禁煙外来は精神的なケアが重要に!?看護師に求められる役割とは
たばこが健康にどのような影響を及ぼすかという事が言われるようになってから、喫煙率は年々減少傾向にあります。また、現在喫煙をしている人の中でも、禁煙をしようかと考える人は増えてきました。
しかし、ニコチンは中毒性のあるものですから、自分で禁煙するというのは中々難しいのです。そこで登場したのが禁煙外来です。医師の指導のもと、禁煙に取り組むことが出来る専門外来ですね。
禁煙外来で看護師として働きたい!禁煙したいという人を支援したい!そう考えるあなたに、禁煙外来での仕事内容、看護師の役割についてご紹介していきましょう。
禁煙外来ではどのようなことをする?治療方法をご紹介
まずは、禁煙外来がどのようなところなのか、その基本情報をチェックしておきましょう。
禁煙外来について、新薬の研究・開発を行っているファイザーが運営しているすぐ禁煙.jpというウェブサイトでは、次のように紹介しています。
禁煙外来では、お医者さんのアドバイスと合わせて禁煙補助薬を処方してもらえるので禁煙の成功率が高まります。
禁煙補助薬には貼り薬とニコチンを含まない飲み薬等があります。“ニコチンを含まない飲み薬”は、ニコチン切れ症状を軽くするだけでなく、タバコをおいしいと感じにくくする効果を併せ持ちます。
引用元:すぐ禁煙.jp お医者さんと禁煙しよう~禁煙治療について
禁煙外来は、きちんと禁煙に向き合っていこうとする人を医師の指導の下で手助けする、支援する為の診療科というわけですね。
禁煙治療はどのように行われる?その手順をチェック
禁煙治療の流れを紹介しておきましょう。
①ニコチン依存症かどうかのチェック
②一酸化炭素濃度測定
③補助薬の選択
④経過観察・カウンセリング
このようになっています。また、治療にかかる日数については、おおよそ12週で完了するのが標準です。
禁煙外来は、一定期間患者と向き合っていくことになるのです。
禁煙治療は保険適用になる!?その条件と一般的な費用とは
禁煙外来を受診するかどうかにあたり、どのくらいの費用がかかるのかという点を判断材料にする患者さんは少なくありません。そこで、一般的な治療にかかる金額を押さえておきましょう。
まず、禁煙治療には保険が適用になるケースがあります。
保険が適用となる条件について、禁煙外来を設けているおぎわら医院のウェブサイトで次のように紹介されています。
1.直ちに禁煙をしようと考えていること
2.ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)が5点以上であること
3.ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること
4.禁煙治療を受けることを文章により同意していること
この4点に当てはまる患者様に対し「禁煙治療のための標準手順書」に準拠し治療を行います。
引用元:おぎわら医院 禁煙外来
保険適用になった場合、12週間の治療で20,000円前後となるのが、一般的な目安のようです。もちろん、どの禁煙補助薬を使用するかによっても異なります。
タバコを1日1箱(300円)吸うという人は、12週間で25,000円タバコ代として使っている計算になります。そう考えると、禁煙外来に通って禁煙出来た方が少なからずお得であることは確かですね。
ちなみに、一度の治療で禁煙に成功する割合は、6割程度と決して高いものではありません。
あくまでも自分との戦いになるという難しさがあるようです。
精神的なフォローが主な仕事に!?看護師の役割とは
では、禁煙外来での看護師の仕事内容、役割についてご紹介していきましょう。主な仕事内容は、次の通りです。
- アンケートやテストの実施
- 一酸化炭素濃度測定
- バイタル測定
- 禁煙補助薬の説明
- 生活習慣等のアドバイス
- 患者の精神的なケア
医師の補助を行うことはもちろんですが、患者へのフォローも大切な仕事となってきます。
