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遺族がやることと最低限やるべき終活まとめ【葬儀・相続・手続き】

遺族がやることと最低限やるべき終活まとめ【葬儀・相続・手続き】

葬儀や相続について、家族と話し合い、準備はしていますか?

私は学生の頃に祖母を亡くしました。祖母の死は余命宣告もなく突然のことだったので、当時両親やその兄弟があっちへ行きこっちへ行き・・・かなりバタバタしていたのを覚えています。葬儀や相続の準備をしていなかったのだから、バタバタするのも当然です。

デリケートな話題ですから私の家族のように、葬儀や相続について考えたことがない、という人も多いのではないでしょうか。

余命に関わらず自分の最期に向き合うために「終活」をしている人はいますが、残される側はやらざるを得ない状況になって初めて、その大変さを知るのではないかと思います。

余命宣告があれば、それを受け入れ考える時間を作れる、という人もいますが、余命宣告が出たあと冷静に話し合える人ばかりでないのも確かです。「もしも」が起きてから慌てることがないように、何も心配がない時だからこそ最低限話し合い、備えましょう。

ここでは知っておくべき遺族がやらなくてはならないことと、それを踏まえた上でやっておいたほうがいい終活について紹介していきます。

遺族がやるべきこと(臨終から葬儀まで)

まずは臨終から葬儀までの大まかな流れを見ていきましょう。

1、「死亡診断書」または「死体検案書」の発行

2、親戚や葬儀社に連絡

3、葬儀の打ち合わせ

4、「死亡届」の提出と「埋火葬許可証」の発行

5、通夜

7、葬儀・告別式

8、火葬

葬儀までにやることも多く、喪主だけですべてを行うのは難しいです。なので奥さんや兄弟、自立している子どもがいるのであれば、協力してもらうようにしましょう。

葬儀までに必要な書類手続き

死亡届やそれと同時に提出する埋火葬許可申請書は、喪主以外の親族や葬儀社などの代行業者でも提出することができます。喪主はその他の手続きや打ち合わせなどがあるので、自宅や斎場で待機しましょう。

死亡届の提出には紙面右側にある死亡診断書(死体検案書)への記入が必須になります。死亡診断書と死体検案書の違いは次のとおりです。

死因
死亡診断書 ・自然死
・死因が明確な死
・老衰死
死体検案書 ・事故死
・自殺
・突然死
・原因不明の死

入院中の死亡だけでなく、自宅で亡くなった場合にも療養中であれば死亡診断書が発行されます。反対に療養中でない人が自宅で亡くなった場合には死体検案書の発行となります。

死亡診断書(死体検案書)を発行してもらったら、死亡届と埋火葬許可申請書を役所に提出しましょう。提出先は次のどちらかです。

<提出先>

  • 故人か届出人の住所地にある市区町村役場
  • 故人の本籍地にある市区町村役場

提出時に印鑑が必要ですので、忘れずに持って行ってくださいね。

死亡届の提出期限は亡くなってから7日以内ですが、火葬までには埋火葬許可証が必要になるので、死亡届と埋火葬許可申請書の提出はすぐに行いましょう。

葬儀の打ち合わせから火葬・納骨までの流れ

もし故人が生前予約などをしていない場合は、葬儀社と葬儀についての細かい打ち合わせが必要になります。

<おもな打ち合わせ内容>

  • 葬式の会場規模
  • 花の数
  • 棺の種類
  • 通夜と葬儀でのお返しの品
  • 料理の種類や数
  • 遺影で使う写真の選定
  • 火葬場への移動手段の選択

この打ち合わせで日取りも決まるので、親族の移動距離を考慮できるよう打ち合わせ前までには親族に連絡を入れるようにしましょう。

打ち合わせや親戚への連絡が終わったら、「通夜、葬儀・告別式、火葬」という流れですが、通夜の前には「湯灌(ゆかん)の儀」があります。

湯灌の儀とは納棺前にご遺体の身体や髪を洗い清め、化粧など身支度を整える儀式のことです。

一般的に専門の湯灌師がご遺体を入浴させた状態で行いますが、入浴の代わりに清拭で済ませることもできます。入浴または清拭のあと、整髪・髭剃り・爪切り・死化粧・死装束への着替えなど、身支度を行ったら儀式は終了です。

湯灌は体液漏れや出血の洗浄など衛生上の理由と、「現世での悩みや煩悩を洗い流して、来世への旅装束を整える」という宗教上の理由から行われますが、強制ではありません。

特に病院で亡くなった場合は、看護師が身体の洗浄や容姿を整えるエンゼルケアが行われ、綺麗な状態が保てるため湯灌をしないことも。傷や出血などの状態から湯灌を行えないケースもあり、そういった場合は清拭になります。

