看護師のプリセプターには悩みがたくさん!新人教育のコツは?
プリセプター制度とは、プリセプター(先輩看護師)がプリセプティ(新人看護師)をマンツーマンで指導する教育制度のことです。
1対1で教育を受けるので、プリセプティは疑問点を質問しやすくなります。プリセプター側にも、プリセプティに仕事を教えることで、自分自身の看護への理解度を確認できるというメリットがあります。
でも初めてプリセプターを任された看護師は「自分の指導力に自信がない」「今の業務と新人教育の両立は難しそう」など、不安に思うことが多いんです。
プリセプターになったら、1人で抱え込まずに周りに相談することが成功のコツ。新人看護師への指導やコミュニケーションでおさえておきたいポイントもご紹介します。
プリセプター経験があれば転職する場合、病院への自己PRにも役立ちますよ!職務経歴書や面接でアピールできるので、前向きに取り組んでみましょう。
信頼があるから新人教育を任される!プリセプターになる5つの条件
プリセプターを任されるのは、勤務歴3~4年の看護師です。そのほかの条件は病院によって少しずつ違ってきますが、基本的には次のような項目が判断基準となります。
- 日常の業務を問題なくこなしている。
- 上司の補佐ができる。
- 指導する立場になることに対して意欲的である。
- 組織の人間としての意識を持っており、人間関係が良好である。
- 新人とのコミュニケーションに偏りがなく、いつでも、誰に対しても同じような接し方ができる。
病院のサポートがカギ!プリセプター制度のメリット・デメリット
プリセプター制度はマンツーマンで指導を行う教育体制なので、プリセプティはプリセプターの手厚いフォローを受けながら業務を覚えることができます。
一方プリセプターは指導力が身につくだけでなく、プリセプティに教える看護師の基本業務に関する知識が十分身についているかどうか再確認できます。
しかしプリセプター制度は、全ての病院が採用しているわけではありません。
人員状況や教育体制によっては、プリセプター制度を取り入れにくかったり、取り入れる必要がない場合もあります。
またプリセプターになる看護師によって指導力に差があるため、新人看護師の育ち方が偏ってしまうことも。
ではプリセプター制度のメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
指導をする側も受ける側も成長できる!プリセプター制度のメリット
プリセプター制度には、次のようなメリットがあります。
- プリセプティに仕事を教えることで、自分自身の医療に対する理解度やスキルを再確認できる。
- 教えるのは自分1人なので、プリセプティが習得している知識や技術の確認が楽に行える。
プリセプターは自分の言葉で説明しながら、新人看護師に仕事を教えます。そのため、自分自身がその内容を十分に理解できていないと、仕事を教えることはできません。
もちろん指導する前に自分で内容を確認しておく必要がありますが、予想していなかった新人看護師からの質問で、初めて自分の理解できていなかったことに気付くこともあります。
また新人看護師に対して複数の先輩看護師が指導すると、引継ぎが面倒になります。しかしプリセプター制度なら、新人看護師が何をどこまで勉強・習得したのかをある程度理解できている状態なので指導がしやすいんです。
- 些細なことでも質問や相談がしやすい
- 実践中プリセプターがしっかりフォローしてくれる
例えば先輩看護師1人に対して複数の新人看護師が指導を受ける教育環境の場合、新人看護師は疑問に思ったことをすぐ質問しづらいことがあります。
また実践中は自分専属のプリセプターがしっかり見ていてくれるため、安心して業務を行うことができます。
患者も不安を感じることなく医療行為を受けられますよね。
先輩看護師の負担が大きい・・・プリセプター制度のデメリット
次にプリセプター制度のデメリットについて説明します。
- 自分のやるべき業務に加え、プリセプターの仕事が増えるので負担がかかる。
- プリセプティがどれだけ業務できるかは、自分にかかっているというプレッシャーを感じる。
プリセプターは自分の通常業務に加えて新人教育の仕事が増えるため、自分にかかる負担は今まで以上に大きくなります。
病院によってはプリセプターをサポートする体制が整っているところもありますが、先輩看護師はプリセプターの仕事だけやっていればいいというわけではありません。
多少仕事が大変になることは覚悟しておく必要がありますが、人員確保やプリセプターへのサポートが十分に行われている病院を選びたいですよね。
