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混合診療解禁で自費診療増!?民間医療保険が高くなる可能性も大

混合診療の解禁で保険はどう変わるのか

2016年から混合診療が一部解禁されることが決定して、大きなニュースになりました。実際には、すでに先進医療などは混合診療として認められていますから、「混合診療の範囲が拡大することが決まった」というほうが正確です。

混合診療の解禁は、医療制度・公的医療保険制度の改革のひとつとして長年にわたって議論されてきた問題で、今回、範囲拡大が決まった後も、賛成派と反対派のそれぞれが意見を主張しあっています。

しかし、そもそも混合診療って何なのか、混合診療の範囲が拡大されたら私たちの暮らしにどんな影響があるのか、知らない方も多いのではないでしょうか。

医療費の自己負担が高くなるなど、いろんな意見がありますが、民間医療保険に関しては混合診療に対応した保険が高い保険料で登場する可能性が大です。

混合診療とはそもそも何か、新しく導入される「患者申出療養」とはどんな制度なのかということから、混合診療解禁に合わせて登場しそうな民間医療保険についてもご紹介していきます。

混合診療の基礎知識!先進医療と患者申出療養の違い

2016年から、「患者申出療養」という名前で、新しい混合診療の制度が始まります。新制度開始にあたっては、テレビや新聞でも取り上げられましたし、賛否両論いろんな意見が出ました。

しかし話題になったわりに、混合診療について詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。まずは混合診療とは何かについてご説明し、新しく始まる混合診療制度の概要をご紹介します。

そもそも混合診療とは?保険診療と保険外診療の合わせ技

混合診療とは、公的な健康保険が使える保険適用の保険診療と、健康保険が使えない保険外の自由診療(自費診療)を組み合わせて行う診療のことです。

日本では保険適用内の診療は3割負担(子どもや高齢者は自己負担額が異なる)と決まっているので、普段私たちが病院にかかると窓口で3割の自己負担額を払います。

一方、自由診療は保険適用外の診療で、医療費は全額自己負担になります。国内で認可されていない薬や、できたばかりの新しい治療技術などが保険外の自由診療になります。

この保険適用内と適用外の診療を合わせて行うことを混合診療と呼んでいます。

ごく一部の例外を除いて、混合診療を受けた場合には、保険診療分も全額自己負担になってしまうという決まりがあります。混合診療を受けたことによって、3割負担で済むはずの保険診療分まで10割負担になるということです

先進医療は、現時点で認められている混合診療

混合診療を受けた場合、ごく一部の例外にあたるケースを除いて、保険適用分も全額自己負担になってしまいます。

保険適用分が3割負担のままになる例外としては、公的保険を適用するか検討中の評価療養と、今後も健康保険を適用することがない選定療養があり、具体的にはこんなものがあります。

  • 先進医療
  • 医薬品や医療機器の治験
  • 薬事法で承認されているが、保険適用になっていない薬や医療機器の使用
  • 時間外診療費
  • 大病院の初診費用
  • 個室での入院を希望したときにかかる差額ベッド代

代表的なものは評価療養のひとつ、先進医療です。先進医療は保険適用にするかどうかの評価段階にある新しい医療技術のことで、安全で効果が高いと判断されれば保険診療になる可能性があります。

例外として認められているため、保険診療と先進医療を併用する混合診療を受けても、保険診療分は3割負担ですみます。

ただし、自由診療分には保険が効かないので、治療によっては200万円や300万円など、高額な自己負担が発生するものもあります。そのため、民間医療保険では、先進医療の費用に備えるための先進医療特約が人気となっています。

新しくはじまる患者申出療養は、保険適用分の診療が3割負担になる混合診療の「例外」の範囲を拡大する制度です。

混合診療の新制度「患者申出療養制度」と先進医療との違い

患者の希望で治療開始される新制度

新たにはじまる患者申出療養では、国内で未承認の薬などが自由診療で使えるようになります。

保険適用を目指すものだけが認められるという条件はついていますが、現在先進医療として認められていない治療法や薬に関しても、保険診療分は3割負担で受けることができるようになります。