「ぬるま湯でご遺体が腐敗しやすくなる」「裸の姿を晒したくない」という意見もあるそうです。

また納棺時にはドライアイスなども入れますが、それでも腐敗が心配なのであれば葬儀社の人にそのことも含めて相談してみましょう。

通夜が終わってから葬儀までには、線香の火を一晩絶やさないように番をする「寝ずの番」があります。

この寝ずの番を通常の線香で行った場合、仮眠程度にしか睡眠を確保できません。親族で交代できる人がいれば別ですが、それでも番をしている人の疲労と翌日以降に支障をきたす可能性を考え、寝ずの番を行わない遺族や、6~10時間持つ線香を利用する遺族もいます。

また自宅ではなく斎場で葬儀を行う場合、消防法により午後9時以降は線香やロウソクの使用が制限されています。

そのため明かりを絶やさないことが重要とし、火を使わない電気線香・電気ロウソクなどを利用する場合も。

故人への想いを考えると行うべきなのかもしれませんが、無理をして遺族が倒れるなんてことが起こっては元も子もないので、状況に合わせて無理せず行うのが一番いいのかなと思います。

通夜が終わったら、翌日は葬儀・告別式、火葬となります。また同じ日に初七日を済ませてしまう場合も。納骨は火葬当日に行うこともありますが、一般的には四十九日や一周忌に行うことが多いです。

葬儀・告別式の内容は仏式、神式などによっても異なるので、宗教も踏まえて葬儀社の人と打ち合わせを行ってくださいね。

遺族がやるべきこと(その他申請や手続き)

やることが多くなるのは、実は葬儀が終わってからです。まずは期限が短い手続きから紹介していきます。

<全員>

書類 期限
住民票抹消届 14日以内

<故人が年金受給者の場合>

書類 期限
年金受給権者死亡届
(未支給年金請求書)
10日以内
(国民年金は14日以内)

<故人が介護保険を受けていた場合>

書類 期限
介護保険資格喪失届 14日以内

<故人が世帯主だった場合>

書類 期限
世帯主変更届 14日以内

<故人が世帯主で(子どもが18歳未満の)母子家庭になった場合>

書類 期限
児童手当扶養認定請求書 14日以内

それぞれ提出先は市区町村の役所(年金受給権者死亡届は請求者の所轄年金事務所でも可)です。住民票抹消届のほかに該当するものがあるなら、一緒に手続きを済ませるのがおすすめ。

また運転免許証やパスポート、クレジットカード、携帯電話、介護サービスなどの契約サービスなども死亡後すみやかに返却・解約する必要があります。

特に携帯電話などの契約サービスは料金がかかってしまう場合があるので、早めに手続を行いましょう。

<おもな返却物と返却先一覧>

返却物 返却先
運転免許証 警察
(公安委員会)
パスポート 各都道府県の旅券事務所
(パスポートセンター)
健康保険証 市区町村の役所
年金手帳 市区町村の役所
障害者手帳 管轄の福祉事務所

公共料金やNTTなどの解約も同様ですが、これらは世帯当たりの料金になるので継続して利用することもあると思います。

解約しないのであれば、世帯主変更届を提出した時に、名義変更を忘れずに行うようにしてくださいね。

ここで紹介したほかにも、相続関係が確定してから契約を変更したり解約したりするものが出てくることもあります。返却の必要があるものや、契約変更・解約の手続きが必要なものはリストアップしておくのがおすすめです。

遺族がやるべきこと(相続関係の手続き)

先ほど紹介した手続きに比べて期限の猶予はありますが、相続関係の手続きはさらにやることが多くなります。相続に関するおもな流れと手続きを、それぞれ期間ごとに見ていきましょう。

<3ヶ月以内に行う手続き>

1、遺言および相続人・相続財産の調査

2、単純相続、または限定承認・相続放棄の手続き

まず遺言の有無を確認します。遺言が無い場合は、相続人・相続財産の調査が必要です。

もし相続人が未成年の場合は、3ヶ月以内に特別代理人選任申立書を提出すれば、代理人を立てることができます。

財産には現預金や不動産などの「プラスの財産」と、借金などの「マイナスの財産」が当てはまります。プラスの財産とマイナスの財産を調査し、財産目録を作成しましょう。

そのまま何もしなければ「単純承認」という形になり、全て相続することになります。手続きを行えば、一切相続をしない「相続放棄」や、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する「限定承認」も可能です。

