もはや常識!?看護師の退職理由には「本音」と「建前」があった
憧れだった看護師として働く日々。しかし現実は激務とサービス残業に追われ、休憩時間も満足に取れず、夜勤で生活リズムは乱れがち。そして職場の人間関係は最悪…。
「もう辞めたい」「転職したい」と思い悩む看護師も多いのではないでしょうか。
看護師を辞めたい理由は人それぞれですが、いったいどんな理由があるのか、今回は看護師の転職理由をランキング形式で紹介します。
他の看護師はどんな理由で転職したのか気になりますよね。先輩看護師の上手い理由を参考にして、円満退社やスムーズな転職活動につながるよう活用していきましょう。
8割が辞めたいと思っている!看護師の転職理由ランキング
慢性的な人手不足に、人間関係のもめ事。夜勤など不規則な労働環境に、仕事内容と割りに合っていないと感じる給与額…。
日本医療労働組合連合会の調査によると、約8割弱の看護師が「辞めたい」と思いながら働いているという現状があります。
しかし、いざ上司に退職理由を伝える際、なかなか本当の理由を言えない人が多いのも事実です。
建前ですけど何か?上司に伝えた退職理由
実際に退職を決めた人は、上司にどのように辞める理由を伝えているのでしょうか。“建前”の退職理由で多いのは次の通りです。
- 結婚、出産、育児のため
- スキルアップしたいから
- 他分野への興味
- 健康上の理由
- 親族の健康状態、介護
- 転居、配偶者の転勤
結婚・出産などのライフイベントや体調不良、転居などは退職を申し出やすく、引き止めにも合いにくいですよね。円満退社をするためにも、こうしたやむを得ない事情を伝えることで、上司との話し合いを切り抜ける人が多いようです。
言えなかったけど実は…!?本音の退職理由とは
では辞めたい本当の理由はいったい何なのでしょうか。
順位 | 理由 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 勤務時間が長い | 21.9% |
2位 | 夜勤の負担が大きい | 17.8% |
3位 | 医療事故への不安 | 14.9% |
4位 | 休暇が取れない | 14.4% |
5位 | 上司との関係 | 11.3% |
6位 | 雇用形態に不満 | 8.6% |
7位 | 同僚との関係 | 7.1% |
8位 | 給与・待遇に不満 | 6.0% |
9位 | 看護の専門性が認められない | 5.9% |
10位 | 教育体制に不満 | 5.7% |
「あぁ、確かに」と納得できる理由ばかりですよね。この表から、約5人に1人が勤務時間の長さを理由に退職していることがわかります。
2位の夜勤の負担や、4位の休暇が取れないなどの理由と合わせると、勤務時間や労働環境の不満が転職理由の高い割合を示しています。
またその後に続く、上司や同僚との関係などの“人間関係”も、退職理由として注目すべきポイントになります。
だから看護師をやめたい!リアルな本音を徹底解剖
では看護師が辞めたいと思う理由をより詳しく見ていきましょう。
ここでは“本音”の転職ランキングをふまえて、看護師の辞めたい理由を「労働環境の不満」「人間関係」「給与・待遇」「仕事内容への不安」「その他」の項目別に分類しました。
その項目ごとに、看護師たちの真意を探っていきます。
看護師はもはや3K超え!過酷な労働環境への不満
まず「労働環境の不満」については、次のような理由が挙げられます。
- 人手不足で仕事がきつい、仕事量が多い。
- 長時間労働。
- 休暇が取れない。
- 休憩時間が十分に取れない。
- 退職者が多く、経験が浅いのに責任あるポジションに。
- 現場で求められることと学んできたことのギャップ。
- 夜勤が辛い。
これらの理由に関しては、全国的な看護師不足も影響しています。