ですから、禁煙に対する知識はもちろん、的確なアドバイスを行えるようにしておかなければいけないのです。
特に、精神的なケアは重要ですね。禁煙外来での看護師の役割について、「禁煙外来の現状と看護師の役割」という論文が発表されています。一部抜粋して紹介しましょう。
禁煙中は、喫煙に対する欲求がストレスや不安となることもあるため訴えを聞き、 一緒に解決策を考えるなどの支援が重要となってくる。
1ヶ月を経過すると咳、療、息切れなどの症状が濯くなり禁煙の効果を感じる患者がでてくるため禁煙への意欲を持続させるための賞賛も大切になってくる。
この時期から、体重増加の問題が発生するため 3 k g 以上の体重増加の患者に対しては、 間食の内容、食事の量、 飲酒、適切な運動などについてアドバイスが必要である。
引用元:信州大学学術情報オンラインシステムSOAR 機関リボジトリ 禁煙外来の現状と看護師の役割
禁煙はニコチン依存症といかに向き合うか、ということが成功の鍵となってきます。患者の禁煙中のストレス、なかなか成果が見えないという焦りに、看護師としてきちんと向き合うようにしてあげましょう。
ただ、禁煙をすることによる患者のストレスは大きなものです。だからこそ、禁煙外来では看護師が患者へのフォローを行うことも求められるということも覚えておきたいですね。
治療は簡単には進まない!?禁煙治療の難しさをチェック
禁煙外来の治療の難しい所は、薬を飲む、貼るということをすれば確実に成功するわけではないという点にあります。
禁煙が難しいのはニコチンの依存症状に悩まされるためです。
ニコチンの依存状況は、個人によって異なります。また、禁煙補助薬の効果にも個人差があるのです。禁煙補助薬が効果的に作用すれば、成功の確率は上がります。
また、禁煙補助薬は指定された期間、きちんと使用することも大切です。
しかし、個人の判断で中断してしまう事もあり、せっかく上手くいっていたのに失敗してしまったという事も珍しくは無いのです。
保険適用になった場合、タバコ代と比較すると禁煙外来での治療費の方が割安になるということはありますが、経済的な理由で病院に通うのを辞めてしまうという場合もありますね。
思うような結果が出ない、ニコンチンの禁断症状は出る、ストレスが溜まる、そういった患者をいかにフォローしていくかという事も大切になってきます。
禁煙が難しいと言われる原因!ニコチン依存症とは
禁煙が簡単ではない、医師の指導を受けてもその成功率が6割程度にとどまってしまう原因としてニコチン依存症が挙げられます。ニコチン依存症とはどのようなものなのか、チェックしておきましょう。
喫煙をすると、ニコチンが肺から脳へ達し快感を生じるようになります。これは、脳にあるニコチン受容体とニコチンが結びつくことでドーパミンが分泌されるためです。
このドーパミンを再び得たい、快感を得たいという欲求から喫煙を繰り返していくと、喫煙していない時間にイライラ感等の禁断症状が出ることがあるのです。そして、喫煙をやめられなくなります。これがニコチン依存症です。
喫煙をやめることでの禁断症状は、禁煙開始後はとても強く表れるものです。その症状を解消しようと、再び喫煙をしてしまえばいつまでも禁煙することはできません。
禁煙は、ニコチン依存症との闘いとも言えるのです。
その上、ニコチンの禁断症状はその症状が軽減されるまで耐えることしかできないわけです。その点をしっかり理解し、患者と共に治療に挑むことが看護師には望まれています。
禁煙外来で働くなら要チェック!?認定専門(指導)看護師とは
禁煙外来で働く中で、看護師が取得できる資格があります。ここでは、次の3つの資格についてご紹介していきましょう。
- 認定専門看護師
- 認定指導看護師
- 禁煙サポーター
まずは、3つの資格の違いについて簡単にご紹介します。
資格名 | 試験有無 | 認定期間 |
---|---|---|
認定専門看護師 | 有 | 5年 |
認定指導看護師 | 有 | 5年 |