病院選びのコツは、「看護師必見!転職時に病院選びで失敗しない情報収集のポイント」でチェックしてみてください。
- プリセプターの教え方が自分に合っていない場合がある。
- プリセプターとの相性が悪いとストレスを感じてしまう。
プリセプティ側のデメリットは、主にプリセプターの実力や性格の偏りが原因です。
指導方法や能力によっては、プリセプティは指導を受けづらくなってしまいます。またプリセプターとプリセプティは一緒に過ごす時間が長いため、性格的な相性の悪さを感じた場合後輩であるプリセプティがストレスを感じやすくなります。
プリセプターの悩みは1人で抱え込まず、周りに必ず相談しよう
プリセプターを任された看護師は、その仕事を問題なく行えるかどうか不安を感じ、いろいろ悩みながら指導することが多いんです。
また「せっかく任された仕事だから、完璧にこなしたい!新人看護師の前でもかっこ悪いところは見せられない!」と自分1人でなんとかしようと思い、空回りしてしまうことも。
しかし上でも書いたように、プリセプターを任される看護師は勤務歴3~4年。仕事に慣れてきたとはいえ、看護師にとってはまだ経験が浅い時期です。
プリセプターを行うのは、指導スキルを身に付けるため。1人で抱え込んでいては何も学べません。周りの人への相談は必ず行いましょう。
プリセプターのお悩み解決法を詳しく紹介します。
時間配分にも注意!自分の業務とプリセプターを両立させる方法
自分の業務とプリセプターの業務、できれば残業時間を伸ばさずに両立させたいですよね。
プリセプターが両方の仕事を効率よくこなせないと、体力的・精神的な負担を感じてしまいます。また自分の仕事に精一杯で、新人看護師への指導がおろそかになってしまう可能性もあります。
通常業務とプリセプターの仕事を両方するコツは次の2つです。
- 自分の仕事量と指導の進行状況をしっかり把握し、自分だけでは遂行できない場合は先輩看護師や看護師長に相談する。
- プリセプティ自身に考えさせる時間を作りすぎない。
「プリセプティに考えさせる時間を作りすぎない」とはどういうことでしょうか?
確かにどの職業でも、業務の仕方を教えるとき「なぜそのやり方で行うのか」「その決まりを守らないとどうなるのか」を新人に考えさせるのは大切なことです。
でも「どんな方法や手順がいいと思う?」「なんのためにそうするのか、わかる?」なんていちいち聞いていたら時間がかかります。
それに看護師の仕事は、人の命や健康にかかわる仕事。新人教育に夢中になって、患者のケアが予定どおりに行えないなんて許されることではありませんよね。
業務によっては新人看護師でもすぐ答えが出せる場合もありますが、時間がかかりそうなら「そうすればいいのか」だけを最初に教えておきましょう。
「なぜそうするのか」については、今日中の宿題として考えさせておくのも時間短縮法の一つです。プリセプティにとっても、1人でじっくり考えるいい勉強時間になりますよ。
ただし教えた内容に不足部分ができないよう、プリセプティの理解度は定期的に確認することを忘れないでください。
プリセプティの基盤はプリセプターがつくる!新人教育のコツを紹介
プリセプターになったらぜひ取り入れたい新人教育のコツは、次の2つです。
- 自分がプリセプティの看護の基盤となるという自覚を持つ
- プリセプティを客観的に評価する
プリセプター制度は、決まった先輩看護師がマンツーマンで新人看護師に仕事を教える教育体制です。そのためプリセプティに教える業務の手順は自分のやり方で教えることになります。
それに加えてプリセプターは、自分の経験や看護への考え方などの話も交えながら仕事を教えるので、プリセプティの看護の仕方や看護観はプリセプターに似てくるんです。
自分の指導がプリセプターの今後に影響するので、教える内容には責任を持ちましょう。
そしてプリセプティを他の看護師と比べることはせず、客観的に評価することを心がけてください。
自分の担当するプリセプティと同期の新人看護師がいる場合は、特に注意が必要です。
「他の新人看護師の方が覚えが早い」「自分のプリセプティだけ、この仕事ができてない」なんて考えてしまうと、焦って先に先に指導を進めるようになってしまいます。
でもプリセプティによって、得意分野と苦手分野は違います。自分のプリセプティに合ったペース配分で指導をしてください。苦手分野においてはわかりやすい資料を作って渡しすなど工夫をするといいでしょう。
プリセプターは、プリセプティには少し優しいくらいがいいって本当?
