科別の看護師さんの仕事をご紹介

プロフェッショナルな看護師を目指すなら消化器外科が最適!

プロフェッショナルな看護師を目指すなら消化器外科が最適!

人間は誰しも、食事をとらないと生きることができません。口から入った飲食物を少しずつ消化して栄養に変えて吸収し、不要なものは排泄していくという流れが、体内で毎日行われています。この、生命維持に非常に大きな役割を果たしている、口から肛門までの器官が消化器です。

消化器を扱う診療科としては、主に消化器科・消化器内科・消化器外科の3つがあります。胃腸科や口腔外科などさらに細かく分かれた科も存在しますが、今回はこの中から消化器外科をピックアップしたいと思います。

近年ますます患者数が増加傾向にある、消化器外科。看護師の職場という視点で見てみたら、一体どんな場所なのでしょうか?

取り扱う疾患は?患者さんの特徴は?消化器外科の概要をご紹介!

消化器外科という科では、とても多くの病気を扱いますし、患者さんの数も多いです。消化器外科がどんなところなのかを理解するためにも、その内訳を具体的に知っておきましょう。

消化器外科とは

消化器外科は「消化器」を扱う科なわけですが、その消化器とは口から肛門までの臓器や器官を指します。

しかし、口腔を扱うことはあまりなく、一般的に消化器外科で扱う器官は

  • 食道
  • 胆道
  • 肝臓
  • 脾臓
  • 大腸

これらのものです。

範囲も臓器や器官の数も大きく、消化器外科で扱うところが人間の内臓の大部分を占めていると言えます。

消化器外科と似た名前の科として「消化器内科」があり、ここでは外科処置を要しない消化器疾患を扱います。また、消化器内科と消化器外科を合わせた「消化器科」もあり、どちらも扱う臓器や器官は同じです。

すなわち、上記の消化器の病気のうち、特に外科処置を必要とするものを扱うのが消化器外科というわけです。

消化器外科の対象となる病気とは

それでは、消化器外科で診る具体的な病気についてご紹介します。

  • がん
  • 胆石
  • 急性膵炎
  • 食道・胃静脈瘤
  • 腸閉塞
  • 潰瘍性大腸炎

主に、このような疾患を取り扱います。腸閉塞などは赤ちゃんでも突然罹りますし、その他の病気も誰でもいつ発症してもおかしくないものばかりです。したがって、消化器外科には乳幼児から高齢者まで、幅広い患者さんが来院されるのです。

しかも、急性期の疾患から慢性経過をたどっているものまで、病気のステージも様々です。臓器や器官だけでなく患者さんの年齢層や状態も幅広いわけですから、看護師が持つ知識や技術さらには接遇態度も、幅広いものでなければなりません。

消化器外科はがん患者が多い

また、消化器外科の大きな特徴として、がんの患者さんがとても多いことが挙げられます。

主な部位別がん死亡数

こちらのグラフは、2014年にがんで亡くなった方の部位別の人数です。

左から食道がん・胃がん・大腸がん・肝臓がん・胆のう胆管がん・膵臓がんと続いていますが、これらすべてが消化器外科の対象となるガンです。

実に、すべてのがん死亡者数の過半数を占めており、消化器のガンで亡くなる方が多いことがよく分かります。

胃がんになった人の数

死亡者数でなく罹患数で見てみると、胃がんと大腸がんが1位と2位であり、やはり消化器外科のガン患者数の多さを物語っています。

日本人の2人に1人はがんに罹ると言われている昨今、消化器外科は非常に高いニーズを持つ科であると言えます。

これほどにガンの患者さんが多いのですから、がんによる疼痛や緩和ケアの知識、患者さんのみならず家族の精神的なケアも重要になることは言うまでもありません。

消化器外科の領域は、胃・大腸・肝臓など人間の内臓の大部分を占め、がん患者さんが多いことも特徴のひとつです。これらの消化器に関する疾患のうち、外科手術を必要とするものが対象となります。

