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保険証を忘れた!医療費を全額自己負担した時の返金方法と返金額

保険証を忘れたら医療費は全額自己負担

出張中や旅行中、保険証が手元にない状態で病院にかかり、全額自己負担した経験がある方はいませんか。あるいは、単に保険証を忘れてしまって、自己負担額した方もいるかもしれませんね。

保険証を持参せずに受診して、医療費を全額自己負担しても、あとで手続きをすれば、払いすぎたお金は返してもらえます。

書類さえ揃っていれば、申請は2年間さかのぼることができますよ。

でも、病院で手続きするのか健康保険組合で手続きするのかによって、返ってくる金額が違う場合もあります。

今回は、医療費を返してもらう方法と、注意点をご紹介します。

保険証忘れで全額自己負担した医療費を返金してもらう方法

保険証を持参せずに病院にかかっても、かかりつけのお医者さんなら、「今月中に持ってきてくれればいいよ」と言ってくれて、普段通り2割や3割の自己負担額で済むこともあります。

継続して同じ病院にかかっている場合には、その患者さんが保険証を持っているとわかっているから、病院側も柔軟な対応をしてくれるんですね。

しかし、保険証なしの場合には、医療費は全額自己負担になるのが基本です。

例えば、保険証があれば3,000円で済む治療を受けた場合、全額自己負担だと10,000円+消費税を払うことになります(3割負担の人の場合)。

できることなら7,000円分を取り戻したいですよね。その手続き方法をご紹介します。

後日病院に保険証を持っていける場合の手続き方法

病院での返金手続きの方法

かかった病院が窓口での払い戻しに応じてくれる場合には、後日保険証と領収書を病院にもっていって返金してもらいます。

精算時、「あとで保険証を持ってきてもらえれば払い戻しをしますよ」と案内してくれる親切な病院もあります。しかしそんな病院ばかりではありませんので、対応の可否をこちらから尋ねましょう。

病院によっては、「1週間以内」とか「月末までに」など、手続きの期限を設けているところもありますので、締切も確認しなければなりません。

窓口で払い戻しをするのは義務ではありませんので、対応していない病院もあります。

また、旅行中や出張中に遠方の病院にかかった場合、後日保険証を持っていくのは難しいですよね。名古屋市医師会急病センターなどは遠方の患者さんならばFAXや郵送でのやりとりで精算に対応してくれますが、このような病院は多くありません。

病院で手続きできない場合は、加入している国民健康保険や健康保険組合の窓口で「療養費の申請」の手続きをします。

国民健康保険加入なら自治体の窓口で「療養費の申請」手続き

返金手続きには印鑑と通帳が必要

病院で後日精算できない場合、国民健康保険に加入している方は、自治体の国民健康保険窓口で、申請書と必要書類を提出します。

ほとんどの自治体で、これらの書類が必要です。

  • 国民健康保険証
  • 世帯主の印鑑
  • 世帯主名義の預金通帳
  • 診療報酬明細書
  • 病院の領収書

「診療報酬明細書」という言葉を見たことがないという方も多いのではないでしょうか。

これは、「レセプト」とも呼ばれるもので、病院が自治体や健康保険組合におくる医療費の請求書で、傷病名や細かな治療内容が記載されています。病院に「療養費の申請をするので、診療報酬明細書を発行してほしい」と依頼しましょう。

診療報酬明細書を発行してくれない病院もあるようですが、自治体によっては、「自治体指定の様式に医師が必要事項を記入する」ことで、診療報酬明細書に替えることもできます。

診療報酬明細書が必要な理由です。

  • 傷病名を確認する
  • 治療内容に対して、正しい診療費が計算されているか確認する
  • 健康保険で認められないものが含まれていないか確認する

そのため、必要事項が含まれていれば、ほとんどの病院が無料で発行してくれる「診療明細書」などの書類で代用できる可能性もあります。診療報酬明細書を発行してもらえない場合は、自治体の担当者に相談してみるといいでしょう。

療養費の申請期間は、医療費を払った日から2年間です。書類をなくしたり、申請を忘れたりしないうちに、できるだけ早く手続きをしましょう。

健康保険組合加入なら、組合の窓口で返金手続き

企業に勤めており、健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合の窓口で手続きをします。

この場合、各健康保険組合が指定する申請書に加えてこれらの書類が必要になる健康保険が多いです。

  • 診療報酬明細書(協会けんぽでは「診療明細書(傷病名が記載されたもの)」)
  • 病院の領収書

診療報酬明細書の代わりに、健康保険組合独自の様式を設けている組合もあります。

全国健康保険協会(協会けんぽ)で必要になる「診療明細書」とは、受けた検査の内容や、処方された薬の名前などの詳細が記載されているもので、病院で発行してもらえます。傷病名が書いてあるかを必ず確認してください。

診療報酬明細書については、「病院で発行してもらえない場合には、健康保険組合指定の様式に記入してもらう」などの方法を用意している健康保険組合もありますので、担当者に聞いてみましょう。

こちらも、全額自己負担したら、できるだけ早く手続きをしてください。

健康保険組合によっては「単に保険証を忘れた場合は対応しません」など、厳格なところもありますので、注意が必要です。確かに忘れた自分が悪いといえば悪いんですが、厳しい健康保険組合ですね・・・

手続きする窓口によって返金額が違う

手続きすると、いくら返金されるのでしょうか。

原則として、病院の窓口で全額自己負担した金額から、保険証を使った場合に負担するはずだった金額を引いた額が返金されます。入院時の食事代など保険外の費用については、もちろん自己負担のままです。

