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ホスピス看護師とは!患者としっかり向き合いたい人にぴったりの仕事

ホスピス看護師とは!患者としっかり向き合いたい人にぴったりの仕事

「疾患やケガに苦しむ人を手助けしたい」「患者としっかり向き合える看護をしたい」と思って、看護の道を志した看護師は多いのではないでしょうか。しかし患者とコミュニケーションをとる時間を確保し、一人ひとりと向き合うことはなかなか難しいですよね。

そんな人におすすめなのがホスピスです。この記事ではメリット・デメリットや転職のコツを紹介します。それではさっそくホスピスへの理解を深めていきましょう。

ホスピスとは緩和ケアを行う施設!患者の意思を尊重する看護

名前は聞いたことがあるけど実際はどんなところか分からない、という人は多いのではないでしょうか。

ホスピスとは、がんやエイズなどの治療が困難になった患者に対して緩和ケアを行う施設です。

ホスピスにとって緩和ケアは患者支援の要となります。緩和ケアについてはWHO(世界保健機関)が次のように定義を定めています。

緩和ケアの定義(WHO2002)

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に同定し、適切な評価と治療によって、苦痛の予防と緩和を行うことで、QOL(Quality of Life:生活の質) を改善するアプローチである。

また、宮城県のがん情報サイトで「緩和ケア」について次のような説明がありました。

緩和ケアとは
・痛みやその他の苦痛な症状を和らげる。
・生命を尊重し、死を自然の過程と認める。
・死を早めたり、引き延ばすことを意図しない。
・患者ケアにおける心理的側面とスピリチュアルな側面を統合する。
・患者が最期まで人生をいきいきと、できるだけ活動的に生きることを支える。
・家族に対し患者の闘病中や死別後の生活に適応できるように支える。
・チームアプローチを用いて患者と家族のニーズに対処する。必要であれば死別後のカウンセリングを行う。
・QOLを高めて、病気の過程に良い影響を与える。
・化学療法や放射線療法などの他の延命を意図する治療と併存しながら、疾病の初期から適用可能である。さらに、必要ならそれらの治療に伴う副作用の緩和を行う。

ホスピスでは基本的に病気そのものに対する治療は積極的に行いません。重点的に行うのはあくまでも身体や精神面の苦痛を取り除くための緩和ケア。もちろん患者が希望すれば抗がん剤などの治療も可能です。

ホスピス(緩和ケア)は5種類ある!施設や方法によって異なるケア

1口にホスピスといっても、施設の形態やケアの提供方法にはいろいろ。患者の状態や希望によって選択できる緩和ケアの種類は次の5つです。

緩和ケアの種類
完全独立型 他の診療科を置かずに、緩和ケアのみを専門に行う施設
院内独立型 一般病棟と同じ敷地内に設立された緩和ケアを専門に行う病棟
院内病棟型 一般病棟の一部を緩和ケア専門の病棟にしている施設
緩和ケアチーム ホスピスがない病院でも緩和ケアが行えるよう病院内に置かれるチーム
在宅緩和ケア 自宅での治療を望む患者の支援や環境整備を行う

完全独立型、院内独立型、院内病棟型の中で日本で1番多い施設形態は院内病棟型です。次いで多いのは院内独立型、最も少ないのが完全独立型です。また、緩和ケアチームや在宅緩和ケアなどの病棟・施設がなくても行われる緩和ケアもあります。

ホスピスの需要は年々高まっており、今後も施設は増えていくと予測されています。

勤務形態や給与をチェック!キャリアアップと給与アップのポイント

ホスピスや緩和ケアについて説明したところで、次はホスピスで働く看護師の勤務形態や給与などの待遇面を確認したいと思います。加えてキャリアアップと給与アップのポイントも紹介します。

それでは日本で最も多い「院内病棟型ホスピス」と「完全独立型ホスピス」を例に、給与を確認しましょう。常勤で2交代制のホスピスの給与は次の通りです。

ホスピス看護師の給与・賞与
施設形態 給与・賞与
院内病棟型 ・月給295,000円~(夜勤4回分込み) 
・夜勤手当は1回15,000円
・賞与は給与の4~5カ月分
完全独立型 ・月給200,000円~(夜勤を含まない)
・賞与は年2回

