> > 女性保険って必要?女性が知っておきたい保険の選び方

女性保険って必要?女性が知っておきたい保険の選び方

女性用保険の必要性を考える

女性特有の病気を手厚く保障してくれる、女性専用の保険の広告をよく見かけますよね。広告を見て「女性は乳がんとか妊娠・出産もあるし、女性保険に入ったほうがいいのかな」と考える方も多いのではないでしょうか。

でも、普通の医療保険でも女性の病気や異常分娩は保障してくれるんですよ。それに、女性特有の病気だけが怖いわけではないですし、女性特有の病気の治療費が高額になるとも限りません。

女性専用の保険は「女性ならお得に加入できる」商品ではありませんから、特定の病気への保障を手厚くするため、保険料も割高になってしまいます。

なんとなく「女性だから、女性保険のほうがいいかな」と契約する前に、保険料を多めに払ってまで女性専用保険に入る必要があるか、考えてみませんか。

女性保険は給付金増額する分保険料が高い

まずは女性用の保険(女性保険)とはどんな特徴がある保険商品なのかを知っておきましょう。

「女性特有の病気(疾患)を手厚く保障」すると宣伝されていますが、保障がどれくらい手厚いのかや、「女性特有の病気」にはどんな病気が含まれるのかが気になりますね。

また、手厚い保障を受けるには、どうしても保険料が割高になります。女性用ではない保険との保険料の差もご紹介します。

乳がんや子宮筋腫は給付金の額が増額される

女性特有の病気に手厚い女性用保険

女性保険では、乳がんなどの女性特有の病気になると入院給付金などが増額されるのがメリットです。

同じ保険会社の女性保険と、そうではない保険の入院給付金を比べてみましょう。

給付金の種類 商品A(男女兼用) 商品B(女性用)
入院給付金/日 10,000円 10,000円
女性特有の病気の場合/日 追加なし 10,000円追加

この商品では、女性特有の病気で入院した時には、入院給付金が10,000円上乗せされます。5,000円増額などの保険もあります。

女性特有の病気だと、人目が気になったり気分が落ち込んだりして、個室で入院したい場合もあるでしょう。これだけ入院給付金をもらえれば、個室に入るための差額ベッド代※を余裕をもって払えます。
差額ベッド代とは
 
患者本人が「希望」または「同意書にサイン」したうえで、1~4人用の部屋に入院した時にかかる費用。健康保険の対象外なので、全額自己負担となります。金額は病院によって異なりますが、個室だと全国平均で約7,000~8,000円(1日)程度がかかります。

「女性特有」の範囲は保険によって違う

女性しかかからない病気には、乳がん、子宮がん、子宮筋腫などがあります。

男性も女性もかかるけれど、極端に女性患者が多い病気としては、橋本病・バセドウ病などの甲状腺の病気や、関節リウマチが挙げられます。

このように、女性特有の病気、女性がかかりやすい病気はいろいろありますが、保険商品によって、手厚い保障の対象になる範囲が異なります。

いくつかの保険商品を比べてみましょう。

商品C ・乳房、女性性器の良性または性質不詳の新生物(子宮筋腫など)
・甲状腺の病気
・乳房、女性性器の病気(子宮内膜症など)
・妊娠、分娩および産じょくの合併症(妊娠高血圧症候群、帝王切開など)
※がんは対象外
商品D ・乳房、女性性器の良性または性質不詳の新生物(子宮筋腫など)
・甲状腺の病気
・乳房、女性性器の病気(子宮内膜症など)
・妊娠、分娩および産じょくの合併症(妊娠高血圧症候群、帝王切開など)
・がん(乳房、女性生殖器はじめ、消化器、呼吸器なども含む)
商品E ・良性新生物(子宮筋腫など)
・卵巣機能障害
・関節リウマチ
・乳房、女性性器の病気(子宮内膜症など)
・妊娠、分娩および産じょくの合併症(妊娠高血圧症候群、帝王切開など)
・がん(乳房、子宮、卵巣、胎盤など)

甲状腺の病気や関節リウマチが含まれるのかが大きく異なりますね。

がんの扱いもかなり異なっており、対象外となる保険、広範囲のがんを手厚く保障してくれる保険、女性特有のがんのみ手厚く保障してくれる保険があることがわかります。

妊娠・出産にかかわる合併症などについてはどの保険も手厚く保障してくれることがわかりました。

給付金の額を増やすため、女性保険の保険料は当然割高

女性保険は特定の病気の保障を手厚くし、給付金の額を増やしていますから、その分保険料は高くなるというデメリットがあります。

ある保険会社の商品を例に、女性専用とそうではないものの保険料を比較してみました。30歳女性の場合で、女性保険は女性特有の病気になったら入院給付金の額が10,000円から20,000円に増えます。

男女兼用 女性保険
5,210円 5,836円

女性専用の商品は、保険料が高いことがわかりますね。

生存給付金(ボーナス)をつけるとさらに保険料は高くなる

女性保険の中には、「生存していれば、3年に1度、生存給付金(ボーナス)がもらえる」といった商品もあり、そういった商品はさらに保険料が高くなります。

ある保険会社の男女兼用保険の保険料と、「女性特有の病気になったら入院給付金の額が10,000円から15,000円に増え、3年に1度生存給付金がもらえる」女性保険の保険料を比べました。30歳女性の場合です。

男女兼用 女性保険(生存給付金付き)
4,622円 8,101円
「生存給付金をもらえるなら、掛け捨てよりもお得に感じる」なんて人もいるのですが、実は自分が多めに払った保険料が戻ってきているだけです。正直に感想を申し上げると、あまり意味はありませんね。