禁煙サポーター | 無 2時間以上の禁煙講習会を受講すれOK |
無 |
資格取得の難易度を易しい順から並べてみると
禁煙サポーター⇒認定指導看護師⇒認定専門看護師
このようになります。
認定期間が決められている認定指導看護師と認定専門看護師は、5年ごとに更新をする必要があります。更新時には、手数料として6,000円を支払う必要があります。
また、更新をするための条件は次のようになっています。
- 認定専門看護師…5年間に行った禁煙指導活動について自己申告をする
- 認定指導看護師…取得単位が最低50単位必要
3つの資格の違いについて、きちんと認識しておきたいですね。
誰でも取得可能!禁煙サポーターになるには
最も簡単に取得できるのが禁煙サポ―ターです。日本禁煙学会の会員であり、講習会を受講すれば認定されるようになっています。講習会の受講後、禁煙学会の会員になってもOKです。
禁煙サポーターとして認定されるためには、手数料として日本禁煙学会に3,000円を納入しなければいけません。
高知県では、禁煙サポーターがいる薬局・病院や診療所にステッカーを貼って相談を促す活動を行っていますね。
禁煙サポーターになるために必要な講習会は、都度行われています。自分が住んでいる地域での実施日時を確認しておくと良いでしょう。
指導看護師と専門看護師は一定の指導歴と試験クリアが必要
日本禁煙学会認定の専門看護師と指導看護師になるためには、試験にクリアする必要があります。また、いずれも日本禁煙学会に入会をしていることが条件となり、認定専門看護師は5年間、認定指導看護師は3年間の禁煙指導歴が必要となっています。
これらの資格を取得することで、禁煙指導のプロフェッショナルであるという証明になります。
禁煙サポーターから認定指導看護師になることも可能です。その場合は、受験の際の必要書類の提出が免除されるという制度もあります。
日本禁煙科学会認定の「禁煙支援士」とは
禁煙に関する資格として、他にも日本禁煙科学会が認定している禁煙支援士があります。禁煙支援士には、次の3つのコースが設けられています。
- 初級禁煙支援士
- 禁煙支援士
- 上級禁煙支援士
それぞれの認定要件をチェックしていきましょう。
項目 | 初級禁煙支援士 | 禁煙支援士 | 上級禁煙支援士 |
---|---|---|---|
認定要件 | 日本禁煙科学会会員 講習会等参加点2点 筆記試験合格 |
日本禁煙科学会会員 講習会等参加点5点 実績レポート店5点 筆記試験合格 |
禁煙支援士取得済み 年会費支払い済み 講習会等参加点12点以上 教育研究点30ポイント |
認定期間 | 5年 | 5年 | 5年 |
認定料 更新料 |
5,000円 5,000円 |
5,000円 5,000円 |
30,000円 30,000円 |
参加点を獲得するためには、認定講習会や学術総会へ参加しなければいけません。一例を挙げてみましょう。
- 3点…日本禁煙科学会学術総会、全国禁煙アドバイザー育成講習会(2日間)
- 2点…全国禁煙アドバイザー育成講習会(1日間)
- 1点…禁煙治療研究会、子どもの禁煙研究会
また、上級禁煙支援士になるためには、上級認定委員会の認定を受けなければいけません。禁煙を指導する資格には、いろいろな種類があるのです。
また、他にも禁煙をサポートする、指導する資格は色々ありますから、一度チェックしてみると良いですね。
禁煙外来での重要な仕事は精神的なケア!思いやりの心が大切
患者が禁煙を続けることが出来るよう、ストレスや不安・不満を和らげてあげられるようコミュニケーションをとって行く必要があるのです。
禁煙外来で看護師として働く際には、禁煙が成功できるよう、1人1人に合った細やかなサポートを心がけるようにしましょう。
禁煙外来での治療は基本的なスケジュールが決まっています。しかし、一度の治療で禁煙に成功するのは6割程度というデータもありますから、医師・看護師のフォローはもちろん患者自身の精神面も大きく影響すると言えそうですね。