ホスピスの給与は一般の病院と変わりません。しかしホスピスで働く場合は、給与ア
ップのポイントがあるんです。

給与アップのポイントは次の2つです。

給与アップのポイント
  • 認定看護師※の資格取得
  • 病棟承認制度を受けているか確認
認定看護師とは

緩和ケアや救急看護など特定の分野の知識と技術を深め、日本看護協会が行う認定試験に合格した看護師のこと。

緩和ケア認定看護師の資格を取得すれば、病院から手当てがでます。

さらに給与アップだけでなく、看護師としてのキャリアアップもできるのでおすすめです。給与が上がり、キャリアアップもできる認定看護師は魅力的な資格ですね。

専門性を高めることでより質の高いケアが行えるので、意欲のある人には資格の取得をおすすめします。より詳しく知りたい人は「看護師のキャリアアップ方法を紹介!おすすめの転職先と資格」の記事を参考にしてください。

もう1つ給与アップのために注意したのは、病棟承認制度を受けているかどうかです。

この制度は厚生労働省が行っており、承認を受けることで病院は経済的支援を受けることが可能です。承認を受けている病院は経済的支援を受けていることに加えて、労働環境が整っている場合が多いので給与水準が高い傾向にあります。

日本ホスピス緩和ケア協会のHPでは、厚生労働省の承認を受けている病院を紹介。正会員名簿から確認したい病院を選ぶと承認を受けているか確認できます。承認されていても入会していない病院は記載されないので、転職サイトと合わせて活用しましょう。

ホスピスの職場環境は激務なのか気になっている人も多いようです。その答えは、病院によります。ホスピスは激務だという人がいる一方で、一般病棟時代よりゆとりを持って看護ができるという人もいます。転職の際は労働環境についてもしっかり確認しましょう。

ホスピスのメリットとデメリット!ポイントは看護経験と精神力

ホスピスならではのメリットは次のとおりです。

ホスピスのメリット
  • 患者一人ひとりに寄り添った看護ができる
  • 患者だけでなく家族も含めたケアができる
  • 緩和ケアやターミナルケア※など専門性が高い

ホスピスのメリットは何といっても、患者と1対1のコミュニケーションがしっかりと取れて、患者の望みを叶えてあげられることです。

緩和ケアやターミナルケア※など専門性が高い仕事ができるのも、看護師のキャリアアップとしては嬉しいポイントですね。

ターミナルケアとは

末期症状の患者や家族に対して行う終末期の看護。身体だけではなく精神面のケアも行い患者の生活の質を高める。

ホスピスのメリットは魅力的なものばかりでしたね。それではデメリットも確認しましょう。

ホスピスのデメリット
  • 求人が少ない
  • 経験が求められる
  • 精神面での強さが必要

ホスピスの人気は年々高まっており、ホスピスで働きたいという看護師も増えています。ところが施設自体が少ないので、募集があまりかからないのが現状です。また経験や精神面の強さが必要とされるので、あまり自信がない人はこの点がデメリットとなります。

上記で見てきたように、メリットがあればもちろんデメリットもあります。看護という仕事において何を重視するかは人それぞれです。どちらも知ったうえで、ホスピス看護師への理解を深めていきましょう。

ホスピスで求められている看護師!新卒でもやる気次第では勤務可能

ホスピスでは基本的に一般の病院で3~5年ほど経験を積んだ看護師を募集しています。

終末期を迎えた患者を看護するには、看護師としての経験が必要であると考えられているからです。

末期症状の患者は、ホスピスに来るまでにつらい治療を続けてきた人がほとんど。一般の病院で経験を積んでいれば、ホスピスに行きつくまでの治療歴を理解することができます。そのため、より質の高いケアの提供が可能です。

ホスピスで働く場合に最も有利な資格は、上記でも紹介した緩和ケア認定看護師。他にも有利になる認定看護師資格には次の2つがあります。

緩和ケア認定看護師以外の有利資格
  • がん性疼痛看護認定看護師
  • がん化学療法看護認定看護師

それぞれの資格の概要は次のとおり。

がん性疼痛看護認定看護師の概要
痛みの緩和と適切な薬剤投与に関する知識や技術を習得
がん化学療法看護認定看護師の概要
がん化学療法薬の管理や副作用の緩和に関する知識や技術を習得

ホスピスに入所している患者の多くは、がん患者です。必須ではありませんが、上記で紹介した資格を持っている場合は転職が有利になります。

経験を積んだ看護師が求められると説明しましたが、やる気次第では新卒でも勤務できる病院があります。

ホスピスでは患者への心配りやコミュニケーション能力も必要なので、それらを重視する病院では新卒の募集も行っています。個人で探すには限界があるので転職サイトを使って求人を探してみましょう。