さらに、先進医療との違いはこのようになっています。

患者申出療養 ・患者からの希望をもとに、安全性などの審査を経て治療が開始される
・安全性や効果を審査する期間は2~6週間
・すでに実績がありリスクが低い治療法は、患者の身近な医療機関でも実施可能
先進医療 ・患者が希望しても、基準を満たさなければ治療を受けられない
・審査期間は3~6ヶ月
・治療内容によっては、実施機関の数がかなり少ない
患者申出診療の大きな特徴は、患者の希望がスタート地点になるということです。また、先進医療に比べて審査期間が短く、「早く治療を開始したい」という患者の希望に沿ったものになっています。

賛成派・反対派の意見とは?混合診療解禁のメリットとデメリット

新聞などのマスコミやネット上では、混合診療賛成派と反対派の意見がぶつかっています。

患者申出診療が始まって混合診療を拡大すれば、国内未承認薬を使った治療や、海外で実施されているのに日本では保険が効かず実施されてこなかった治療法などを受けやすくなります。

さらに、先進医療だと治療を受けられる病院が限られていましたが、患者申出療養が始まれば身近な病院で受けることも可能になります。これが賛成派のもっとも大きな主張です。

保険適用部分は3割負担で済むようになりますから、費用も今までより抑えられて、いいことのように思いますが、反対意見があるのはどうしてなのでしょうか。

主な反対意見としては、「審査期間が6週間と短く、自由診療の安全性が確保できない可能性がある」という主張があります。この他にも反対派の主張がありますので、ご紹介しますね。

混合診療拡大で薬の価格が高いままになってしまう危険性

新薬価格の高止まりが懸念されている

まず、混合診療が広がると、新しくできた薬の価格が高いままになる可能性があります。

現在は、薬が保険適用にならないと、広く病院で使ってもらえないので、製薬会社は新しい薬が保険適用になるように手続きを踏んでいます。保険が適用されれば、患者側は安くその薬を手に入れることができます。

でも、混合診療が解禁されて自由診療が広がったら、保険適用にしなくても薬を使ってもらえる可能性が高くなります。そのため、製薬会社がわざわざ手間をかけて保険適用にしなくなるというわけです。

「薬が高い」といっても、イメージが湧かない方もいるでしょう。でも、薬って本当に高いんですよ。

国立がん研究センターが2015年8月に発表した、混合診療の対象になりうる抗がん剤リストの中には、月700万円以上かかる薬など、びっくりするくらい高価な薬が含まれています。

<国内未承認抗がん剤の1ヶ月あたりの薬剤費>

  • ブリナツモマブ:724万円
  • ジヌツキシマブ:360万円
  • ベリノスタット:305万円

混合診療が始まる2016年をめどに、新薬の保険適用の審査基準も厳しくなることが決まっているので、保険適用されない薬は今までよりは増えると予想されます。

患者申出診療の治療法が将来的に保険適用されるか疑わしい

保険適用を目指す治療法のみを混合診療の対象にすると決められていますが、実際に保険適用が進むか疑問だという声もあります。

実は、先行して実施されている先進医療でも、なかなか保険適用になる治療法が出てきていません。そのため、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会などは、患者申出療養でも、混合診療の対象になった自由診療が、保険適用になるか疑わしいと指摘しています。

「自由診療分の費用が高額なままになってしまう可能性が高い混合診療ではなく、そもそも自由診療を保険適用にすることが患者にとって一番いい」ということですね。

確かに、そのほうが患者側の医療費の負担は断然減ります。

さらに、日本では医療費支出が財政を圧迫していて、政府は医療費の抑制を目指しています。保険適用になる治療が増えないまま自由診療の範囲が拡大する反面、医療費削減を目指して公的保険給付の範囲が狭められていけば、患者の自己負担がますます増えていくという不安を訴える人たちもいます。

