科別の看護師さんの仕事をご紹介

高まる需要!患者さんとじっくり付き合える呼吸器内科看護師

高まる需要!患者さんとじっくり付き合える呼吸器内科看護師

昔は「町医者」と呼ばれる地域に根差した開業医が、近所に住む人々の風邪から重病、はたまたケガやお産まで、幅広く対応していた時代がありました。しかし、現在では診療科は細分化され、医師や看護師は狭く深い専門領域を持つようになっています。

内科や外科、精神科などは昔からありましたが、比較的新しい診療科も出てきており、呼吸器内科もそのうちのひとつと言えます。そして近年、守備範囲内である疾患の増加などにより、呼吸器内科が増えています。

そんな時代のニーズによって生まれたとも言える呼吸器内科ですが、看護師が働く場所としては、どのような特徴があるのでしょうか?看護師の立場から見ていきましょう。

どんな病気の患者さんが来るの?呼吸器内科の特徴とは?

呼吸器内科は、最近特に増えてきている診療科です。「呼吸器科や呼吸器外科とはどう違うの?」「どんな病気を扱うの?」などという基本的な所から、お話を始めましょう。

呼吸器内科とは

呼吸器内科は、読んで字のごとく「呼吸器」を「内科的に」扱う診療科です。

呼吸器とは

  • 気道
  • 胸郭

といった呼吸に関する器官や臓器を指し、その部位に起きる病気のうち、外科的処置を要さないものが呼吸器内科の管轄となります。

呼吸器外科との違い

一方、呼吸器内科に名前が似た診療科として「呼吸器外科」というのもありますが、こちらでは

  • 肺がん
  • 転移性肺腫瘍
  • 自然気胸
  • 胸部外傷

このような疾患を扱います。つまり、呼吸器の病気やケガの中でも、手術などの外科処置を伴うものを扱う科なのです。

ちなみに、この呼吸器外科と呼吸器内科を合わせた「呼吸器科」という科もあります。呼吸器内科は比較的新しい科であることは既にお伝えしましたが、現在は呼吸器内科で扱う病気も、元々は内科に含まれる領域だったのです。

つまり、呼吸器内科は内科の中でも呼吸器に関する病気、さらにその中でも内科処置だけで対応する病気に特化した科というわけです。

呼吸器内科で扱う病気

呼吸器内科で扱う病気には、主に以下のようなものがあります。

  • 肺がん
  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)
  • 感染症
  • 気管支喘息
  • 間質性肺炎
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 咳・息切れ・呼吸困難感など

大阪大学呼吸器内科による呼吸器内科の入院患者数の割合
こちらの図は大阪大学呼吸器内科による呼吸器内科の入院患者数の割合ですが、外来の場合は肺がんの数が減り、その分COPDや咳、喘息などの割合が増える傾向があります。肺がんのうち手術で対応できず苦痛の緩和が必要なケースなど、重篤な病状を抱える患者さんもいます。

最近増えている肺疾患

最近はアレルギー性疾患が増えており、喘息もそのうちのひとつであることや、慢性閉塞性肺疾患すなわちCOPDの増加などから、呼吸器内科に罹る患者さんは増えています。中でも、COPDの増加は特に注目されています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。
歩行時や階段昇降など、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性のせきやたんが特徴的な症状です。
引用元:一般社団法人 日本呼吸器学会

喘息とCOPDの死亡者数の比較
このCOPDはWHOが2020年までに世界の死因第3位になるとしており、COPDの患者さんへの対応が呼吸器内科で働く看護師にとって必須業務となっています。

肺を中心とした呼吸器全体の疾患の中でも、外科的処置を必要としないものを扱うのが呼吸器内科です。喘息やCOPDの増加に合わせて、呼吸器内科のニーズも高まっていますし、そこで働く看護師の仕事内容も変わってきています。

COPDは中高年患者さんが多いですが、小児のアレルギーや喘息の患者さんも多いため、全年齢の方々にうまく対応するスキルが必要です。

呼吸器内科の看護師ってどんなお仕事が中心?向いている人とは

肺を中心とした呼吸器に関する内科的な病気全般を扱う呼吸器内科ですが、どんな人が呼吸器内科の看護師に向いているのでしょうか。それを知るためには、まず呼吸器内科看護師のお仕事を知る必要があります。