念願叶ってホスピスで働くことができた看護師でも、経験不足を痛感して一般病棟に転職して看護経験を積んでから再度ホスピスに転職する人もいます。新卒でも勤務は可能ですが、それなりの覚悟が必要です。

ホスピスで働くには転職サイトを活用!情報収集をしっかりと行おう

ホスピスには上記で紹介したように、いろいろな種類があります。また、名称についても「ホスピス」ではなく「緩和ケア」を用いる病院も増えているんです。

そのなかから自分に合ったホスピスを選ぶために、情報収集はしっかりと行いましょう。それでは病院選びのポイントを紹介します。

病院選びのポイント
  • 緩和ケアに対する病院の指針や理念に同意できるか
  • 教育体制が整っているか
  • 勤務形態や残業代などの待遇面

以上のポイントを踏まえて求人を探せば、希望にあったホスピスを見つけることができます。

勤めてから、「思っていたのと違う…」と転職を後悔しないためにも情報収集をしっかりと行いましょう。もっと詳しく知りたい人は「看護師必見!転職時に病院選びで失敗しない情報収集のポイント」の記事を参考にしてください。

ポイントを紹介してきましたが、1人で求人を探すのはなかなか大変。

そこでおすすめなのが転職サイトの利用です。

登録すると専任のコンサルタントがついてくれるので、キャリアプランや待遇面、勤務形態の交渉もしてくれます。さらに病院の見学も行えるので「転職を成功させたい!」という人は登録してみてください。

転職サイトの利用は無料ですし、在職中でも希望にマッチした求人がある場合は知らせてくれるので心強い味方です。

WHO(世界保健機関)では終末期医療を含むケアを緩和ケアとしています。そのために「ホスピス」ではなく「緩和ケア」を名称に用いる病院が増えていると考えられます。

注目を集める子ども向けホスピス!広がっていく緩和ケアの取り組み

子どもホスピスとは、その名の通り子どものために設立されたホスピスです。世界初の子どもホスピスはイギリスで1982年に設立された「ヘレン・ダグラスハウス」。この病院の特徴は次の通りです。

ヘレン・ダグラスハウスの特徴
  • 家族支援のためのレスパイトケア
  • 施設利用料は無料

レスパイトケアは休憩や息抜きという意味があり、一時的にケアの代替を行う家族のために行う支援方法です。

利用者のほとんどはレスパイトケアを目的に施設を訪れています。施設の運営費は寄付で賄われているので、無料で利用できるようです。

イギリスで始まった子どもホスピス設立の取り組みは、ドイツやカナダ、オーストラリア、アメリカへと広がっていきました。WHOは現在、世界基準となる小児緩和ケアガイドラインの作成を始めており、広がっていく小児緩和ケアの取り組みは日本にも及んでいます。

日本では1973年に淀川キリスト病院で初めて緩和ケアが行われました。その後2012年に「淀川キリスト病院こどもホスピス」が設立。日本ではまだ珍しい子どもホスピスですが、最近になってその取り組みは加速しています。

2016年4月にはユニクロや日本財団の支援を受けて、大阪に「TURUMIこどもホスピス」が開業。そして首都圏で初となる子どもホスピス「もみじの家」も開業しました。

子ども向けホスピス開業に向けて取り組んでいる団体はたくさんあり、今後も施設が増えていくことが予想できます。

子ども向けホスピスは日本にはまだ少ないのが現状です。どうしても働いてみたいという場合は海外で仕事をするという手もあります。もっと詳しく知りたい人は「海外の医療を学べる国際看護師と、活躍の場が広がる看護ボランティア」の記事を参考にしてください。

患者に寄り添える看護師になりたい人はホスピスがおすすめ!

この記事ではホスピス看護師のメリットやデメリット、転職のときに注意したいポイントなどを紹介しました。

自分に合った病院を探すポイントは3つ。「緩和ケアについての病院の考え方に賛同できるか」、「教育体制はしっかりしているか」、「待遇面は希望に合っているか」でしたね。

ホスピスでは患者一人ひとりに向き合った看護ができます。病院内の自由度が高いので、食事制限を受けていた患者でも食べたいものが食べられたり、散歩にでたりなど、その人が本当に望むことをしてあげられます。

一人ひとりに向き合うことのできない今の働き方に疑問を持っている人は、ホスピスへの転職を考えてみるのも1つの手です。

今一度、あなたの目指す看護について考えてみるのはどうでしょうか。