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子育て世代必見!年齢だけじゃない子ども医療費助成の地域間格差

子どもの医療費助成には地域格差がある

自治体が行う乳幼児(子ども)の医療費助成の制度は、子どもが一定の年齢になるまで医療費が無料になったり、かなり安く病院にかかることができたり、子育て世代にとっては助かる制度です。

この助成内容、実は全国一律ではなくて、地域差があるって知っていましたか。対象になるこどもの年齢だけじゃなく、親の所得制限の有無、完全無料なのか一部負担金があるのかといった違いがあるんです。

実際、どれくらい差があるのでしょうか。あなたが住んでいる自治体や、引越し先として考えている自治体の助成内容は、充実しているといえるのでしょうか。

助成が充実していると話題の自治体を紹介しながら、子ども医療費助成制度の地域差をチェックするポイントを解説します。

子ども医療費助成の対象年齢の地域差はかなり大きい

上限年齢の地域格差が大きい

子どもの医療費助成制度の充実ぶりをはかるとき、最も注目されるのが対象になる子どもの年齢です。いくつかの市区町村を比較してみました。

自治体名 通院の助成 入院の助成
南富良野町(北海道) 22歳年度末
(22歳到達後の、最初の3月31日まで)
22歳年度末
千代田区(東京都) 18歳年度末 18歳年度末
厚木市(神奈川県) 15歳年度末 15歳年度末
泉佐野市(大阪府) 就学前 就学前
那覇市(沖縄県) 4歳未満 15歳年度末

北海道の南富良野町は、児童生徒・学生なら、22歳まで医療費を助成してくれるという太っ腹ぶりです。

一方で、那覇市は4歳未満、つまり3歳までしか通院時の医療費の助成を受けることができません。4歳以降でも、まだまだ子どもは病気にかかりやすかったり、ケガをしやすかったりしますから、この上限だとちょっと残念ですね。

全国で一番多いのは「中学生まで」としている自治体

通院を4歳未満までしか助成しない自治体は、1,742市区町村中19市区町村と、かなり少数です。しかも、その全てが沖縄県に偏っています。

全国的に見てみると、上限として多いのは、就学前、12歳年度末、15歳年度末の3つです。それぞれの市区町村数と割合をまとめました。

助成対象になる年齢の上限 通院(市区町村数、%) 入院(市区町村数、%)
就学前 396(22.7%) 154(8%)
12歳年度末(小学生まで) 240(13.8%) 275(15.8%)
15歳年度末(中学生まで) 831(47.7%) 1,103(63.3%)

通院・入院ともに、15歳年度末(中学生まで)としている自治体が一番多いですね。

中学生まで助成してもらえれば、まずまず安心なのではないでしょうか。

通院と入院で、年齢の上限が違う自治体もあるので注意

対象年齢に関しては、通院と入院で年齢の上限が違う自治体も多いので、確認が必要です。

那覇市のように、「通院は4歳未満まで、入院は中学生まで」というパターンですね。通院と入院で差がある場合は、入院のほうが期間が長くなっています。

小学生や中学生くらいになると、通院に比べて入院する確率はかなり少なくなります。しかし、いざ入院となったときには通院よりも入院のほうがお金がかかりますから、助成してくれる期間が長いに越したことはありません。

年齢層 通院(受療率、人口10万対) 入院(受療率、人口10万対)
0歳 7,193 1,036
1~4歳 7,009 175
5~9歳 4,692 103
10~14歳 2,916 98
15~19歳 2,017 125
南富良野町の制度には驚きですね。しかも進学のために子どもが町外へ出て一人暮らしをしていても、親が南富良野町に住んでいれば、医療費の助成を受けることができるんですよ。これはすごい・・・

所得制限の有無と所得限度額にも地域差がある!