2015年時点で約160万人の看護師が就業していてますが、厚生労働省の調査によると、高齢化社会に伴い2025年には約200万人看護職員が必要とされています。
一方、離職している潜在看護師は約70万人に上ると言われています。
過酷な勤務環境が看護師不足を招いている原因の一つになっており、このままでは、ますます慢性的な看護師不足が懸念されるでしょう。
看護師不足は、現場で働く看護師にとっても深刻な問題になっています。
長時間労働が続いたり夜勤が辛いと、健康面での不安につながります。責任のあるポジションを任されることのプレッシャーや、求められるレベルが実力とかけ離れている場合はストレスになってしまいます。
最近は看護師のライフワークバランスを重視した働き方ができる病院も増えてきています。体調不良やストレスで心身のバランスを崩す前に、自分にあった職場環境への転職を考えてみてもよいかもしれません。
看護師だからこそ!女社会に潜む人間関係の闇
次に「人間関係」についてです。看護師の職場は女性が多くて、女社会ならではの陰口や理不尽な嫌がらせ、無視など揉め事が多いという実情があります。
また上司や先輩の中には話し方が高圧的で、命令口調、笑顔がなく冷酷な態度の人もいて、職場の雰囲気が良くないと感じている人も多いようです。
ドクターの中には、自分は看護師より高い立場にいると勘違いして傲慢な態度で接してくる人もいます。逆に看護師の中には、医師・看護師以外の医療従事者であるコメディカルに対して冷たい態度をとる人がいます。
このように人間関係が悪くなると職場の雰囲気も悪化して、伝達ミスなどから医療事故につながる恐れが出てきます。絶対にあってはならない事態を防ぐために、どうすれば人間関係の問題を解決することができるのでしょうか。
いろいろなアプローチ方法があると思いますが、大事なのは「人は変えられない。自分が考え方や行動を変えるしかない」と気持ちを切り替えることです。
その上で次の点を心がけましょう。
- 働くスタイルの違いを認める
- 医師に必要とされる看護師になる
- 誰に対しても同じ態度で接する
人によって、「仕事優先」「家事・育児とのバランス重視」「夜勤・病棟勤務・土日祝日の勤務の有無」など違いがあり、仕事へのスタンスが異なるのは自然なことです。
そして医師に限らず、周りの人が何を必要としているのかを常に考えて、決して不必要に先走ることなく行動することで、お互いの信頼関係もでき仕事がしやすい環境になります。
でもこのように気持ちを切り替えられないほど、人間関係に悩み追い詰められている人もいるでしょう。その場合は信頼できる相手(上司・同僚)に相談したり、休職して心身を休めたりしてみましょう。
それでも復帰が難しい場合は、転職して場所を変えるという選択肢もあります。
給与・待遇に意義あり!給料は安く、異動やキャリアアップは難しい
「給与・待遇」に関しては、「賃金が安い」という不満が多く挙げられています。
実際、看護師の平均年収は労働者全体の平均に比べ高い傾向にあり、20~24歳が400万円前後で、40歳を過ぎたあたりからは500万円を超えます。しかし人手不足による激務やサービス残業もあり、仕事量の割には給料が安いと感じている人が多いようです。
その他の理由には、
- 結婚、育児など家庭との両立が困難。
- 希望の診療科に異動できない。
- キャリアアップが難しい。
などがあります。これらの理由はどれもストレスが溜まるものばかりで、仕事に対するモチベーションの維持も難しくなっていくでしょう。
現状に不満のある人は、看護師として働いていく上で「自分は何を優先したいのか」、そして「どこまでなら妥協できるのか」ということを明確にしてみることをオススメします。そうすることで次に自分が取るべき行動や選択肢が見えてくるでしょう。
仕事内容への不安は募る一方!今後どうなるの!?
