病院に行きたいけどお金がない人は無料低額診療を利用できる
「病院に行きたいけど、お金がない」と悩んでいるあなた、そのまま病院に行かなければ病気が悪化するかもしれません。「無料低額診療」を利用してみませんか。
無料低額診療事業は経済的理由で病院に行けない人が、無料あるいは安く治療を受けられる制度です。厚生労働省が2012年にまとめたデータでは全国558カ所の医療機関で実施されています。
無料低額診療の利用条件と対象者、実施している医療機関、利用方法をご説明します。
生活保護一歩手前の人たちを救う無料低額診療
生活保護を受けることができれば、自治体に指定された医療機関でかかる医療費は無料になります。しかし生活保護を受けるためには条件があるため、生活が苦しくても、役所で「あなたは条件を満たさない」といわれる人も多いのが現状です。
無料低額診療は、そんな「生活保護一歩手前」の人たちも、無料で病院にかかれる制度です。
無料低額診療対象者の基準と条件
無料低額診療を実施している病院が告知している対象者は、このようになっています。
- 生活保護受給者またはこれに準ずる低所得者
- 行旅病人(行き倒れ)およびホームレス
- DV(ドメスティック・バイオレンス)、人身取引被害者
- 外国人
生活に困っていて医療費にまわせるお金がない人、国民健康保険料を滞納して「短期保険証※」や「資格証明書※」の発行を受けている人、在留資格のない外国人(不法滞在の状態)も含めた無保険の人、さらに、DV(家庭内暴力)被害者で保険証が使えない人も利用が可能です。
特別な事情なしに国民健康保険証を滞納すると、保険証の期限が1~6カ月間と短い「短期間保険証」が交付され、さらに1年以上滞納すると「被保険者資格証明書」に代わります。
「被保険者資格証明書」の発行を受けた場合、病院にかかると、いったん全額(10割)を窓口負担しなければなりません。
経済的理由で無料低額診療の利用を希望する場合、収入が生活保護基準の120%以下なら医療費を無料に、140%以下なら安くするという基準を設けている病院が多いようです。
生活保護基準は住んでいる地域や家族構成によって違います。布施弘幸行政書士事務所など試算できるサイトがありますので、参考にしてください。
無料低額診療実施医療機関(病院・診療所)は全国に558カ所
無料低額診療は、どの病院でもやっているわけではありません。
2012年に行われた厚生労働省の調査では、無料低額診療を実施している医療機関は558カ所でした。代表的な医療機関は、社会福祉法人恩賜財団済生会(さいせいかい)の病院や診療所です。
自分が住んでいる地域で無料低額診療を実施している病院や診療所を探す方法をご紹介します。
無料低額診療施設の探し方
医療福祉生協連や全日本民主医療機関連合会のWEBサイトでは、無料低額診療を実施している病院がまとめて紹介されているので探しやすいです。
また東京都福祉健康局など、自治体のWEBサイトでも紹介されている場合があります。
インターネットで「無料低額診療 病院 ○○(住んでいる地域)」で検索して調べることもできます。ネットがなければ自治体の社会福祉担当の部署や、社会福祉協議会でも紹介してくれます。
無料低額診療を受けるなら病院で医療ソーシャルワーカーに相談
では、無料低額診療を受けたい場合はどうすればいいのでしょうか。手続きの方法と必要になる書類、無料低額診療で診療してもらえる期間などについてご説明します。
また、実際に自分が無料低額診療を受けられるのかも気になりますよね。参考にしていただきたいデータも紹介します。
無料低額診療を受ける手続き
無料低額診療を利用する際の手続き方法は病院によって様々ですが、たいていの病院が以下のように案内しています。
- 病院の受付で「無料低額診療で診察してもらいたい」と伝えてください
- まずは、病院にいる専門の担当者(医療ソーシャルワーカー※)との面談を行います
- 面談では、収入など生活状況や健康状態について確認します
- 無料低額診療を利用可能だと判断されれば、医療費が無料または安くなります
- 急病の場合は、先に診察や治療をして、あとから面談をすることになります
スムーズに面談を行うために、予約を呼びかけている病院もありますので、事前に電話で問い合わせるか、病院のWEBサイトで調べておくといいでしょう。
面談では収入の状況を確認されますから、年金通知書、給与明細、預金通帳など、収入の証明になるものを用意しておきましょう。
無料低額診療で診察してもらえる期間は、「生活が改善するまで」です。3カ月や6カ月などの期限を設けているところがほとんどですが、生活に困っている状態が改善しなければ、再度申請して延長することができます。
医療機関で、患者や家族が抱える問題の解決をサポートしてくれる専門家です。医療費や生活費の心配、病気になっている期間の家事・育児や仕事の心配などに対して、病院や役所との橋渡しになって援助を行ってくれます。
無料低額診療を行っている病院には、必ず医療ソーシャルワーカーがいます。
データ:無料低額診療の相談数と患者数
年間延べ700万人以上の人が無料低額診療を利用しているとお伝えしました。対象となる人の条件もお伝えしてきましたが、「相談にいっても、自分は対象にならなかったらどうしよう」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
さて、ここでは参考に、社会福祉法人恩賜財団済生会が運営する病院が公表している、無料低額診療の相談数と患者数を紹介しますね。
残念ながら、公開されている資料では、相談した人のうち何人が無料低額診療を受けることができたのかはわかりません。
しかし、下の表のように、毎月多くの人が相談をし、同時に、多くの人が無料低額診療での治療を受けていることがわかります。
相談件数は平成24年7月~平成25年3月までの月平均、無料低額診療の患者数は平成24年4月~平成25年3月までの月平均(延べ数)です。
病院名(府県) | 相談件数 | 患者数 |
---|---|---|
川口総合病院(埼玉) | 22.7件 | 5683.9人 |
栗橋病院(埼玉) | 118.9件 | 3806.4人 |
泉尾病院(大阪) | 37.2件 | 4213.7人 |
病状が悪化する前に、まずは無料低額診療を実施している医療機関に行きましょう。
調剤薬局での費用は自己負担ですが、院内調剤してくれる病院も
無料で診察を受けることができる無料低額診療。経済的理由で病院に行けない人にとっては、とても助かる制度ですよね。
でも、ひとつ注意しなければならないことがあります。
それは、院外処方せん、つまり病院の外の調剤薬局で薬を受け取る(買う)場合には、薬代は自己負担になってしまうということです。
最近では、病院でもらった処方箋をもとに、病院外の薬局で薬を買うことが多いですから、困りますね。
そのため、無料低額診療を実施している病院の中には、院内に調剤施設を設けて、外の薬局ではなく病院内で薬を渡せるようにし、薬代を無料にしている病院もあります。
院内調剤してくれる病院は350施設
2012年の厚生労働省の調査では、無料低額診療施設は全国558カ所です。
そのうち院内に調剤施設があるのは350施設、ないのが208施設でした。
調査の内容は非公開になっていて、どの施設に院内調剤施設があるのかはわかりません。
生活を立て直すために無料低額診療を利用しよう
病気になって収入が減り、病院に行けなくなったという方も多いでしょう。放置して病気が悪化すれば、さらに働きにくくなり、ますます生活は苦しくなってしまいます。最悪の場合には命にかかわります。
無料低額診療は、生活状況がよくなるまでの医療費をサポートしてくれます。
生活を立て直すには、病気をなおして仕事をすることが不可欠です。
「お金がないから病院には行けない」と諦めないで、ぜひ無料低額診療を利用しましょう。そして、周りに「生活が苦しくて、病院に行くお金がない」と悩んでいる人がいたら、ぜひこの制度を教えてあげてください。