<4ヶ月以内に行う手続き>

故人の所得税の申告・納付(準確定申告)

1月1日から死亡した日までの故人の所得を、相続人が「相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内」に申告・納税する必要があります。

<10ヶ月以内に行う手続き>

1、遺産分割協議

2、財産の名義変更

3、相続税の申告・納付手続き

誰がどれだけ相続するかを相続人で協議します。トラブル防止のためにも遺産分割協議の内容は書面にし、署名捺印を行いましょう。署名のみや記名押印でも問題はありませんが、署名捺印は証拠能力が高く安全です。

誰が何を相続するかが決まったら、その内容に合わせて相続財産の名義変更が必要になります。

相続税の申告・納付の期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。

相続税の申告書は、故人の住所地を所轄する税務署に提出しなければいけないので注意しましょう。

これらが基本的な相続の流れと手続きになります。

故人が個人事業主だった場合は、1ヶ月以内に個人事業の開業・廃業等届出書の提出が必要です。

「自分の家は大丈夫だろう」と思っている人も多いと思います。確かに身内での争いはないに越したことはありません。

しかしお金が関わる以上、「可能性が絶対にない」とは言い切れないですよね。あとから大きな問題に発展する場合もあるので、しっかり話し合った上で手続きをしていきましょう。

親族間の問題だけでなく、手続き忘れなどのトラブル防止にもなりますよ。

最低限やるべき終活とは

ここまで遺族がやらなければいけないことを並べましたが、やることはかなり多いんです。そこで「もしも」のときのために終活をしておけば、残された家族の負担を減らすことができます。

終活とは安心して人生の終わりを迎えるために、前向きに準備を行うことで、今後の人生をより良くするための活動です。

終活には次のようなものが挙げられます。

<終活の例>

  • 葬儀の生前予約
  • お墓の準備
  • 遺言書の作成
  • 荷物を片付ける
  • エンディングノートの作成

家族が亡くなったとき、まず大変なのが葬儀の打ち合わせ。

生前予約をしておけば、この打ち合わせは確認と日取りの決定になり、遺族はかなり楽になります。

また遺言書の作成や、相続が難しそうな私物を前もって処分したり現金化したりしておくと、相続でのトラブル回避にも繋がるのでおすすめです。パソコンや携帯電話のデータや、家族に隠れて買ったものなど、見られたくないものがある場合は早めに処理しましょう。

個人事業主の場合、死亡後1ヶ月以内の手続きが必要になるため、可能であれば早めに引き継いでおきましょう。

エンディングノートの作成も終活のひとつです。

エンディングノートの項目をダウンロードして印刷できるようにしているサイトもありますが、1枚ずつ記入し自分でまとめなければいけません。

面倒でなければこの方法でもエンディングノートとしては問題ありませんが、必要項目が1冊にまとまったエンディングノートも市販されているので、検討してみてくださいね。

エンディングノート

こちらはメーカー希望小売価格が1,550円(+税)で、大型書店などでも販売してます。エンディングノートはほかにも種類があり、Amazonなどのネットショッピングを利用すれば定価の半額に近い価格で購入できるものもあるので、チェックするのがおすすめです。

エンディングノートにはクレジットカードや保険の情報や契約内容なども記入できるので、普段の生活で困ったことがあったときにも活用できますよ。

ほかにもFacebookやTwitterのようなSNSについて記載しておいて、死後削除してもらうことも。見られたくない場合は該当部分もしくはアカウントそのものを自分で削除しておきましょう。

思い出が詰まったものを自ら手放すのは、なかなか難しいことだと思います。どうしても処分や現金化を自分でできない場合は、相続財産の一覧を可能な範囲で作成しておくだけでも、残された遺族の楽さが違いますよ。

残される側として話し合い、残していく側として終活しよう

ここまで臨終から相続に至るまで、流れや必要な手続きなどを紹介しました。残される側がやらなきゃいけないことは、山ほどありましたよね。最初にもいったように、心配のないときだからこそ、残される側と残していく側が話し合いましょう。

エンディングノートの作成は普段の生活にも役立つことも伝えれば、勧めやすいです。例えば家庭のことを全て管理している人が入院した時のために、エンディングノートを作成しておくのもおすすめですよ。

そして私たちは残される側であり、残していく側です。残される側として話し合うように、いずれ残していく側として話し合ってあげてくださいね。

※記載されている内容は2017年3月現在のものです。