例えば医療費が10,000円で、一部負担金の割合が3割の場合、次の図のように7,000円(7割)が療養費として支給されます。

医療費の返金額

ただし、かかった病院が自由診療と保険診療※で診療費の点数の計算を変えている場合には、実際に窓口で支払った金額の7割が返ってくるとは限りません。

その理由をご説明します。

自由診療と保険診療とは
 
保険診療は健康保険の対象となる診療のことです。保険証を出して保険診療を受けた場合、2割とか3割の自己負担額ですみます。
 
自由診療は保険がきかず全額自己負担になる診療のことです。保険証がない状態で病院にかかると、保険証があるときは保険診療となる診療内容でも、自由診療になります。

自由診療だと、病院が診療費を自由に決められる

保険診療と自由診療は診療費の計算方法が違います。

診療費は、病院が行った治療を点数にして計算します。

保険診療だと1点=10円で計算すると決まっていますが、自由診療だと1点を何円にするか、病院が自由に決めることができるのです。

自由診療が1点=12円という病院もあれば、20円や25円という病院もあります。また、自由診療には消費税がつくこともあります。

病院窓口での手続きなら自由診療を保険診療に変更して再計算可能

病院での返金手続がおすすめ

病院で精算する場合は、保険証忘れのために自由診療の方法で計算した金額を、保険診療の方法で計算しなおして返金してくれます。

診療報酬点数が465点で、その病院は自由診療だと1点=20円で計算している場合を考えてみましょう。受けた治療は、全て保険診療の範囲内だと仮定します。

保険証を持参できなかった場合には診療費=窓口での自己負担額となり、窓口で10,044円を払うことになります。

465点×20円×1.08(消費税)=10,044円

後日、精算してもらう場合には、1点=10円で計算しなおして非課税になり、診療費(10割)は4,650円となります。

465点×10点=4,650円

すると患者の自己負担額(3割の場合)は1,395円。

4,650×3/10=1,395円

つまり返金してもらえる金額は8,649円。結果的に、保険証を使ったときに自己負担するはずだった金額のみ、負担することになります。

10,044-1,395=8,649円

健康保険窓口だと自由診療のまま!負担額が大きくなる

国民健康保険や、健康保険組合の窓口で「療養費の申請」をする場合には、病院の窓口で精算するときとは違った計算をします。

全国健康保険協会(協会けんぽ)は「保険医療機関で保険診療を受けた場合を基準に計算した額(実際に支払った額が保険診療基準の額より少ないときは、実際に支払った額)から一部負担金相当額を差し引いた額」を払い戻しする、としています。

なんだか難しいですが、「同内容の治療を、保険証ありの場合(保険診療で受けた場合)の金額で計算します」ということです。

つまり、1点=10円で計算されます。

保険証忘れによって自由診療になり、その自由診療が1点=20円で計算されていると、保険診療で受けた場合の金額を超えてしまい、超えた分は自己負担になります。

病院で精算する場合には、もともと自由診療だったものを保険診療に変えて計算しなおすので、病院が請求する額(10割)自体が安くなりました。

しかし、健康保険組合で手続きする場合は、自由診療が保険診療に変わるわけではありません。そして、国民健康保険や健康保険組合が、保険診療の範囲でしか対応してくれないので、高くなった分は自己負担になるのです。
自由診療の金額が保険診療よりも高い病院の場合には、病院窓口で精算をしてもらったほうが助かりますね。できるだけ病院で手続きしてもらいましょう。

保険証のコピーは無効!カードタイプなら万一にそなえて携帯を

保険証原本を携帯する

「保険証を忘れた状態で病院にかかってもお金を取り戻せることはわかったけど、けっこう面倒だな」と思われたかもしれません。確かに手続きは面倒ですし、お金が返ってくるまでに2~3カ月はかかります。

しかも自己負担額が増えるかもしれません。

当然のことですが、保険証を忘れないのが一番なんです。短い旅行や出張であっても何が起こるかわかりませんから、カードタイプの保険証なら、財布に入れるなどして携帯する癖をつけてはどうでしょうか。

ちなみに学生時代の修学旅行で「保険証のコピーを持ってきなさい」などと教員から指示されることがありますが、保険証のコピーは原則無効です。

修学旅行や課外学習で学生がけがをしたときに保険証のコピーでも対応してもらえるのは、学校を通じていつでも連絡が取れる保証があるからです。ただし「後日必ず原本を見せてくれ」などの条件がつくことが多いです。

これは期限が切れた保険証のコピーで受診するなどの悪用を防ぐためです。

保険証はあくまで原本を携帯する必要があります。

最近では修学旅行中の学生でも、保険証コピーでは保険扱いにできないといった厳格な対応をとる病院もあるそうです。

保険証忘れの自己負担額を返してもらうなら病院で

保険証が手元にない状態で病院を受診した場合、払いすぎたお金を返してもらうには、病院窓口か健康保険の窓口で返金してもらう方法があります。
 
ただし、自己診療が保険診療(10割)よりも高くなる場合、健康保険窓口での払い戻しだと、差額は自己負担になるという注意点がありました。
 
自己診療の点数を確認し、保険診療に比べてかなり高いようなら、できるだけ病院窓口で対応してもらえるようにお願いしてみましょう。遠方の患者さんに対しては郵送での返金手続きに対応している病院もありますよ。