看護師のための医療事故対応策!事例を教訓にしてミスを防ぐ
「医療事故を防ぎたい」これは医療従事者として誰もが考えていることですよね。しかし防ごうと考えていても医療事故は起こってしまいます。その発生要因は確認不足によるものが多いんですよ。
「医療事故」と聞くと防ぐことが難しいように思えますが、「確認不足」ならば防ぐことができるような気がしませんか?
また医療現場で発生する事故には、医療事故と医療過誤がありますが、その意味は全く違います。
この記事では医療事故の対応策や実際に起きた事例、ミスをしたときのモチベーションの上げ方、どうしても医療事故を起こしたくないという人に向けて医療行為の少ない職場も紹介します。
医療事故と医療過誤の違いは?意味を知ってしっかり使い分けよう
医療事故※1と医療過誤※2には大きな違いがあります。ここで用語の意味を知って、しっかり使い分けられるようにしましょう。
医療現場で起こる人身事故のすべてを表す用語です。患者に限らず、医療機関で働く職員が被害を受けた場合や患者の自傷行為、転倒なども含まれます。
普通に職務を行っていれば、予期したり避けたりすることができたミスです。医療事故の発生要因が、医療従事者や医療機関の不注意による場合は「医療過誤」となります。医療過誤は患者が訴えれば、医療訴訟に発展することもあります。
つまり医療事故は医療現場で起こるすべての事故のことで、医療過誤は医療機関側に過失がある場合に使う用語です。
看護師の医療事故事例と訴訟事例!与薬ミスには要注意
ここまで医療事故と医療過誤について説明しましたが、実際にこれまでどのような医療事故が起きたのでしょうか。実際に起きた医療事故の事例を紹介します。1つは訴訟を受けニュースになった事例。あとの2つは医療事故のなかでも発生頻度の高い与薬ミス事例です。
事例1:実際に訴訟が起こった事例
この事例は看護師の注射ミスにより、患者に重度の後遺症が残ってしまった事例です。
腺除去手術を受ける女性患者に対して、看護師は手術前に静脈注射を左手に打った。そのとき患者は痛みを訴えたが、看護師はその訴えを聞かずに、同じ位置に注射を深く差し込んだ。手術が終わってから、患者に左手の指先から肩にかけて麻痺症状が現れた。
1年半後に患者は複合性局所疼痛(とうつう)症候群(CRPS)と診断され、看護師の勤めていた病院に6,100万円の支払いが命じられました。
事例2:患者間違いにより誤った薬剤を配薬
事故内容は内服介助を行う際の患者間違いで、看護師の経験年数は5年未満です。担当看護師は3人の同室患者を受け持っていましたが、患者3人の薬剤の管理方法は次のようにそれぞれ異なっていました。
- 1人は薬剤を自己管理
- 1人は一日配薬(一度に一日分の内服薬を配薬)
- 1人は毎回配薬(一回分の内服薬をその都度配薬)
【事故の内容】
同室患者3人のうち2人は麻薬内服患者で、当該患者(毎回配薬患者)は麻薬を内服していなかった。
担当看護師は、ナースステーションで麻薬のダブルチェック、毎回配薬、一日配薬のチェックを行い指示簿を持って訪室。一度に3人分すべての薬剤を手で抱えていった。
その際に当該患者をオキシコンチン内服患者と勘違いし、必要のないオキシコンチンを内服させてしまった。当該患者には痛み止めであることしか伝えていなかったため、患者も異議を唱えずそのまま内服。
その後、与薬ミスに気づいたので副直医へ報告し、経過観察となる。SpO2の低下などは見られなかったが、嘔気が出現し制吐剤を使用した。
事例3:手術前の注射で薬剤量を誤って使用
事故内容は薬剤の過剰投与で、看護師は経験年数1年未満の新人でした。脳神経外科に入院していた患者が急きょ副鼻腔炎の手術を行うことになり、手術前の鎮痛目的で注射をする際に事故は起きました。
【事故の内容】
局所麻酔で行われる手術のために、耳鼻科医師は手術前チェックリストにアタラックスPとオピスコの指示を出した。オピスコは体重を考慮して0.4mLを2回15分間隔で使用する旨が指示書にかかれていた。
しかし、指示を受けた担当看護師は薬剤部から払い出された薬剤アタラックスPとオピスコ1A 1mLを1回で筋肉注射した。手術室に入った患者は予定通り手術を終えた。
手術中、耳鼻科医師は通常に比べて鎮静が深い、そのため酸素化が悪いと感じていた。患者が既往として無呼吸症候群があったので、医師は予想範囲内だと判断。
自室に戻り経過観察していたが、酸素化が悪く主科である脳神経外科担当医師が挿管し人工呼吸器で呼吸器管理を行った。
翌日、耳鼻科医師が麻薬の残量を確認するように病棟に伝え、確認した看護師が0.2mLあるはずの残量がないことを発見した。
医療事故を防ぐ4つのポイント!インシデント対策と並行して効果UP
