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患者の退院を支える退院調整看護師!気になる支援や調整の流れを紹介

患者の退院を支える退院調整看護師!気になる支援や調整の流れを紹介

退院調整看護師は患者や家族が安心して退院(転院)できるように、支援や調整を行う仕事です。退院して終わりではなく、退院後も患者や家族のサポートを行います。

退院支援や調整の仕事は病棟看護師が兼ねることもありますが、支援や調整を専門とする看護師も増えています。臨床よりも、支援や調整が好きという人にはマネジメントが主な仕事となる退院調整看護師がおすすめです。

ここでは退院調整看護師の役割や支援と調整の流れ、退院調整看護師になるためのポイント、転職や院内異動に有利な経験・資格を紹介します。

退院調整看護師の役割!患者の不安を解消して安心感を与える

退院する患者のなかには、自宅へ帰ることに不安を抱えている人もいます。「自宅に帰って入院前の生活に戻れるのか?」「もう少し入院した方がいいのではないか?」といった患者や家族の不安を解消して、在宅移行を行うことが退院調整看護師には求められます。

退院調整看護師の主な役割は2つあります。

  • 患者の自己決定を支援すること
  • 患者や家族の思いを受け止めること

患者や家族が安心して病院から在宅へ移行することや、その人らしい生活ができるように支援することが退院調整看護師の役割です。

そして患者や家族の気持ちと意向を受け止めて、寄り添いながら支援※1や調整※2を進めていきます。患者や家族が前向きに、入院以前の生活に戻ろう(在宅移行)と思えるように、支援制度や退院後の生活について親身に考えることも大切なんですよ。

※1:退院支援とは

患者や家族が病気や障害と、これからどう付き合っていくのか、医療機関で療養するのか自宅に帰るのか、など患者自身の選択を支援すること。

※2:退院調整とは

患者の選択を尊重し実行するために、人、もの、環境を社会資源と連携させるなどのマネジメントを行うこと。

退院支援や調整を行うときは、自宅での生活をイメージすることが大切です。ADL(日常生活動作)が低下しないように、退院後の患者や家族の生活を見据えた支援や調整を行いましょう。

5つのステップで行われる支援と調整!マネジメントの流れを紹介

退院調整看護師の役割がわかったところで、次は支援と調整方法を5つのステップに沿って説明します。

<退院支援・調整の流れ>
1、スクリーニングを行う
2、アセスメントを行う
3、退院支援を始める
4、退院前カンファレンスを始める
5、退院後の支援とモニタリングを行う

退院支援と調整はこのような流れで進められます。それではそれぞれのステップについて説明していきます。

1、スクリーニングを行う

退院支援が必要かどうかを判断するために、まずはスクリーニング表を記入します。記入は入院後48時間以内(可能な範囲で)に病棟看護師か退院支援専門の看護師が実施します。

早期にスクリーニングを行い、アセスメントにつなぐことで退院支援計画の作成に進むことができます。

最初のスクリーニングで支援の必要性がないと判断しても、その後必要性が生じる可能性もあるので随時スクリーニングを行います。

スクリーニングの結果は3つに分けることができます。

・退院支援が必要
・必要性が予想できるが、経過観察を行って判断
・支援は必要ないが、状態変化した場合は再度判断

2、アセスメントを行う

スクリーニングを行い退院支援の必要性が判明した患者に、アセスメントを行います。そしてアセスメントを行うことで明確になった医療管理に関する課題や生活ニーズの課題から、どのように患者を支援していくかを検討します。

この時点で訪問看護が必要だと判断された場合は、訪問看護師と連携しながら退院支援を行っていきます。また介護保険利用者の場合は担当のケアマネージャーに患者が入院する旨を伝えて入院時情報提供書を取り寄せます。

3、退院支援を始める

スクリーニングとアセスメントの結果から、退院支援の必要性が判明した患者への退院調整が始まります。

この段階では治療と同時に、患者・家族と退院に向けて相談を行い、院内全体で退院を支援するための院内調整を行います。そして退院支援の要となる退院支援計画書を作成します。

4、退院前カンファレンスを始める

カンファレンスは多職種のメンバーで行い、退院や在宅移行の課題を解決するために話し合いを進めます。退院前カンファレンスは次のようなメンバーで行います。

・退院調整看護師
・主治医
・病棟看護師
・MSW(医療ソーシャルワーカー)
・理学療法士や作業療法士などリハビリを行う職員
・ケアマネージャー
・訪問看護師
・患者、家族

上記で挙げた以外にも訪問看護や訪問リハビリの事業所職員、施設へ入る場合は施設の職員も参加するなど、カンファレンスの参加メンバーは必要に応じて変わってきます。

5、退院後の支援とモニタリングを行う

退院後、支援や調整の結果が患者の生活上の課題を解決できているか確認を行います。

退院後も患者をフォローするために、通院や電話で状態を確認して定期的にコンタクトをとります。介護保険サービスを利用している患者であれば、ケアマネージャーと情報共有を行います。