患者申出診療対応の保険に入るべきか?新保険の検討は慎重に

焦らずに保険を比較検討することが大事

混合診療の一部解禁で自由診療に挑戦しやすくなるのは、確かに大きなメリットです。しかし、3割負担になるのは保険適用範囲内の診療だけですから、保険外の自由診療部分の医療費が高いのは変わらず、お金がなければ進んだ医療を受けられない状況になりかねません。

「保険診療の範囲内でも、効果がある治療法はあるのだから、患者申出療養や先進診療を希望しなければいい」という意見もあるでしょう。でも実際に自分や家族が難病・重病になった場合はそうも言っていられません。

助かる見込みがあるなら、高額な治療でも受けたい・受けさせたいと思うはずです。

そんな状況に備えるため、混合診療の解禁に合わせて、新しい民間保険も出てくることが予想されています。

どんな保険が出る?混合診療特約のほかに実損タイプが増えるかも

「混合診療特約」「患者申出療養特約」などの商品は必ず出てくるでしょう。現在主流の定額給付型ではなく、損害保険型の保険も増えてくるかもしれませんね。

ただ、これらの保険に加入しようと思った場合に注意しておいたほうがいいのは、新しい特約や保険商品の保険料が、適正な価格なのかどうかが判断しにくいということです。

新しい商品なので、比較対象がないですからね。

患者申出療養に備えて、保険を契約したり乗り換えたい人はかなりの数いるでしょうから、多少高くても、新制度に対応している保険は売れるはずです。需要を見込んで、高めの値段設定で販売される可能性もあります。

損害保険型の医療保険
 
損害保険会社から発売されている、実際にかかった医療費を全額補償してくれる医療保険。

時間が経てば低保険料などバリエーションが増える可能性あり

とりあえず保険に入っておいて、混合診療が開始されてしばらくたってから、データを参考に保険を乗り換えるという選択肢もあります。

制度開始後しばらくすれば、多く実施されている治療法や薬に、実際どれくらいの費用がかかっているのかなどのデータが出てくるでしょう。そうなれば、民間保険を選ぶための判断材料が出てきて、各商品を比較検討しやすくなるはずです。

例えば、実施された混合診療の自己負担額が、ほとんど2,000万円以内におさまっていることがわかったとします。その場合には、さらに新しくて高い治療法が出てくる可能性を考慮しても、保険金の上限が3,000万円とか5,000万円くらいなら安心といえるのではないでしょうか。

データが出てくれば、保険料に上限をつけたほうがいいのか、つけるなら上限はいくらくらいにすればいいのかを判断しやすいですよね。もちろん、上限額が下がれば、保険料は安いはずです。

「とにかく心配だから」と急いで保険に入ってしまって、あとからもっと良い条件で保険料が安いものが販売されて後悔・・・ということが起こりえます。いくつかの保険会社から似たような商品が出た時点で、比較してみるのがおすすめですよ。

患者申出診療の特徴と混合診療対応保険の検討策まとめ

混合診療には薬の価格の高騰が懸念されるなどのデメリットもありますが、新しい治療法や薬を試しやすくなるメリットもあります。
 
患者申出診療で高額な治療を受ける可能性が広がったいっても、混合診療対応の保険が出てきたときに慌てて加入する必要はありません。
 
患者申出診療は患者が希望して受けるものですし、制度が始まってもすぐ自分が受ける可能性は低いです。実際、現在認められている混合診療である先進医療でも、治療を受けられる人の数はかなり限られています。
 
「そうは言っても心配だから、患者申出診療に対応する保険が出てきたら、できるだけ早く入りたい」という方は、割高だと気づいた時に乗り換えやすいように、終身医療保険ではなくて定期タイプの保険に入っておくのもいいでしょう。
 
「焦って保険に入って、割高な保険料を払い続けることになってしまった」と後悔しないよう、注意しないといけませんよ。