がん保険の給付条件は複雑!比較時に見落としがちなポイント4つ
身近な人ががんになったことをきっかけに、がん保険に加入しようか検討する方が多いようです。がん経験者の「がん保険に入っていて助かったよ」なんて話を聞けば、なおさらですね。
でも、がん保険の契約内容によっては、がんになってもお金がもらえない場合もあるんですよ。
保険期間開始後の待機期間(90日間または3か月)にがんと診断されても保障されないのをはじめ、がんの一種である上皮内新生物には給付金がでなかったり、入院せずに通院のみで治療する場合には通院給付金がでない保険もあります。
給付金がもらえる条件をしっかり確認しないままがん保険に入ってしまうと、いざがんになったとき、お金がもらえなくて焦ってしまいます。ここでは、がん保険の契約を検討するときに知っておくべきこと・チェックすべきことを4つご紹介します。
がん保険でもらえる主な給付金は4種類
まずはじめに、がん保険ではどんな給付金がもらえるのかを知っておきましょう。がん保険は、主に4つの給付金を組み合わせた商品です。
- 診断給付金:がんと診断されたときにもらえる一時金
- 入院給付金:がん治療のために所定の入院をしたときにもらえる
- 手術給付金:がんで所定の手術を受けたときにもらえる
- 通院給付金:がん治療のために通院したときにもらえる
このほか、特約(オプション)をつけたりして、先進医療を受けるときや退院時に給付金がもらえる保険もあります。
がんと診断されたときに、100万円、200万円などまとまった診断給付金を受け取れて、安心して治療に取り組めるというメリットがあるからです。
しかし、契約内容によっては、通院や入院をしてからでないと診断給付金がもらえなかったり、契約期間中に何度がんになっても診断給付金は1回しか下りなかったりします。
がん保険を契約する前に、給付条件をしっかりチェックしておかないと、いざがんになったときに、頼りにしていた給付金がもらえないという事態になりかねません。
がん保険を契約して1カ月後にがんになった場合、保障されない
がんを保障する保険には、待機期間と呼ばれる独特の免責期間があります。
ほとんどのがん保険で、待機期間は90日間あるいは3か月です。この待機期間中にがんだと診断されても、保険会社には給付金を払う責任がありません。待機期間がないがん保険もあるのですが、ごく少数です。
ここでは、待機期間と、設けている理由をご説明します。
がん保険に特有の待機期間は90日間(3か月)
一般的な保険だと、ここに挙げる3つの手続きが完了した時点で保障が開始されます。
- 申し込み
- 健康状態の告知
- 保険料の初回払い込み
保障が開始される日のことを責任開始日といいます。
ただし、がん保険の場合には、この3つが完了したあとに、90日間または3カ月間の免責期間(待機期間)が設けられています。
90日間の待機期間が設けられている場合、保険期間が始まって91日目にようやく責任開始日がやってくるのです。
待機期間中にがんだと診断されても、保険会社は給付金を払う責任がなく、契約は無効になってしまいます。
早期のがんには自覚症状がないので、待機期間がある
どうして、がん保険には待機期間が設けられているのでしょうか。
申し込み時点でがんを患っている人は、がん保険には加入できません。しかし、がんには自覚症状がほとんどないため、本人に自覚がなくても、申し込み時点でがんにかかっている可能性があります。
男性の死亡数が多いのは肺がんや胃がんですが、国立がん研究センターがん対策情報センターによると、こうしたがんは「早い段階で自覚症状が出ることは少なく、かなり進行しても無症状の場合がある」としており、保険会社は様子見の期間を設けています。
上皮内新生物の取り扱いは必ずチェックするべき
待機期間は、ほぼすべてのがん保険に共通のものです。ここからは、個々のがん保険を比較する際に気を付けるべきポイントをご紹介します。
まずは、上皮内新生物だと診断されたときの取り扱いについてです。
ここでは、上皮新生物とは何か、そして保険商品によって上皮内新生物の取り扱いが大きく違っていることをご説明します。
上皮内新生物とは、周囲の組織に広がっていないがん
上皮内新生物とは、上皮内ガンとか上皮内腫瘍とも呼ばれるもので、がん細胞が臓器の表面をおおっている上皮細胞という細胞の中にとどまっている状態です。
