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がん患者も対象!仕事してても申請可能な障害年金の受給条件と金額

病気療養でも障害年金を受給できる

障害年金はその名の通り、障害を持つ状態になった時に、生活を支えてくれる年金です。

「障害年金って車椅子生活になって働けなくなった人しかもらえないから、関係ないよね」と思っていたら大間違い。障害を持つ状態というのは、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由など、一般的に私たちがイメージするような状態だけではありません。

がんや糖尿病などの病気で長期療養をしている場合も障害年金を受け取ることができるんですよ。しかも、働いていても給付される場合もあります。。

そうなると、ぐっと身近に感じますね。誰もが知っておくべき、障害年金の基礎知識(給付を受ける条件や支給額)についてご説明します。

がんでも障害年金は受給可能!障害年金の受給可能性がある病気

「障害年金は障害がある人のための年金だから自分には縁がない」と思っている人は多いのではないでしょうか。「障害」という言葉からイメージするのが、弱視や難聴、肢体不自由などだからですね。

でも実は、がんや糖尿病などの病気でも「日常生活や仕事に大きな支障がある」と医師に診断されれば、障害年金を受け取れます。

どんな人が障害年金を受け取れるのか、詳しくご説明します。

障害者手帳なしでも仕事をしていても障害年金は支給される

障害年金を受け取るにあたって、障害手帳の有無は関係ありません。障害手帳がなくても、こんな状態なら、障害年金を受け取る資格があります。

日常生活や仕事でかかえる困難さの度合いによって、1級から3級まで等級がわかれています。

等級 条件
障害等級1級 他の人から助けてもらわないと日常生活で必要になることがほとんどできない障害の状態。入院や在宅介護が必要で、活動範囲がベッドの周りに限られる人など
障害等級2級 ひとりで日常生活をおくるのがかなり困難で、働くことができない障害の状態。活動範囲が病院内や家の中に限られている人など
障害等級3級 病気やケガがなおっておらず、日常生活に支障はないが働き方にかなり制限がある障害の状態
困難さの度合いによっては仕事をしていても受給は可能。「がんの通院治療を受けながら働いているけど、抗がん剤の副作用のせいで短時間勤務になっている人」などは障害年金を申請できます。

なお、3級で支給を受けられるのは、厚生年金・共済年金に加入している人(会社員・公務員)のみです。その点については、後ほど詳しくご説明しますね。

がん、糖尿病、関節リウマチも障害年金の対象になる

病気でも障害年金の対象になる病気にはどんなものがあるのでしょうか。これまでに支給された実績がある病気など、主なものをまとめています。

部位 主な病気
白内障、緑内障、ブドウ膜炎、眼球萎縮、癒着性角膜白斑など
耳、鼻、喉など メニエール病、突発性難聴、頭部外傷または音響外傷による内耳障害、外傷性鼻科疾患、咽頭摘出術後遺症、上下顎欠損など
肢体(手足、体) 上肢または下肢の離断または切断障害、重症筋無力症、関節リウマチなど
精神 老年期認知症、初老期認知症、そううつ症、統合失調症、高次脳機能障害など
呼吸器(肺など) 肺結核、じん肺、気管支喘息、慢性気管支炎など
循環器(心臓) 慢性心包炎、リウマチ性心包炎、慢性虚血性心疾患、心筋梗塞など
腎臓、肝臓 慢性腎炎、慢性腎不全、肝硬変、糖尿病、糖尿病性と明示された合併症など
血液、その他 悪性新生物(がん)、再生不良性貧血、白血病、ヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)、慢性疲労症候群など
気管支喘息、糖尿病やリウマチなど、聞いたことのある身近な病気も多いですよね。もちろん、これ以外の病気でも、支給対象になる可能性はあります。
障害年金の支給にあたっては「障害によってどれだけ生活や仕事に支障があるか」が判断基準となります。表にある病気でも医師の診断内容によっては障害年金が支給されないこともあります。

