看護方式の種類やその違いは?メリット・デメリットも!

「患者さんを1人で担当していて大変」「担当の患者さんがいないので、仕事のやりがいを感じられない」など、看護の体制について不満を抱えている人は多くいます。
働いている病院の看護方式が、その不満を感じる原因の1つではないでしょうか。
病院で採用されている看護方式は主に6つ。
「チームナーシング」と「プライマリーナーシング」、「固定チームナーシング」、「モジュラーナーシング」、「パートナーシップ・ナーシングシステム」、「機能別看護方式」があります。
採用されている看護方式は、病院によって様々です。いくつかの看護方式を組み合わせて採用している病院もあります。
では6つの看護方式の特徴や、メリット・デメリットを見ていきましょう。
看護方式それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介
病院が採用している看護方式は主に6つあります。
- チームナーシング
- プライマリーナーシング
- 固定チームナーシング
- モジュラーナーシング(モジュール型ナーシング)
- パートナーシップ・ナーシングシステム(PNS)
- 機能別看護方式
病院によって採用している看護方式は様々です。それぞれの特徴は次のとおり。
看護方式 | 特徴 |
---|---|
チームナーシング | チームで患者を担当する |
プライマリーナーシング | 患者に一対一で担当看護師がつく |
固定チームナーシング | 看護師が固定されたチームで患者を担当する |
モジュラーナーシング | 数人のグループで患者を担当する |
パートナーシップ・ナーシングシステム | 看護師2人がパートナーを組んで患者を担当する |
機能別看護方式 | 検温、注射など業務別に作業を行う |
看護方式によってメリットやデメリットが違い、患者さんへの対応にも違いが出てきます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
チームで患者を看護する、チームナーシング
チームナーシングは、チームで患者さんに対応する看護方式です。チームはリーダーを中心として、複数の看護師で構成。1つの病棟に2つ以上のチームが設置してあり、リーダーやメンバーは定期的に変わります。
チームナーシングのメリット・デメリットは次のとおりです。
- 患者さんに質の高い看護を提供できる
- どの患者さんも同じ看護を受けられる
- キャリアの浅い看護師の成長速度が速まる
- 看護師個人の不足している能力をチームで補うことができる
- 患者さんにとって担当の看護師がいない
- 患者さんの情報をチーム全体で共有する必要がある
- 患者さんの小さな変化に気づきにくい
チームナーシングの看護は常にチームで行います。チーム内の看護師は、ベテラン看護師や新人看護師など均等に配置されるため、どの患者さんにも同じ質の看護を提供可能です。
ただし看護師は複数の患者さんを担当するので、患者さん一人ひとりとのコミュニケーションがしっかり取れず、小さな変化を見逃してしまう場合があります。
患者さんは複数の看護師に担当されるので、誰が自分の担当看護師なのか分かりません。そのため自分の体調が悪いとき、誰に相談すればいいのか判断できないのです。
1人の看護師が1人の患者を担当する、プライマリーナーシング
プライマリーナーシングは、1人の看護師が1人の患者さんを入院から退院まで対応する看護方式。看護師が担当する患者さんの人数は病院や病棟、診療科によっても変わりますが、およそ2人~7人程度です。
患者さんの担当看護師がいないときは、担当看護師の指示に従って、他の看護師が代わりに看護を続けます。
プライマリーナーシングのメリット・デメリットは次のとおりです。
- 患者さんとの信頼関係を築きやすい
- 患者さんの変化にいち早く気づくことができる
- 看護師の職務満足度が高まる
- 看護師の主体性、自立性が育つ
- 看護師能力の差が看護に反映されてしまう
- 看護師間のコミュニケーションが不足しがちになる
- 援助要請がしにくい
常に担当看護師がいるので、患者さんは安心して看護を受けることが可能です。
担当看護師は、患者さんの入院から退院まで対応できるので、仕事のやりがいや満足感に繋がります。
ただし、新人看護師とベテラン看護師では看護能力に差が出てしまうため、担当看護師によって看護の質に差が出るのです。