赤ちゃんから高齢者まで誰もがかかり得る、ニーズの高い診療科です。

消化器外科の看護師がすべきお仕事とは?求められる人材を知ろう

消化器外科がとても需要の高い診療科であることをお伝えしてきましたが、その分、看護師が働く場所としても多くのニーズがあります。では、実際の消化器外科はどんなところにあるのでしょうか。

消化器外科の勤務先

消化器外科には

  • 大学病院
  • 総合病院
  • クリニック

これらの種類があり、外科手術を行う科であるため基本的に病床を持っています。また、病状が重い患者さんが多い関係から、やはり消化器外科の勤務先としては、総合病院や大学病院などの大きな規模の、病棟も広く持っている病院が多いです。

また、急性期・重症患者を24時間体制で診療する、いわゆる急性期病院の中にも消化器外科は多いです。

このように、基本的に入院治療が必要な患者さんが多いため、消化器外科の看護師には原則として夜勤があります。

ただし、大病院に比べて少数とはいえ、小規模の消化器外科クリニックもあります。このように、小規模で日帰り手術のみ行っているようなところでは、夜勤はありません。

消化器外科の看護師の仕事内容

では、消化器外科の看護師にはどんなお仕事があるのでしょうか。

外来 病棟
投薬
注射・点滴
採血などの一般的な検査
医師の診察や処置の補助
清拭・バイタルチェック
化学療法(抗がん剤治療)
ストーマケア
緩和ケア
疼痛コントロール
オペ室業務など手術に関する仕事

外来はほぼ他科と同じようなお仕事内容ですが、病棟の場合は清拭やバイタルチェックなどの他科と同じもの以外にも、化学療法や緩和ケア、オペ室業務など、がんや人工肛門の患者さんが多い消化器外科ならではのお仕事がたくさんあります。

がん患者の方々のみならず、このような人工肛門(ストーマ)になった患者さんは、非常に大きな精神的ショックを受けている方も少なくありません。身体的なストーマケアはもちろんですが、患者さんがご自身の人工肛門を受け入れていくまでの心理的な支えになることも、看護師の役割のひとつです。

消化器外科に求められるスキルとは

上記のお仕事内容を見ても分かるように、消化器内科の中でも特に病棟の看護師はやるべきことの数も内容も非常に多彩で、忙しいです。

日々移り変わる患者さんの状態をしっかりと把握し、その時々に応じて最適の看護が何であるのかを常に自問自答しながらも、医師を始めとする他職種の方々と連携を取って動くことが必要になります。

したがって、消化器外科に求められる人材は、外科領域にふさわしくキビキビと動けることだけでなく、患者さんの辛さに寄り添って心のケアをすることができる人と言えます。

また、終末期の患者さんや亡くなられる患者さんも少なくないため、精神的につらいことも多いかと思います。頑張りすぎて燃え尽きてしまわないように、セルフコントロールができることも消化器外科で働く看護師に求められることです。

忙しくて何かと大変な科ではありますが、様々な患者さんをみることができ、貴重な経験を積んでスキルアップしていくことが可能な科でもあります。消化器外科で働いた経験は、他科が楽に感じるほど充実したものになり得ることでしょう。
一般的に「外科」とつく診療科は忙しいことが多いものですが、消化器外科はその最たるものと言えます。

急性期から慢性期、さらにはガンなどの終末期の患者さんまで、非常に幅広いので、単なる外科の忙しさだけではなく、緩和ケアやストーマケアなど、より専門的な知識が必要とされます。大変な事も多いですが、やりがいも大きいですよ。

知りたい!消化器外科のお給料やキャリアアップはどんな感じ?