対象になる年齢の条件について説明してきましたが、年齢の条件を満たせば全員が受けられるというわけではありません。

自治体によっては、親の所得制限を設けているところがあるからです。

全国的に見ると、所得制限がない自治体が1,349市区町村、ある自治体が393市区町村です。所得制限がない方が圧倒的に多いことがわかりますね。

平成26年度の厚生労働省の調査では、このようになっています。

所得制限を設けている市町村が比較的多い都道府県 全市町村で所得制限がない都道府県
北海道、宮城、神奈川、兵庫、広島、山口など 山形、福島、栃木、群馬、新潟、石川、山梨、長野、静岡、滋賀、
京都、鳥取、島根、岡山、香川、愛媛、佐賀、長崎、熊本、大分

具体的な所得制限がどれくらいなのかは、各自治体によって違います。

ここで参考として、神奈川県川崎市の所得限度額をご紹介しますね。川崎市では、1歳以上の子どもが医療費助成を受ける際には、所得制限があります。

・扶養人数0人 6,300,000円
・扶養人数1人 6,680,000円
・扶養人数2人 7,060,000円
・扶養人数3人 7,440,000円
・扶養人数4人以上の場合は、1人増えるごとに380,000円/人を加算
・扶養人数に老人控除対象待遇者・老人扶養家族が含まれる場合は60,000円/人を加算
所得額は、サラリーマンなら給与所得から給与所得控除額を引いた額、自営業なら事業所得から必要経費を引いた額が基本となります。医療費控除や障害者控除などがある場合は、その額も差し引きます。

福岡県北九州市では、子どもが2人以上いる場合には所得制限が免除されます。所得制限を設けている市区町村でも、制限額や運用方法が違うんですね。

どうしてこんな地域差があるのか気になりますよね。子ども医療費助成制度は都道府県が基準を決めて、各市区町村が助成を上乗せしています。ですから、財政に余裕がある自治体や、子育て世代を引きこもうと力を入れている自治体の制度は充実しているんです。

一部負担金とは?助成するけど完全無料じゃない自治体が4割

一部負担金を求める自治体もある

他に地域差がつくポイントとしては、一部負担金の有無があります。

無料で受診できる市区町村もあれば、助成はしてくれるものの一定額を自己負担しないといけない自治体もあるんです。

一部負担金がかかる自治体は756市区町村、一部負担金がなく無料なのは986市区町村です。実は40%以上の自治体が、一部負担金を設けているんですね。

一部負担金を設けている市町村が比較的多い都道府県 一部負担金を設けている市町村がない都道府県
城、千葉、新潟(全市町村)、石川、長野、静岡、京都、大阪(全市町村)、奈良、
鳥取(全市町村)、広島、徳島、福岡、佐賀、長崎(全市町村)、宮崎
福島、群馬、山梨、和歌山、愛媛

この一部負担金の額も自治体によって違います。

例えば兵庫県神戸市だとこのようになっています。

  • 0~3歳未満:通院も入院も自己負担はなく、医療費無料
  • 3歳以上:1医療機関・薬局ごとに最大500円(医療費が500円未満のときはその額)を自己負担

自己負担は月2回までなので、月のうち3日目以降は負担がなくなります。また、入院の時も自己負担はありません。

神戸市の場合は上限が500円で月2回までなので、1ヶ月で上限1,000円となります。大した額ではありませんが、無料だった自治体から、負担金がある自治体に引越した方は、窓口で驚いてしまいそうですね。

使い勝手に直結!現物給付と償還払いの違い

医療費助成の給付を受け取るには、2つの方法があります。

ひとつは現物給付で、病院窓口での負担が全くない、または一部負担金だけ支払う方法です。もうひとつは償還(しょうかん)払いで、一旦窓口で2~3割の自己負担額を支払い、後日自治体で手続きをして給付を受ける方法です。

償還払いのみを採用している自治体は少数になってきていますが、長野県、福井県、三重県、鹿児島県、沖縄県などでは、償還払いのみの自治体も多いようです。

現金がなくても病院に駆け込めるのは現物給付

緊急時に便利なのは現物給付

急病でも、手持ちの現金を気にせず病院に行けるのは、現物給付です。一部負担金がない自治体では無料で治療してもらえますし、一部負担金がある自治体でも、少ない金額で受診できます。

治療を受ける側からすれば現物給付のほうが断然便利なのに、一旦窓口で2~3割の自己負担額を支払わないといけない償還払い方式をとっている自治体があるのはなぜでしょうか。