障害年金を受ける3条件!初診日、保険料納付、障害の状態と程度

障害年金を受けるための条件をチェック

障害年金の受給資格があるかどうかは、障害の状態(障害によってどれだけ生活や仕事に支障があるか)によって判断されます。

障害の状態の他にも、初診日要件、保険料納付要件といわれる受給の条件があります。障害年金をもらうための条件は、大きく分けて全部で3つあるということですね。

  • 初診日要件
  • 保険料納付要件
  • 障害の状態

それぞれについてご説明します。

初診日要件とは?初診日に公的年金に加入しているかどうか

まずは初診日要件です。

これは、初診日※に公的年金に加入している必要があるという条件です。

初診日とは
 
障害の原因になった病気やケガについて、初めて病院・診療所で診療を受けた日のこと。

初診日に公的年金に加入していないと、給付がおりません。「年金加入者じゃないと年金がもらえない」という条件ですから、当然といえば当然ですね。

ただし、20歳未満で年金加入前の人や、被保険者期間が終わった60~65歳も支給の対象になるという例外があります。

障害年金の保険料納付要件!一定期間保険料を納付しているか

保険料納付要件は「保険料を一定期間以上払っていないと、年金がもらえない」という条件です。

具体的には、この条件のどちらかをクリアしないといけません。

  • 初診日を含む月の前々月までの公的年金の加入期間について、保険料を支払った期間(免除・猶予期間含む)が2/3以上
  • 初診日に65歳未満で、初診月の前々月までの1年間に保険料の未納がない

1年以上会社員として働いているなら、給料天引きで保険料を支払っているため未納になることはありませんから、2つ目の項目で条件をクリアできますね。

初診日1年半後の障害認定日に「一定の障害の状態」にあること

障害年金をもらえる障害の状態かどうか、その状態はどの障害等級(1~3級)にあてはまるのかについては、医師の診断書をもとに認定されます。

認定を行う日を「障害認定日」といって、障害認定日に障害の状態にあると認められたら、障害年金を受け取ることができます。

障害認定日は初診日から1年6ヶ月後と決まっています。障害の状態が続くことを確認するために、1年6ヶ月待つんです。

日本年金機構が公表している次の例ような、病気やケガが治るなどして障害の状態が固定している(ずっと続くことが明らか)場合には、初診日から1年6ヶ月経つのを待たずに障害認定日がきます。

  • 人工透析療法を行っている場合は、透析を初めて受けた日から起算して3カ月を経過した日
  • 人工骨頭又は人工関節をそう入置換した場合は、そう入置換した日
  • 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着した場合は、装着した日
  • 人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設又は手術を施した日から起算して6カ月を経過した日
  • 新膀胱を造設した場合は、造設した日
  • 切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断又は離断した日(障害手当金又は旧法の場合は、創面が治癒した日)
  • 喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
  • 在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日
障害年金が支給される3つの条件、理解できましたか。障害の状態だけではなくて初診日に公的年金に加入していること、保険料納付の期間を満たしていることが条件です。

障害年金は2階建ての仕組み!厚生年金加入なら上乗せ支給あり

受給要件を満たしていることがわかったら、もらえる金額が気になりますよね。

実際の金額について説明する前提として、障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、2階建て構造になっていることを最初にご説明します。