患者さんの年齢層と取るべき対応

患者さんの幅は小児喘息の子どもからCOPDや肺がんのお年寄りまで様々です。したがって、どんな年齢の方にも丁寧に接することができなければなりません。

しかし、先にもお伝えしたように、近年COPDの患者数が増加しており、これは中高年に多く見られる病気であるために、呼吸器内科にかかる方の中には特に、高齢者の患者さんが急増しています。

高齢者は、現在かかっている疾患以外にも、心臓や骨、認知機能などが衰えていることも多いです。認知症の患者さんが呼吸器内科に来ることも少なくないですから、精神科との連携などが必要になることもあります。

したがって、専門領域だけでなく、常に全身状態を気に掛けるスキルも必要です。

具体的なケアとしては、次節でお伝えする看護師としての基本的な仕事内容の他、薬はきちんと飲めているか、医師の指示や話の内容を理解できているか等も気にかけ、必要に応じてフォローすることが求められます。

呼吸器内科看護師のお仕事

呼吸器内科の看護師の主なお仕事は、

  • 投薬
  • 注射・点滴
  • 採血などの一般的検査
  • 酸素療法の補助
  • 生活指導

主な業務としては、他の科とそれほど変わりません。酸素療法は酸素マスクや人工呼吸器などで酸素状態を改善するものですが、これがうまく行われているかを確認していくことが呼吸器内科ならではの重要なお仕事となります。

救命救急や外科など、一刻を争うような患者さんやすっかり元気になっていかれる患者さんも多い科と違って、呼吸器内科は慢性期の患者さんが多いのが特徴です。そのため、劇的な回復や新しい刺激は少なく、同じような検査やケアが続くため、これを苦痛と感じる看護師もいるようです。

逆に言えば、患者さんが次々入れ替わるということが少なく、同じ患者さんと長くお付き合いする傾向が強いため、密接なコミュニケーションが取りやすいという特長もあります。

呼吸器内科に向いている人

特に呼吸器内科で患者数の多いCOPDの患者さんとは、やはり慢性疾患の患者さんとの長いお付き合いが重要な任務です。COPDの大きな原因としてタバコがあり、禁煙指導や生活指導を行うことも看護師の役割のひとつです。

長年の習慣を改めてもらうのは非常に大変なことなのですが、一人ひとりの患者さんとじっくりお付き合いする中で禁煙に導くことができたりすれば、病状の回復にもつながりますし、これは看護師にとって大きなやりがいとなるでしょう。

人間は呼吸しなければ生きられませんから、看護師の処置や対話によって呼吸の状態を改善し、それによって全身状態まで改善させることができるのも、呼吸器内科看護師の醍醐味と言えます。

また、COPD以外でも、劇的な回復がない病気が多いため、小さな回復に目を向けることができ、それに喜びを感じられる人が求められています。

院内感染への対策が重要!

どの診療科でも言えることではありますが、特に呼吸器内科は院内感染への対策をきちんと取る必要があります。呼吸器内科の対象疾患には感染性のものが多く、咳やくしゃみなどによる飛沫感染や空気感染を起こしやすいからです。

来院された患者さんの症状を素早くチェックし、咳・くしゃみといった症状をお持ちの患者さんにはマスクの着用をお願いし、他の患者さんへの院内感染を防ぐ必要があります。

また、自分自身もマスクやうがい・手洗いなどを徹底し、患者さんから感染しないよう万全の体制を整えておくことも、看護師としての大切な仕事のひとつです。

COPDの患者さんへの禁煙指導や院内感染防止、認知機能や骨の強度が低下していることも多い高齢の患者さんの全身状態のチェックと対応などが、呼吸器内科のナースならではのお仕事内容と言えますね。

急性期の方が少なくて患者さんの入れ替わりが激しくないので、患者さん一人ひとりの小さな改善に目を向けて喜べる人が、呼吸器内科には適しているのですね。

呼吸器内科はどんな勤務体系になるの?お給料はどんな感じ?

人間の生存に不可欠な「呼吸」を扱う重要な科である呼吸器内科。そんな呼吸器内科には、どんな勤務先があるのでしょうか?また、それぞれの勤務体系やお給料はどのようなものなのでしょうか。キャリアアップなどは可能なのでしょうか?