このタイトルを見て、「何を言ってるんだろう・・・」と思った人もいるかもしれません。ミスが許されない医療現場で、新人看護師を甘やかすわけにはいかないですよね。
でもほかの先輩看護師が自分のプリセプティに対して厳しい態度で接しているなら、プリセプターは少し甘いくらいがいいんです。
プリセプターはプリセプティにとって、一番身近な先輩看護師です。そのためプリセプターがなんでも質問しやすく相談しやすい人でなければ、新人看護師の心の拠り所がなくなってしまいます。
それに勤務歴のまだ浅い看護師にプリセプターを任せるのは、新人看護師が困ったときいつでも頼れるようにするという目的もあるんですよ。
自分の担当しているプリセプティが今どんな状況なのか話してもらうことで、指導や不安解消がスムーズに行えます。指導不足を防ぐためにも、新人看護師への声掛けはこまめに行い、話しやすい環境をつくりましょう。
意外と守るのが難しい・・・プリセプターが注意すること6つ
プリセプターが新人教育をするときは、次のようなことに注意しましょう。
- プリセプティに過度なプレッシャーを与えない。
- プリセプティに対する評価は公平・公正に行う。
- プリセプティへのフィードバックは否定的になりすぎないようにする。
- プリセプティに看護経験があるからといって、サポートをおろそかにしない。
- 自分がやったほうが早くても、プリセプティの代わりに業務を行わない。
- プリセプティに対して威圧的な態度をとったり、必要以上に気を遣ったりしない。
「そんなの人として当たり前!」と思うような内容ばかりですよね。でもプリセプターを実際やってみると、思うようにいかないこともあり、落ち込んだりイライラしたりして、上の注意点がなかなか守れない看護師もいるんです。
患者がそれを見てしまったら安心して入院できませんし、プリセプティが最悪の場合ストレスで退職してしまう恐れもあります。
予防法は自分の感情をコントロールすることです。自分の気持ちに余裕がないと感じたら、同僚や上司に相談してみましょう。
新人看護師への対応を誤った場合、そのまま時間が経てば経つほどフォローしづらくなります。
自分が間違っていればなるべく早く謝り、良いところもちゃんと伝えるなど、コミュニケーションをとってみてください。
プリセプターの目標設定の手順と例を紹介!具体性が大事
プリセプターを任されたら作成する目標管理シート、どんな目標を書けばいいかわからない看護師も多いのではないでしょうか。
プリセプターの目標設定は、次の手順で行うのがおすすめです。
- 今抱えている課題を挙げる
- 特に優先して取り組むべき課題を選ぶ
- どのような成果を出すのかを明確にする
まずは自分が新人教育をするにあたって、「知識」「技術」「態度」に分けて課題を考えてみましょう。
自分に足りないものを挙げていくと自信がなくなってしまう人もいるかもしれませんが、できるだけ多くの課題に気づけると理想的です。
課題を挙げたら、その中から自分に今一番必要な課題を選びましょう。このとき、プリセプターの仕事との関連性は強いものを選ぶと課題に取り組みやすくなります。迷ったら、先輩看護師など自分を客観的に評価してくれる人に選んでもらうのもいいかもしれません。
そして最後に、その課題に取り組んだらどのような成果が出るのかを具体的に設定します。
もし「新人看護師とのコミュニケーションを重ねて、疑問や不安を解消する」と課題を設定したら、その成果は数値化しづらく表現があいまいになりがちです。
でも「こまめに声掛けできた」「新人看護師が積極的に質問・相談するようになった」というような成果の書き方では、その課題をクリアしたのかどうかはっきりわかりません。
この場合は、次のような具体性のある書き方をしてください。
- 新人看護師に、不安や疑問に思ったことは随時ノートに書きだしてもらう。それをこまめにチェックし、全て解決する。
- 新人看護師が全て自分の力で行えなかった業務に関しては、なぜできなかったのか一緒に考え改善する。
ノートに成果を記録する形なら、第三者が見ても「ちゃんと課題に取り組んでいる」と判断しやすいのでおすすめです。
プリセプターの経験で、看護師としても指導者としてもスキルアップ!
教えることで自分の知識量や実力の程度を知ることができるので、自身の成長にもつながるんです。
転職を考えている看護師のなかには、プリセプターを任される時期に入っている人もいると思います。プリセプターの経験で満足のいく成果が出れば、病院の採用試験でアピールポイントになりますよ。
また指導力が身に付くので、全く違う業務内容の病院に転職しても、その経験を活かすことができます。
先輩看護師としてスキルアップできるチャンスなので、前向きに取り組んでくださいね。