白血病が有名ですね。白血病以外にも、造血幹細胞移植を必要とする病気はあります。
- 再生不良性貧血
- 骨髄異形成症候群
- 先天性免疫不全症候群
また、造血幹細胞移植は骨髄移植以外にも臍帯血移植、末梢血管細胞移植といった方法が登場し、多様化しているのです。
血液内科では、このような新しい知識・技術を学ぼうとする好奇心、勉強意欲が求められるわけですね。
治療時に必須!?点滴ルート確保スキルの重要性とは
血管内科では、点滴ルートを確保する機会も多くあります。その中でも、特に抗がん剤治療を行う際の点滴ルート確保は、慎重に行わなければいけません。
通常の点滴とは異なり、抗がん剤が血管外へ漏出した際には組織を破壊してしまう恐れがあるのです。
抗がん剤の血管外漏出について、国立がん研究センターがん対策情報センターが運営している「がん情報サービス」のウェブサイトでは、次のように紹介されています。
静脈注射・輸液が、カテーテル(末梢に入っているチューブ)の先端の移動などによって、血管外の周辺組織に漏れたときに、組織の炎症や壊死をもたらすもので、静脈炎とは異なります。
抗がん剤の場合、血管外漏出直後は、他の薬剤と同様に無症状あるいは、軽い発赤・腫れ・痛みの皮膚症状が出現しますが、数時間~数日後にその症状が増悪し、水泡→潰瘍→壊死形成へと移行していきます。
さらに重症化すると瘢痕(はんこん)が残ったりケロイド化してしまい、漏出部位によっては運動制限をきたして外科的処置(手術)が必要になることもあります。
引用元:がん情報サービス 治療診断 治療を受ける時に注意したいこと 化学療法を受ける方へ 副作用・合併症に関すること 血管外漏出
抗がん剤を使用する際の点滴ルートの確保は、医師が行う事も多くなっています。しかし、看護師が行う病院もありますので、的確な点滴ルート確保のスキルが求められるのです。
また、血液内科では患者の精神的なケアを行うことも重要となってくるため、患者としっかり向き合うことも求められます。
残業も多い!?血液内科で働く2つのデメリットは要チェック
血液内科は専門性の高い知識・治術が求められます。看護師としてのスキルアップは可能ですし、他の診療科では経験できないことを経験することが出来るでしょう。
これは血液内科で働くメリットだと言えますが、働きたいと考えるのであればデメリットについてもしっかり理解しておく必要があります。
代表的なデメリットとして、次の2つを挙げておきましょう。
- 患者の急変によって残業がある
- 精神的に不安定な患者も多いためコミュニケーションが難しい
難病患者が多いことで、体調が急変するという事も珍しくはありません。その都度、一刻も早く処置を行わなければいけませんので、予定外の残業は少なくないでしょう。
自分の予定が立てにくいとうのが、まずデメリットの1つとして挙げられます。
また、もう1つのデメリットが患者との関係づくりが難しいという点です。血液内科では、難病と長期で闘っている患者が多くいます。
治療の副作用もありますから、精神的・肉体的に追い詰められていることも少なくはありません。精神的に不安定になっていることで、コミュニケーションを取るのが難しく、治療への理解を得られない事もあるでしょう。
人間関係の難しさはありますが、だからこそやりがいを感じることが出来るとも言えますね。
また、やはり患者との信頼関係も難しいと言われています。効果が表れにくい、実感しづらい長期の治療を行う患者に対してどのように対応していくのか、難しい仕事であると言えますね。
血液内科は働く先が限られ、専門的な多くの知識・技術が必要
化学療法や骨髄移植について、きちんと説明できるよう・対応できるように知識を身につけなければいけませんし、不安を感じる患者の精神的なケアを行うというのも重要な仕事です。
決して簡単な仕事ではありませんが、その分やりがいもあります。興味があれば、まずは血液内科がある病院を調べてみるところから始めてみましょう。
抗がん剤を使う化学療法が行われることが主で、患者への副作用にしっかり対応することも求められます。血液内科には、特有の検査、治療があるのです。