カンファレンスを行う段階では家庭訪問を実施して、生活上の課題の確認や退院支援計画書の修正を行います。退院支援計画書の作成やカンファレンスの実施などは患者の状態によって、何度か行う場合もあります。

退院調整看護師になるには2つの道がある!ポイントは退院調整部署

ここまで退院調整看護師の役割や支援・調整がどのようにして行われるのか説明してきました。そこで気になるのが、退院調整看護師になるにはどうすればいいのか?という点ですよね。

退院調整看護師になるには2つの道があるんですよ。1つは勤めている病院で退院調整看護師になる道。もう1つは転職をして退院調整看護師になる道です。それではそれぞれについて説明していきます。

ポイントとなるのは退院調整部署があるかどうか、病院が退院支援や調整に力をいれているかどうかです。

勤めている病院で退院調整看護師になる場合は、退院調整部署があるかどうか確認してみましょう。もし設置されていれば、上司に院内異動できるか相談してみましょう。

勤めている病院に退院調整部署がない、または支援や調整に力をいれていない場合は転職して退院調整看護師を目指します。その際は次の点に気をつけて転職先を探しましょう。

    <転職する際のポイント>

  • 退院調整部署の有無を確認する
  • 退院調整看護師になりたいと伝える
  • 転職サイトを活用する

退院調整部署の有無は事前に必ず確認するようにしましょう。また、面接の際は病院側に「退院調整看護師になりたい」という旨を伝えることも大切ですよ。転職サイトを活用する際も専任のコンサルタントに「退院調整」を行いたい旨をしっかり伝えましょう。

退院調整看護師が配属される退院調整部署の名称は、地域連携室や地域医療連携部門など病院によって変わります。退院調整部署があるのに、名称が異なるため見落としてしまった・・・ということがないように名称にも注意が必要です。

退院調整看護師になるために有利な経験や資格を紹介!

ここまで退院調整看護師の役割や支援・調整がどのようにして行われるのか説明してきました。退院調整や支援はソーシャルワーカーのような仕事になるので、なにかしら資格が必要なようにも思えますが、退院調整看護師になるために必要な資格はありません。

看護師資格のみでも大丈夫ですが、実は退院調整看護師になるために有利になる経験や資格があるんですよ。そのほかにも研修会やセミナーに参加して退院支援や調整の知識を深めることも大きなアピールポイントになります。

ここでは資格や経験、研修会について紹介していきます。

退院調整看護師になるために有利な経験や資格

それでは退院調整看護師になるために有利な経験や資格を紹介します。

退院調整看護師になるためには訪問看護の経験が有利になります。

退院支援や調整の対象となるのは高齢者が多いので、在宅移行後に訪問看護を利用することがあります。そのため訪問看護の経験は退院支援や調整を行うときに活かすことができるんですよ。

退院調整看護師になるために有利な資格は次の2つです。

    <有利な資格>

  • ケアマネージャー
  • 訪問看護認定看護師

上記でも説明しましたが退院支援や調整は高齢者が支援対象になることが多いので、ケアマネージャーや訪問看護などの資格を持ってると有利になります。

公益財団法人日本訪問看護財団の行った実態調査では、退院調整を行う看護師の約3割が訪問看護を経験しています。またケアマネージャー資格は約3人に1人が取得しているので、退院調整看護師になりたいと考えている人は資格の取得を検討してみましょう。

研修会やセミナーに参加してスキルアップしよう!

退院調整や支援について知識を深めたい人は研修会やセミナーに参加してみましょう。

「退院調整看護師に関する実態調査」では、調査した病院のうち退院調整部署を設置している病院は67%以上でした。退院調整部署がない場合は病棟看護師やMSWが支援や調整を行っています。

このように病棟看護師でも受け持ち患者の退院支援や調整を行う場合もあるので、研修会やセミナーに参加して損はありません。

セミナーや研修会は、日本看護協会やセミナー情報をまとめているサイトで開催情報を確認することができます。自分に合ったセミナーを選んで参加し、スキルアップにつなげてみましょう。

退院支援や調整は患者や家族、医療機関と連携をとったり社会資源の調整をしたり、マネジメント能力やコミュニケーション能力が必要なため、3年程度の看護経験を求められる場合が多いです。

退院調整看護師は患者や家族に寄り添って支援と調整を行う仕事!

退院調整看護師は患者や家族に寄り添い、安心して退院(転院)ができるように支援や調整を行います。その際は患者の自己決定を尊重すること、患者や家族の思いを受け止めることが大切でしたね。

退院調整専門看護師は臨床ではなく、マネジメントが主な仕事内容となります。そのため退院調整看護師になりたい人は、ケアマネージャーなどの資格を取得するのがおすすめですよ。

支援や調整などのマネジメントによって、患者を支えることに興味がある人は退院調整看護師への転身を検討してみましょう。