「仕事内容への不安」としては、次のような理由になります。
- 思うような看護ができず、仕事の達成感がない。
- 医療、看護の高度化についていけない。
- 医療事故への不安。
十分な看護ができていないと感じている理由としては、「人員が少なく業務が過密」や「自分の能力や技量の不足」といった意見がありました。
この「自分の能力や技量の不足」については、上記理由の「医療、看護の高度化についていけない」や「医療事故への不安」にもリンクする内容です。
自分の技術を高めようにも、人手不足で休みも十分取れない環境では、勉強と仕事の両立は厳しいですよね。
また仕事の達成感に関しては、勤務場所によって差が出ています。
例えば、診療所や訪問看護、特別養護老人ホームではやりがいを感じている人の割合が多く、休憩時間が十分に取れない職場ほど、仕事の達成感も低い傾向がある、といった具合です。
これらの傾向は転職を考える際のヒントになるかもしれません。
このままじゃ続けられない!健康・体力に自信なし
「その他」の理由には、「家族に負担をかけていることに罪悪感がある」「健康・体力面での不安」などがあります。
自分や家族が病気になったり、何かトラブルがあっても休めず、気持ちの面で限界を感じている人もいます。また自分が休めば、人手不足の職場の人にしわ寄せが来ることを恐れて休めず、それがストレスにつながっている人もいるはずです。
ここまで「労働環境の不満」「人間関係」「給与・待遇」「仕事内容への不安」「その他」に分けて転職理由を見てきましたが、どの理由も関係しあって不満や不安につながっているという現状が浮き彫りになりました。
退職先、転職先にネガティブな理由を伝えるのはNG
いろいろ悩み考えた結果、「やっぱり辞めたい」「転職したい」となった場合、次に戸惑ってしまうのは退職先や転職先にどのように理由を伝えればいいのかということですよね。
どのような理由を告げるとスムーズに退職することができ、どのように退職理由を伝えると、転職先へのアピールにつなげることができるのでしょうか。
ここでは退職先・転職先別にその対処方法を紹介します。
辞めたいのに辞められない事態を防ぐための工夫とは
看護師の転職理由ランキングでもふれましたが、いざ上司に退職の意思を伝える際、“本音”を言える人は少ないと思います。
退職理由が、スキルアップや資格取得などポジティブなもの、家族や自身の体調不良や引っ越し、結婚・妊娠などやむを得ない理由の場合はそのまま率直に伝えましょう。
ただし人手不足の現場で仕事をしている場合、スキルアップや資格取得という理由だけでは引き止めにあう可能性もあり、慎重に話を進めるなど注意が必要です。
もし人間関係や職場環境、待遇の不満などネガティブな理由の場合、そのまま伝えると上司も嫌な気持ちになりますよね。いったん立ち止まって、プラスの理由につなげることはできないか考えてみましょう。
ただし嘘をつくのは望ましくありません。正直に辛い現状を話して、どうしても続けられないと伝える勇気を持つことも必要になってきます。
それでも退職の意思を認めてもらえない場合は、伝える相手(上司)を変えてみたり、別の上司や先輩に相談してみると流れが変わるかもしれません。
自分だからできる看護とは?明確な意志を示す
では無事退職できたとしても、次に頭を抱えるのは転職活動の際に聞かれる“前職の退職理由”ですよね。ポジティブな理由で辞めた場合は問題ありませんが、ネガティブな理由で退職する・した場合は注意が必要です。
この場合も、不平不満があったことを言うのではなく、環境を変えることで自分が成長できるポイントを伝えるようにしましょう。
そして転職活動で大事なポイントは、自分は「どんな看護をしてきたか、どんな看護ができるか、どんな看護をしていきたいか」を明確にしておくことです。
転職希望先へのアピールにつながると同時に、自分の中でも今後の働き方や看護に対する姿勢が定まるでしょう。
で、転職する際の履歴書や職務経歴書の書き方については、
「★後日リンク付★」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
看護師の需要は高い!自分の適性を活かせる職場探し
看護師は人の命を預かる大事な仕事です。自分のことで余裕がなくなり、仕事が疎かになると医療事故などを招く可能性が高くなり、大変危険です。
職場環境が変われば解消される悩みもあり、今の職場がすべてではありません。
看護師免許があれば病院や介護施設以外にも、離島診療所、企業の健康管理室、空港検疫官、シップナース、保健師、養護教諭など活躍の場はたくさんあります。
看護師は慢性的な人手不足のため、求人数も豊富にあります。辞めたい理由や自分の適性を見極めて、看護師としてどうありたいのかもう一度考えてみてもいいかもしれません。