がん細胞がまわりの組織に広がっていないので、その部分を切除すれば完全に治る場合が多いとされています。
一方、私たちが「がん」と聞いてイメージする悪性新生物や悪性腫瘍では、がん細胞が周囲の組織にまで広がり、血管などに入り込んだ状態になっています。この場合、がん細胞が血液に乗って他の臓器に達し、がんが転移します。
上皮内新生物になっても、診断給付金がもらえない保険がある
この上皮内新生物の取り扱いは、保険商品によって違います。
悪性腫瘍と同額の診断給付金を出してくれるものもあれば、減額するものもありますし、中には全く給付金が下りない保険もあります。
保険商品3つの診断給付金について、がん(悪性新生物)と上皮内新生物に分けてまとめました。
保険商品 | がん(悪性新生物) | 上皮内新生物 |
---|---|---|
A | 1,000,000円 | 100,000円 |
B | 1,000,000円 | 1,000,000円 |
C | 1,000,000円 | なし(特約があれば給付) |
手術給付金についても、上皮内新生物の手術については保険期間を通じて1回のみしか支払われない保険もあります。
1回しか診断給付金がもらないがん保険もある
がんは、転移したり再発することも多い病気です。ですから、診断給付金が複数回もらえたら助かりますよね。
しかし、がん保険には、診断給付金が1回しか支払われない保険もあります。
さらに、2回目以降も診断給付金がもらえる場合、条件を設けている保険がほとんどです。
自分が契約するがん保険は、どのような条件を設けているのか理解しておきましょう。
再発したがんを保障してくれる場合、「2年に1回が限度」が主流
保険商品の例を挙げました。
保険商品 | 診断給付金がもらえる回数 | 2回目以降に診断給付金をもらえる条件 |
---|---|---|
D | 1回 | – |
E | 何度でも | 前回のがん診断確定から2年経過後 |
F | 何度でも | 前回のがん診断確定から3年経過後 |
このように、診断給付金がもらえる条件はさまざまです。
診断給付金をもらえる回数が無制限の場合には、2年に1回という条件が主流です。
しかし、がんの転移や再発は、2年以内に起こることもありえます。そのため、2回目以降の診断給付金はあきらめ、初めてがんだと診断されたときにもらえる診断給付金の額を増やすプランで契約を結ぶ人もいます。
入院しなくても通院給付金がもらえるかどうか確かめよう
以前は、がんになると入院が長引くというイメージがありましたが、最近では、がんの通院治療を積極的におこなう病院が増えています。
しかし、通院治療でも治療費の負担は重いですし、通院のための交通費もかかってしまいます。そのため、通院時に支払われる通院給付金を設けているがん保険も多くあります。
一方で、古いタイプのがん保険だと、入院を前提とした通院や入院後の通院にしか給付金が下りないこともあります。
入院前後の通院しか保障してくれない保険もある
がん保険には、入院前後の通院なら保障してくれるタイプや、入院しないで通院のみで治療する場合も保障してくれるタイプなど、さまざまな商品があります。
保険商品 | 通院給付金支払の条件 | 支払い上限日数 |
---|---|---|
G | 入院をともなわない通院でも給付可能 | 120日/1年間 |
H | 入院給付金が支払われる入院前後の通院 | 45日/指定の期間 |
経口投与の抗がん剤治療が目的の通院は対象にならないなど、治療内容が限定されている保険もありますので、その点にも注意が必要です。
通院給付金の給付条件を確認するときには、このような点を確認しましょう。
- 入院しなくても保障してくれるか
- 保障される治療内容はなにか
- 支払い期間や日数の上限はどうなっているか
がん保険を契約する前に、必ずチェックすべき項目
今後、がん治療がより通院型にシフトしていくであろうことを考えると、特に、通院給付金の給付条件は大切なポイントといえます。
保険の契約内容は千差万別ですから、「なんでもいいから、とにかくがん保険に入っておけば安心」ではありません。内容をチェックした上で、「通院保障を手厚くしたい」とか「上皮内新生物も保障してほしい」など、自分の希望に合うがん保険を選びましょう。