お伝えしてきたように、数ある看護師の職場の中でもトップクラスと言っていいほど忙しく、多岐に渡る知識や技術を要されるのが消化器外科です。待遇面ではどんな感じなのでしょうか?また、キャリアアップするには、どんな方法があるのでしょうか。

消化器外科看護師のお給料

消化器外科の看護師は、基本給としては他科とそれほど変わらないと言われています。

しかし、夜勤があるところも多いですし、お伝えしているように忙しい科なので残業も少なくないため、各種手当によって支給額は多めになる傾向があります。

また、消化器外科看護師としてきっちりと仕事をこなしていくためには、スキルアップが欠かせません。具体的には、

  • がん看護専門看護師
  • 緩和ケア認定看護師
  • がん性疼痛認定看護師
  • 皮膚・排泄ケア認定看護師
  • がん化学療法認定看護師

これらの専門資格や各種認定資格を取得すると良いでしょう。

この後ご紹介するがん看護専門看護師にくらべて認定看護師の方がややハードルは低く、5年以上(専門分野では3年以上)の実務経験・半年以上の講習受講・認定試験に合格という流れで取得できます。これを持っているだけでも、待遇アップが見込めます。

がん看護専門看護師

消化器外科には特にがん患者さんが多いですから、上記の資格の中でも「がん看護専門看護師」を取れば盤石の構えです。

がん医療では、インフォームドコンセント、治療とその副作用、症状の緩和、療養などに関連したさまざまな課題があります。がん看護専門看護師は、そのような課題に直面している患者さん、ご家族、看護師をサポートします。
患者さんやご家族に直接ケアを行ったり、看護師からの相談に応じたり、カンファレンスに参加したり、チーム医療が効果的に実践できるように多職種と協働しています。
引用元:がん研有明病院 看護部

この専門資格を取るには、

  • 看護系大学院で所定の単位を取得すること
  • 5年以上(専門分野で3年以上)の実務経験を有すること
  • 認定審査に合格すること
これらすべての要件を満たさなければなりません。取得するのはなかなか大変ですが、がん看護専門看護師の資格を持っていれば、現場で患者さんやご家族、他のスタッフのお役に立てるだけでなく、お給料アップの可能性も限りなく大きいです。

消化器外科看護師の志望動機と求人の見つけ方

ここまでお読みになって、消化器外科のお仕事はとても忙しくて大変だというイメージができた方もいらっしゃるかもしれません。そのため、新人ナースには務まらないのではという不安が生まれてしまったかもしれませんが、決してそんなことはありません。

むしろ、新人の頃に消化器外科を経験すれば、その後どんな診療科や病院へ行ってもきっと大丈夫と思えるほど、貴重で豊かな経験を積むことができます。プロフェッショナルな看護師になりたいという志望動機で、あえて消化器外科を希望する人もいるくらいです。

消化器外科で働きたいとお考えの方は、以下のような方法で求人情報を探してみましょう。

  • ハローワーク
  • 一般的な求人雑誌や求人広告
  • 看護師専門の求人サイト

消化器外科自体がたくさんありますし、人手も必要な科です。さらに、ハードなので辞めていく方もいることから、求人はたくさんあると思われます。そういう意味では選択肢は比較的豊富ですので、条件や勤務形態などをじっくり吟味してご自身に合うところを選んで下さい。

消化器外科は対象となる臓器や疾患が多いうえに、患者さんの年齢層や状態も実に幅広いので、他科ではできないレベルの様々な経験を積むことができます。

その分、持っていると役に立つ専門資格も多いですし、消化器外科で一人前のナースとして働ければ、その後どんな科にでも転職しやすくなります。若いうちにぜひ経験しておきたい科のひとつと言えますね。

やりがい満点!看護師として最大限の経験値が積める消化器外科

看護師が働く場所の中でも、かなり忙しい消化器外科ですが、その分大きなやりがいも得られます。終末期やストーマの患者さんが多いことで、人間の尊厳というものについて考えさせられる機会も多いでしょう。

そのため、患者さんやご家族との時間を通して、看護師としてはもちろん、人としても大きく成長していける診療科なのではないでしょうか。看護師としての本分をきっちり果たせる科でもあり、看護のプロを目指すなら消化器外科での経験は必ず大きな自信となります。

状況が許すのであれば、ぜひ消化器外科にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。