女性保険ではない保険でも女性特有の病気はしっかり保障

女性保険の特徴についてお伝えしてきましたが、実は女性専用でなくても、女性特有の病気や異常分娩を保障してくれる保険がほとんどです。「女性専用でなくても保障内容は十分」と考える人も多いんですよ。

女性用ではない医療保険の内容を見直してみましょう。

まずは普通の医療保険の保障範囲を確認しよう

女性専用ではない保険商品が、女性特有の病気を保障してくれるか確認してみましょう。

保険商品F 保険商品G
乳がん、子宮がん、子宮筋腫、子宮外妊娠、異常分娩も保障。 子宮がん、卵巣がん、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫、流産、妊娠中毒症なども保障。
入院給付金
5,000円か10,000円
入院給付金
5,000円か10,000円

このように、女性専用ではない医療保険でも、女性特有の病気は保障してくれます。

個室の差額ベッド代は保険がきかなくて大きな負担になるとお伝えしましたが、全国平均で7,000~8,000円ですから、入院給付金が10,000円出るものを選べば、実は差額ベッド代も十分カバーできます。

妊娠・出産の保障は?男女兼用でも異常分娩は保障

普通の医療保険も異常分娩を保障

女性なら、病気だけではなくて妊娠や出産にも備えておきたいですよね。

特に心配なのが、出産時に帝王切開や吸引分娩になったときのこと。「帝王切開になると医療費が多くかかる」と聞いた方もいるのではないでしょうか。

女性専用ではない保険でも、帝王切開や吸引分娩などの異常分娩で入院したら給付金が下りますよ。

保障してくれる異常分娩の範囲は保険によって異なりますが、ある保険商品ではこのようなケースが保障されます。

  • 多胎分娩(双子・三つ子など)
  • 吸引分娩
  • 帝王切開
  • 骨盤位検出(逆子) など
過去に流産や帝王切開の経験がある方の場合には、保険契約時に「特定部位の不担保」がつく可能性が高いです。

保険会社が指定する部位には保険が効かないという意味で、このケースだと「子宮や卵巣は保障しません」ということになります。そうなると、帝王切開をしても保障してもらえません。

女性保険を契約する前に知っておきたいデータ

普通の医療保険でも女性の病気に備えられることをお伝えしてきました。

しかし「やっぱり女性の病気は不安だから、手厚く保障してもらえる女性保険を検討しよう」と考える方もいるでしょう。

女性保険に入ろうか検討している方の不安はこの2点だと思いますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

  • 女性は、女性特有の病気になる可能性が高そう
  • 女性特有の病気になると医療費がかかりそう

実際には、女性にとって女性特有の病気だけにかかるではないですし、女性特有の病気だからといって、入院が長引いたり治療費が高額になるとは限らないんですよ。

例えば、子宮筋腫や子宮内膜症だと、入院して手術するのではなく、薬で治療することもあります。では、データを見ていきましょう。

乳がんにかかる人が多くて怖い!でも他のがんの患者数も多い

女性特有のがんだけが怖いわけじゃない

女性がかかりやすい(罹患しやすい)がんについてのデータを見てください。乳がんが一番多いですが、他のがんにかかる可能性も高いことがわかります。

上皮内新生物を含めても、代表的な女性特有のがんである、乳がんと子宮がんの罹患者数を足した数(129,085人)より、大腸がん・胃がん・肺がんの罹患者数を足した数(142,182人)のほうが多いですよね。

がん(悪性新生物)の部位 女性の罹患者数ランキング 女性の罹患者数
乳がん 1位 72,472人
大腸がん 2位 52,820人
胃がん 3位 41,950人
肺がん 4位 36,425人
子宮体がん・頸がん) 5位 26,741人

当たり前のことではありますが、女性だからといって、女性特有のがんにだけかかるわけではないのです。

女性特有の病気だからといって、治療費が高額になるとは限らない

続いて医療費についてのデータも、がんを参考にして見ていきましょう。乳がんと子宮がんは、他のがんに比べて、特に医療費が高額ではないことがわかりますね。

がん(悪性新生物)の部位 医療費(10割)
乳がん 542,043円
大腸がん 660,976円
胃がん 605,806円
肺がん 638,892円
子宮体がん・頸がん 594,430円

さらに、公的制度の「高額療養費」を使って、医療費を抑えることもできます。高額療養費については「払いすぎた医療費は返ってくる!高額療養費の計算方法と使い方」で詳しく解説しています。

データを見ていかがですか。女性特有の病気についてだけ、かかりやすいといって心配したり、治療費が高額になりそうといって特別に備える必要はないことがわかりますよね。

女性専用でない医療保険でも、女性の病気に備えられる

女性の病気には普通の医療保険でも備えられること、女性特有の病気でも医療費が高くなるわけではないことをご紹介してきました。

女性保険は特定の病気の給付金が増えますが、その分保険料が高くなるデメリットがあります。

しかも、「女性だから女性特有の病気にだけかかる」というわけではないので、特定の病気だけ手厚く備えるより、広く保障してくれる保険のほうが安心感があります。

女性用の保険商品は多数発売されていますが、女性の病気には普通の医療保険でも備えることができます。

「女性特有の病気にかかっている親族が多くて、遺伝的に心配」など、特に不安を感じる状況でないなら、割高な保険料を払ってまで女性保険に入るのではなく、まずは保障内容が充実したふつうの医療保険を探してみるべきです。