実は、現物給付を導入している自治体には、「国からもらえるお金(国庫負担金)が減らされる」というペナルティーが課されています。

現物給付することによって、病院に気軽に行く人が増えると、医療費が増えて国の負担が大きくなってしまうので、このようなペナルティーが設けられています。

そのため、現物給付にせず償還払いにしている自治体があるのですね。

なお、住んでいる自治体以外の病院を受診した場合は現物給付は受けられず、償還払いになります。
同じ県内なら現物給付が使えるところがほとんどですが、北海道などは地域が限定されています。

ペナルティー見直しで、償還払いのみの自治体は少なくなるかも

利用者からの要望に応えて、現物給付を導入している自治体もあります。平成27年度から、これまで償還払いだけだった石川県内の市町(金沢市、加賀市、小松市など)でも、現物給付が新たに導入されました。

厚生労働省がペナルティーを緩める方向で見直しをするという報道もあり、今後は現物給付を導入する自治体が増える可能性があります。

ただ、現物給付の手軽さから、緊急性がない軽症でも、夜間や休日に気軽に病院を受診する「コンビニ受診」が増えたという批判もあります。

夜間や休日には時間外診療の加算がついて医療費が高くなりますが、現物給付だと受診者の負担は増えないためです。

夜間の急病でもお金を気にせず病院に駆け込めるのは助かりますが、本当に緊急の時だけにしないと、他の患者さんにも迷惑がかかってしまいます。問題が大きくなれば現物給付拡大の動きも鈍化してしまうかも。コンビニ受診はやめましょうね。

子ども医療費助成とは?基礎知識を復習しておこう

子どもが生まれたらすぐ助成の手続きを

子どもの医療費助成の自治体間格差についてご紹介してきました。同じ国内でも条件や内容にすごい差がありましたよね。

では最後に、子どもの医療費助成の基礎知識を簡単におさらいしておきましょう。

健康保険に入っていない赤ちゃんや子どもは助成の対象外

年齢や所得制限を考える前の大前提として、乳幼児も健康保険に加入していないと、医療費助成は受けられません。

ですので、赤ちゃんが生まれたら、健康保険組合や共済組合あるいは国民健康保健への加入手続きを迅速に行いましょう。

なお、生活保護を受けている家庭の子どもは、生活保護制度から支援を受けるので、医療費助成は受けられません。

保険範囲内の医療費しか対象にならないのが原則

助成の対象になる費用は、保険の対象になる費用のみとしている自治体がほとんどです。健康診断、予防接種や薬の容器代など、保険の対象にならないものは、自己負担になります。

これも自治体によって異なる部分もあり、千葉市のように、保険対象外である入院中の食事代(食事療養費)を助成してくれるところもあれば、してくれないところもあります。

今後、食事療養費の負担額は段階的に増えることが決まっていますから※、助成してくれるのは嬉しいですね。

食事療養費の負担額増

平成27年度は1食260円でしたが、平成30年度には1食460円まで段階的に値上げされることが決まっています。低所得者層の負担は据え置きです。

助成を受けるためには、役所で医療証を交付してもらう

助成を受けるためには、医療証(自治体によっては受給者証、受給資格者証、受給券など)の交付が必要になる自治体がほとんどです。

子どもの名前が記載された保険証がもらえたら、他の必要書類も揃えて、役所で手続きをしましょう。自治体によっては、保険証に子どもの名前が入っていない状態でも手続きをしてくれますので、事前に確認しておくといいですね。

実は医療費助成の対象になる費用にも地域差があるんですね。各自治体のWEBサイトなどで内容をしっかり確認しておきましょう。特に引越して居住する自治体が変わった人は要注意です。

子どもの医療費助成の地域差には4つのポイントがある

子どもの医療費助成の地域差は年齢だけではなく、所得制限の有無、一部負担金の有無、給付方法にまで及んでいました。自分の住んでいる自治体、引越し先として考えている自治体の医療費助成の内容をチェックするときに、ぜひ参考にしてくださいね。

厚生労働省が発表した、医療費助成に関する調査結果には、市区町村別の医療費助成の実施状況が載っています。

最新のものは平成26年4月1日現在の内容なので今後変更があるかもしれませんが、役立つと思いますので、ぜひご覧になってみてください。