さらに他の看護師が担当している患者さんのことは詳しくないため、担当外の患者さんの体調不良時は援助が困難。担当看護師も、応援に来てくれた看護師に指示を出しづらい場合があります。
看護師1人とチームで患者を担当する、固定チームナーシング
固定チームナーシングは、チームナーシングが変化した看護方式です。チームナーシングと同様に、リーダーを中心として複数の看護師で構成するチームで患者さんに対応します。
チームナーシングと異なる点は2つです。
- 患者さんに1人ずつ担当看護師が付く
- チーム内の看護師が変わることなく固定される
チームナーシングは定期的にリーダーやメンバーが変わりますが、固定チームナーシングは一定期間リーダーとメンバーが変わりません。同じチームで継続して看護を続けることが可能です。
患者さんに看護を提供するのは、主に担当看護師。その担当看護師をチーム全体で支援します。
固定チームナーシングのメリット・デメリットは次のとおりです。
- 担当看護師がいないときも、担当チームが継続して看護を行うことが可能
- 患者さんに質の高い看護を提供できる
- チームメンバーの相互理解が深まり、チームの結束力が高まる
- 途中で看護師の配置転換や退職者が出ると、業務遂行が困難になる
- チームの連帯意識が必要
チームナーシングでは患者さんの担当看護師がいませんでしたが、固定チームナーシングは患者さんに対して1人の担当看護師がいます。そのため、患者さんは相談できる看護師がはっきり分かっていて安心です。
担当看護師はチームから支援を受けることができ、質の高い看護を提供できます。
ただし病院の定期的な配置換えがあったり、看護師の退職者が出たりすると、患者さんの担当看護師が不在になります。看護師の抜けた穴を塞ぐため、他の看護師の負担が重くなるのです。
数人の看護師で患者を担当する、モジュラーナーシング
モジュラーナーシングはモジュール型ナーシングとも言われています。プライマリーナーシングと固定チームナーシングの2つを組み合わせた看護方式です。
看護師のチームの中でさらに数人のグループを作って、そのグループが患者さんの入院から退院まで対応します。
患者さんに看護の提供をするのは、担当看護師ではなく担当グループです。グループは、リーダーを中心に複数の看護師で構成されます。
モジュラーナーシングのメリット・デメリットは次のとおりです。
- 一定の質を保った看護の提供ができる
- メンバーの相互理解が深まり、人間関係の高まりも期待できる
- 患者さん個人に合った看護を提供できる
- 他のグループが担当している患者さんの情報が分かりにくい
- グループ以外の看護師とのコミュニケーションが減る
チームナーシングや固定チームナーシングと同じように、モジュラーナーシングも看護の質が看護師によって左右されることはありません。患者さんは誰でも、同じ質の看護を受けることができるのです。
モジュラーナーシングは、グループ内の看護師同士でコミュニケーションが増えます。複数人で同じ患者さんを担当するには、グループ内でコミュニケーションを取って情報共有することが必要不可欠だからです。
ただし、他グループの看護師とのコミュニケーションは減ります。担当患者さんが体調不良で支援が必要なとき、滞りなく支援要請するためには、他グループの看護師とのコミュニケーションも大切です。
2人1組で看護する、パートナーシップ・ナーシングシステム
パートナーシップ・ナーシングシステムは看護師2人がパートナーを組んで、複数の患者さんを受け持ち、お互いの特性・能力を活かしながら看護業務を行う看護方式です。PNSとも言われています。
病院ではパートナーシップ・ナーシングシステムと、他の看護方式を組み合わせて採用する場合が多いです。
パートナーシップ・ナーシングシステムと他の看護方式の組み合わせについては後ほど「看護方式を組み合わせる!実際に病院で採用されている看護方式」で詳しく紹介しています。
パートナーシップ・ナーシングシステムのメリット・デメリットは次のとおりです。
- 看護師の精神的負担が和らぐ
- 看護師同士のコミュニケーションが増える
- 看護の質が高まる
- ブランクのある看護師や新人看護師でも安心して働ける
- 仕事量が増える
- 新人看護師がベテラン看護師へ主張できない
- すぐに相談できるので、自分で考える力が身につかない
2人で業務を行うことで看護の質が高まり、ブランクのある看護師や新人看護師でも安心して働くことが可能です。