自営業の人と厚生年金に加入している会社員の人で、もらえる年金に差があるんですよ。

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類がある

障害年金には、国民年金である障害基礎年金と、厚生年金である障害厚生年金があります。

障害基礎年金は、障害年金を受給する資格がある人なら全員がもらえます。

障害厚生年金は、厚生年金に加入する会社員が障害基礎年金に上乗せしてもらえる年金です。

障害基礎年金だと、障害等級1~2級の場合のみ年金が支給されますが、障害厚生年金では障害等級3級の場合も年金が支給されます。

厚生年金に加入していない自営業者などは、1~2級の場合のみ年金を受け取れますが、会社員だと3級でも年金がもらえるのです

ただし、3級の場合は障害基礎年金が出ないので、1~2級に比べると金額はかなり少なくなります。

障害等級 障害基礎年金
(ベース部分)
障害厚生年金
(上乗せ)
1級
2級
3級

3級と認められない程度の障害なら障害手当金が受給できる

さらに、厚生年金加入者の場合、障害等級が3級に満たないときには障害手当金がもらえることも大きな特徴です。

障害手当金は、年金とは違って1回限りの支給です。受給できる条件と注意点はこのようになっています。

  • 初診日は厚生年金保険の加入期間中
  • 初診日から5年以内に病気やケガが治っている(障害が固定している)
  • 障害手当金と同じ保険料納付要件をクリアしている
  • 3級よりやや軽い程度の障害の状態である(障害のために、仕事上で制限がある)
  • 障害の原因になった病気やケガが治った日から5年以内である

厚生年金に加入している会社員なら、このようなメリットがあるんですね。

  • 1~2級だと自営業の人よりもらえる障害年金の額が多くなる
  • 障害等級3級でも障害年金がもらえる
  • 3級と認定にされなくても障害手当金がもらえる
厚生年金加入者が障害手当金を受給した後、その障害が悪化して障害年金を受給することもあります。その場合、障害手当金は返金しなくてはいけません。

障害年金の実際の金額は?給料と被保険者期間で決まる

障害年金支給額の計算方法

いよいよ、障害年金として受給できる金額について見ていきましょう。年金額は、障害等級や家族の状況によって異なります。

障害基礎年金と、障害厚生年金では計算方法も違いますので、順番にご説明します。

一律に決まる障害基礎年金の支給額

 
ベース部分になる障害基礎年金は金額が一律です。

平成27年4月からの支給額はこのようになっています。

  • 1級:975,100円
  • 2級:780,100円

子どもがいる人は、金額が加算されます。子どもとは、18歳到達年度の3月31日まで(高校生以下)の子ども、または20歳未満で障害等級1~2級の子どもを指します。

  • 第1~2子 224,500円/人
  • 第3子以降 74,800円/人

勤続年数が短い場合は25年勤続とみなして支給額を計算

障害厚生年金と障害手当金の支給額は、障害基礎年金とは違い、これまでのお給料の額と勤務年数(厚生年金保険の被保険者期間)に応じて決まります。

計算式はこのようになり、配偶者がいる場合、1~2級にのみ224,500円が加算されます。

  • 1級:報酬比例の年金額×1.25
  • 2級:報酬比例の年金額
  • 3級:報酬比例の年金額(最低保障額 585,100円)
  • 障害手当金:報酬比例の年金額×2(最低保障額 1,170,200円)

報酬比例の年金額は、このように計算します。

平均標準報酬月額※×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間の月数
+
平均標準報酬額×5.481/1000+2003年4月以後の被保険者期間の月数
平均標準報酬月額とは 
 
厚生年金加入期間中の標準報酬月額の平均額。標準報酬月額は、厚生年金などの保険料を決めるために使う金額で、4~6月の給料をもとに給与金額をいくつかの等級に分けたもの。

厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年間)未満の場合は、300月とみなして計算することになっていますので、被保険者期間が短い人でも極端に金額が少なくなることはありません。

今後、障害基礎年金の額は減っていく可能性があります。実際、平成24年の支給額は1級が983,100円、2級が786,500円でした。それに比べて現在は減額されていることがわかりますよね。

糖尿病やリウマチなど病気でも障害年金は受給できる

これまで「障害年金は自分には縁がない」と考えていた人にも、「自分も受給できるかも」と気づいていただけたことと思います。
 
障害状態になると、仕事内容が制限されたり退職したりして収入が減ってしまう反面、生活費や医療費はかさみ、経済的負担が大きくなります。困っている方は、「障害年金」を活用しましょう。
 
自分が障害年金を受け取るための要件を満たしているかわからない場合は、日本年金機構の相談窓口(年金事務所・街角の年金相談センター)で相談できますよ。

実際の申請方法については「社労士に頼る前に知るべき障害年金の申請方法と必要書類」で解説していますので、合わせてご覧くださいね。