呼吸器内科の勤務先

呼吸器内科には主に

  • 大学病院
  • 総合病院
  • 開業医院(クリニック)

の3種類があります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

病院の種類 夜勤の有無 特徴
大学病院
総合病院
あり 病棟は終末期の患者さんも多いので
緩和ケアや本人・家族の心理的ケアも必要
開業医院(クリニック) なし
(病床があれば有)
症状が軽い患者さんが多い
慢性期の管理や経過観察も多い

大きな病院の病棟では、やはり肺がんなど終末期の患者さんが多くなりますので、患者さんとご家族が穏やかな最期を迎えられるよう、ターミナルケア(終末期ケア)の知識も必要です。

重篤な患者さんの対応などに自信がなければ、まずは風邪や喘息などの軽症患者さんも多いクリニックで、呼吸器内科の基本について学んでみても良いですね。病床のない開業医院なら夜勤がなく、残業も少ないです。

呼吸器内科のお給料

呼吸器内科の看護師は、お給料の面ではどうなのでしょうか?基本的には、他の科と変わらないようです。そして、科としての差よりも、勤務形態や地域の差の方が大きいと考えられます。

一般的に、田舎の開業医よりは都市部の大きな病院の方が、お給料は良い傾向があります。

総合病院や大学病院なら夜勤手当があることや、昇給やボーナスなども期待できるので、お給料は高くなります。

しかも、大きな病院なら外来も病棟も経験できる可能性もあり、クリニックよりもたくさんの病気や患者さんをみることができて充実した実務経験が積めると言えます。

呼吸器科看護師としてキャリアアップするには

日々、看護師のお仕事をこなすだけでも様々な経験を積むことができますが、さらにスキルを高めたい、お給料アップを目指したいという方には、「呼吸療法認定士」という認定資格をおすすめします。

こちらの資格は正式には「3学会合同呼吸療法認定士」といい、「日本胸部外科学会」・「日本呼吸器学会」・「日本麻酔科学会」の3つの学会が認定するものです。

この認定資格の概要は、

臨床工学技士、看護師、准看護師、理学療法士の中で、それぞれの職種において呼吸療法を習熟し、呼吸管理を行う医療チームの構成要員を養成し、かつそのレベルの向上を図ることなどを目的としています。(中略)
認定後は5年毎に認定の更新を行うことになっています。また、認定を更新するための最低限の条件(学会・講習会等の出席、論文発表など)も付与されており、生涯教育の促進を図るものです。
引用元:公益財団法人 医療機器センター

このようになっており、取得するには

  • 看護師は2年、准看護師は3年以上の実務経験
  • 過去5年以内に認定委員会が認める学会などに出席し12.5点以上の点数を取得
  • 上記の要件を満たしてから認定講習会を受講
  • 認定講習会を受講後、認定試験を受験

このような流れが必要となります。

決して簡単ではありませんが、この認定資格を取れば、呼吸器科のプロフェッショナルとしての評価はもちろん、資格手当がつくことによるお給料アップも期待できます。

呼吸器内科の看護師になるには

呼吸器内科の看護師として働いてみたいと思ったら、さっそく求人情報をチェックしてみましょう。呼吸器内科看護師の求人は、

  • ハローワーク
  • 求人情報誌や求人広告
  • 一般の求人サイト
  • 看護師専門の求人サイト

などで情報を得ることができます。

呼吸器内科自体が増えているので、求人も十分あると考えられます。

大きな病院の病棟と街のクリニックとでは、同じ呼吸器内科でも、扱う病気や患者さんの状態がずいぶん異なるんですね。

終末期ケアや緩和ケアを学んで実践したいなら病棟が、軽い症状の患者さんが多い方がよければクリニックが良いですね。

呼吸器内科は増加中なので、求人情報もたくさん見つかるはずです。他科からの転職先としても人気ですよ。

患者さんとじっくり向き合える!ますます需要の高まる呼吸器内科

時代のニーズとともにうまれ、今後ますます増加が予想される呼吸器内科。喫煙などの生活習慣とも深く関わる病気が多いだけに、患者さんの性格をも含めた生活全般や、呼吸器以外の全身状態にまで細かく注意を払う必要があります。

これは、地味ながらも非常に大切な呼吸器内科看護師としてのお仕事です。急性期の患者さんは少ないですが、一人ひとりの患者さんと深くお付き合いできるのが、呼吸器内科の面白みと言えるでしょう。

このようなコミュニケーションスキルをはじめ、呼吸療法のスキルを磨けるのも呼吸器内科の醍醐味です。興味の湧いた方は、ぜひ求人情報をチェックしてみてくださいね。