パートナーシップ・ナーシングシステムは、キャリアの浅い看護師とベテラン看護師でパートナーを組む場合が多い傾向にあります。何か困ったことがあればすぐに相談しやすい環境ですが、キャリアの浅い看護師は自分の考えを主張しづらいこともあるのです。
効率よく業務を進める、機能別看護方式
機能別看護方式は、検温・与薬・処置・注射などの担当を決めてその日の業務を行います。
患者さんの担当看護師はいません。看護師は担当する業務に応じて、複数の患者さんに看護を提供します。
機能別看護方式のメリット・デメリットは次のとおりです。
- 作業の分担化により、時間と労力が節約できる
- 看護師の能力に応じた作業を割り当てることができる
- 患者さんの担当看護師がいない
- 看護師と患者さんの関係が希薄になる
- 看護師の職務満足度が低くなりやすい
患者さんは複数の看護師に看護されます。
看護師は与えられた業務のみこなすので、効率よく作業を進めることが可能です。ただし患者さんとのコミュニケーションが十分にとれず、仕事の満足度は低い傾向があります。
看護方式を組み合わせる!実際に病院で採用されている看護方式
主な看護方式は6つあり、看護方式1つのみ採用している病院もあれば、2つを組み合わせて採用している病院もあります。
ここでは実際に病院で採用されている、看護方式の組み合わせを見ていきましょう。
固定チームナーシングとPNSを組み合わせた看護方式
ある病院では、複数の看護師で構成されたチームで患者さんの対応をする「固定チームナーシング」と、看護師2人がパートナーを組んで看護を提供する「パートナーシップ・ナーシングシステム(PNS)」を組み合わせた看護方式を採用しています。
この2つを組み合わせた看護方式は、チームの中で看護師同士がパートナーを組んで、2人で患者さんに対応。その看護師2人を、チーム内の看護師やチームリーダーが支援するシステムです。
1人ではなく2人で患者さんに対応することで、より質の高い看護の提供ができます。さらに2人を支援するチームの存在により、看護師が安心して業務に集中することが可能です。
固定チームナーシング、PNS、機能別看護方式の組み合わせ
チームで看護を行う「固定チームナーシング」と、2人で患者さんに対応する「パートナーシップ・ナーシングシステム(PNS)」、担当業務を決めて仕事を行う「機能別看護方式」の3つを組み合わせて採用している病院もあります。
この病院はそれぞれの看護方式から、良いところだけを抜き出して組み合わせているのです。
それぞれ抜き出した点は次のとおり。
看護方式 | 特徴 |
---|---|
固定チームナーシング | ・患者さんに担当看護師がつく ・チームで担当看護師を支援する |
PNS | ・いつでも相談できるパートナーがいる |
機能別看護方式 | ・決められた担当業務をこなす |
固定チームナーシングとパートナーシップ・ナーシングシステム、機能別看護方式の3つを組み合わせた場合の、1日の仕事の流れを見ていきましょう。
時間 | 仕事内容 |
---|---|
8:00 | 出勤 今日の担当患者さんの情報収集 |
10:00 | 患者さんへ挨拶 看護ケア |
12:00 | 休憩 |
14:00 | 所属チームのカンファレンス |
16:00 | 検温などの担当業務に回りながら記録 |
17:00 | 交代の看護師へ引き継ぎ 退勤 |
患者さんの担当看護師は1人ですが、パートナーシップ体制により、何かあればすぐに先輩看護師へ相談が可能です。
この看護方式は、基本的にチームで患者さんの対応をします。チーム内で決められた患者さんに看護を提供し、複数の患者さんに検温や与薬などの与えられた業務をこなしていく場合もあるのです。
自分に合った看護方式で働きましょう
「患者さんを最初から最後まで、責任を持って看護したい」という人は、プライマリーナーシングやモジュラーナーシングを採用している病院を探してみてください。
「まだ1人で患者さんを担当するのは不安」「看護師に復帰したばかりで、ちゃんと業務をこなしていけるか不安」という人は、チームナーシングや固定チームナーシング、パートナーシップ・ナーシングシステムを採用している病院を探してみてはいかがでしょうか。
「決められた業務だけを黙々とこなしたい」という人には、機能別看護方式がおすすめです。
求める働き方や現在のキャリアによっても、自分に合う看護方式は変わってきます。
紹介した看護方式を参考にして、働きやすい病院を見つけてください。