医療事故を防止するには、インシデントを防ぐことが重要です。事故が発生する前には300件のインシデントが起こっていて、その背後にはさらに小さなミスや危ない行為の積み重ねがあるといわれています。
ここではインシデント対策と、それに加えて行いたい医療事故対策を紹介します。
インシデント対策として有効なのは次の3つです。
- 声出し確認
- 指さし確認
- コミュニケーションエラー※防止
コミュニケーションが取れていないために起こるトラブルやエラーのこと。職員間の情報共有が不十分、誤伝達などが挙げられます。
インシデントを防ぐには、声出し確認と指さし確認の徹底が有効です。実際に起こった事例は確認不足が発生要因になっているものが多いんですよ。また、コミュニケーションエラー防止もチームワークが要求される医療現場では欠かせないものです。
インシデント対策について説明したところで、本題の医療事故対策のポイントを4つ紹介します。
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<医療事故を防ぐためのポイント>
- 知識や技術を高める
- 指示出しや指示受けをしっかりと行う
- 自分自身の健康管理を行う
- 患者や家族にも医療に参加してもらう
医療事故やインシデントは与薬ミスが多いので、知識を深めることで薬取り違えのリスクを減らせたり、医師や薬剤師の間違った処方に気づけたりするようになります。
上記で紹介した事例3は、指示出しや指示受けをしっかり行わなかったことが発生要因の1つになっていましたね。口頭で指示を受けたときや、内容に不明瞭なことがあったときは、指示出しをした医師に再確認するようにしましょう。
自分自身の健康管理を行うことも、医療事故を防ぐためには欠かせないポイントです。ミスが起こるときは看護師自身の疲労がたまっていたり、注意力が低下していたりすることが多いんですよ。疲労蓄積や注意力低下を防ぐために、休憩時間を確保しましょう。
また患者や家族に、医療に参加してもらうことも医療事故の対策として効果的です。患者や家族と医療に関わる情報を共有して、服用する薬の理解や把握をしてもらい、与薬ミスなどを防ぎます。
落ち込んだときのモチベーションの上げ方!気持ちを切り替えよう
ミスをするとどうしても気持ちが落ち込んでしまいますよね。ですが仕事は待ってくれません。
「やる気はあるけど気持ちがついていかない・・・」そんなときは休息をとったり初心に立ち返ったりして、気持ちを切り替えましょう。
モチベーションを上げるための気持ちの切り替えには次の4つがおすすめですよ。
- 休息をしっかりとる
- 自分にご褒美を贈る
- 目標を設定する
- 初心に立ち返る
休息をとることは医療事故防止に効果的と紹介しましたが、モチベーションを上げるためにも有効なんですよ。身体を休めることだけが休息ではありません。お気に入りの映画をみたり、好きなスポーツを楽しんだりして、満足感を得て心も休息させることが大切です。
落ち込んだ時は自分にご褒美を贈るのもモチベーションを上げるのに有効です。看護師の仕事のやりがいはたくさんありますが、お給料もその1つですよね。ショッピングや旅行などをして仕事へのやる気を高めましょう。
目標設定は大きなものでも小さなものでも構いません。実現可能でやる気を持続できるような目標を設定しましょう。
例えば認定看護師審査は勉強の成果として、資格取得や業務の幅が広がるなど、やりがいや目に見える成果が大きいので目標設定にぴったりですよ。
また、落ち込んだ時には初心に立ち返ることも大切です。看護師を志した時の気持ちを思い返す、看護実習記録を読み返すなどして、気持ちを切り替えてみましょう。
ミスした時はしっかり報告!対策を練って医療事故を防ごう
起きた事例から対策を練ることで、医療事故のリスクを減らすことができます。
また、ミスをした時はすぐに報告するようにしましょう。時間が経つほど報告しづらくなりますし、対処も遅れてしまいます。起きたミスを隠すことではなく、今後類似したミスを起こさないように対策を練ることに注力しましょう。
厚生労働省でも医療事故の事例を収集して、事故の予防や再発防止をするための取り組みを行っています。それほど医療事故やインシデントの報告は重要で、予防や再発防止に有効な情報ということがわかりますね。
ですが環境によっては、ミスの報告をすると必要以上に責められる、無記名でレポートを記入する病院では犯人捜しのようになってしまう・・・などミスを報告しづらい環境もあります。
環境面に問題がある場合は、ほかの病院への転職するのも1つの手です。治験コーディネーターや産業看護師、保育園看護師、イベントナースなど医療行為がない、または少ない職場もあります。
医療事故に強いストレスを感じるならば、保育園や企業の医務室など医療事故リスクの低い職場で働くことも検討してみましょう。