看護師さんの辛い勤務環境

看護師から見た大学病院のメリット・デメリットと一般病院との比較

看護師から見た大学病院のメリット・デメリットと一般病院との比較

看護師が選ぶ転職先の1つに大学病院があります。大学病院とは大学に付属した医療施設で、大学付属病院や医大病院とも呼ばれています。

大学病院の特徴は、通常の診療行為のほかに研修医や看護師の教育、最先端医療に関する研究が行われていることです。そのため、大学病院では定期的に研究発表や勉強会が開催され、看護師も看護研修などに参加することができます。

実際の医療現場で実務を身につけながら、最新医療についても学べる病院として人気がありますが、その反面離職率も高く大学病院のメリット・デメリットをよく理解しておく必要があります。

今回は大学病院のメリットとデメリットを説明し、一般病院と何が違うのか、大学病院に向いている看護師はどんな人なのかを紹介しましょう。

看護師が大学病院で働く主なメリット4つ

まずは大学病院のメリットから紹介します。先ほども説明したとおり、大学病院は医療に関する教育や研究の場という側面を持っているため、日本の最先端医療に関わることができます。

症例が少ない病気の治療も、教本やビデオじゃなく実際に目で見る機会がありますし、貴重な体験ができることは間違いありません。

その他、看護師が大学病院で働くメリットは主に次のとおりです。

  1. 仕事がきちんと分業化されていて、看護業務に専念できる
  2. 教育体制が整っていて、医療知識のレベルアップができる
  3. 福利厚生が充実し、給料面も比較的高く安定している
  4. 将来、別の病院に転職する際も有利に働く

メリットその1、分業化されていて看護に専念できる

看護師に憧れて勉強も必死に頑張ってはきたけれど、実際の現場では看護というより介護かも。民間病院ではこんなことも当たり前です。

民間病院で働く看護師が今の仕事に満足できない原因の中に、看護がしたくて看護師になったのに毎日介護ばかりという人も多いかと思います。

もっと看護師らしい仕事がしたい!そんな人は大学病院で働くのが良いでしょう。

大学病院では業務の1つ1つが細かく分業化され、看護に特化して働くことができます。

看護以外の業務に手間をとられることなく、患者に向き合って手厚いケアを行うことができます。そのため大学病院は看護の質をアップでき、とても働きやすい職場と言えるでしょう。

メリットその2、勉強会が開催され教育体制が整っている

また先ほども説明しましたが、大学病院は医療機関と教育機関の2つの顔を持っています。

研修や学会が頻繁に開催され、最新の医療技術について学ぶ環境が整っています。

さらに、大学病院には新卒の看護師が多く働いています。経験10年もあればもう教育する側の立場になりますが、新卒の看護師を教育することで自分も学ぶことが多いのに気付かされます。

繰り返し指導することで自分にも病態や患者を見る目が養われ、勉強会に参加して最先端医療についても学べる、大学病院は看護師としてレベルアップするために最適な環境だと言えます。

メリットその3、公務員並みに福利厚生が手厚い

最近は民間病院も福利厚生が充実してきましたが、大学病院と比べたらまだまだ手厚さが違います。大学病院で働く看護師は公務員ではありませんが、給与面を含め福利厚生は公務員とおおむね横並びです。

民間病院では看護師の初任給は高くても、年収は他業種に比べ上がりにくいなどの問題があります。しかし大学病院で働く看護師の場合は、年収も公務員と同じように上がり、ボーナスや退職金に関しても公務員に見劣りしません。

ただし私立大学に付属している大学病院の看護師は、各病院独自のシステムに準じているので、都心部は良かったり、地方は悪かったりと差が大きいので注意してください。

メリットその4、将来転職の幅が広がる

大学病院はその他の病院では体験できない貴重な経験がいっぱいあります。例えば民間病院では2次救急までの対応がメインですが、大学病院は重病患者などの3次救急まで対応します。

3次救急の忙しさに慣れておけば、1次救急や2次救急の対応は余裕を持ってこなすことができるでしょう。3次救急に対応できる看護師は、将来転職活動を行うときにも有利に影響します。

また大学病院は他の病院に比べ医師と看護師の距離が近く、気軽に相談できる環境があります。

医師と接する時間が多い大学病院の看護師は、医師の行動も把握しているため病院内での連携がスムーズに運びます。このような大学病院出身の看護師は、医師とのコミュニケーションがうまく取れると評価が高いんです。

大学病院は民間の病院に比べて楽だとも、きついとも両方の意見があります。実際に残業や夜勤が多く体力的にきついと感じる部分もありますが、医師や看護師の人数が民間病院に比べ多いので、マンパワーで押しきれる力があるのが魅力です。

看護師が大学病院で働く主なデメリット3つ

大学病院で働くメリットについて説明しましたが、もちろんデメリットもあります。大学病院に転職を考えている看護師は、必ずデメリットも合わせて検討してください。

こちらが大学病院で働く看護師の主なデメリットです。

  1. 残業や夜勤も多く、仕事がハード
  2. 勉強会が頻繁にあり、面倒
  3. 採血や点滴ができない

デメリットその1、残業や夜勤も多く仕事がハード

メリットの部分でも説明しましたが、大学病院は他の病院にはない3次救急の対応があります。

そのため急な残業が強いられたり、夜勤も当然あります。

患者も1週間~10日程度で退院する人が多く、一般の病院より入れ替わりが早いため仕事もきついと感じる人が多いでしょう。

ただ、大学病院には医師や看護師が他の病院より多く在籍しているため、仕事量も人数でカバーできるのが特徴です。

休みは年間約120日と、他の病院に比べて多いほうですが、有給休暇についてはあってもなかなか消化はできません。

デメリットその2、勉強会が頻繁にあり、面倒

こちらもメリットの部分で説明しましたが、大学病院で勉強会が頻繁にあるというメリットは、反対にデメリットに感じる人も多いです。

勉強会に関しては勤務中ではなくプライベート時間に開催されることも多く、残業代も入らないし、休みが潰れることもあります。

自分のプライベートを大切にしたい人は大学病院の勉強会は苦痛に思えるでしょう。

デメリットその3、採血や点滴ができない

また、大学病院では研修医が採血や点滴を行います。

よほど忙しくても看護師が採血や点滴を行うことはないでしょう。

さらに一般の病院では看護師が行う抗がん剤投与や胃管の挿入などの手技も、大学病院では必ず医師が行います。そのため看護師はこれらの手技を経験する機会がないのです。

大学病院から他の病院に転職したとき、「大学病院の看護師は知識ばかりで何もできない」と言われることが多いのは医療業界でも有名な話です。

メリットも考えようによってデメリットになってきます。どういった仕事を望んでいるのか、どう働きたいかをもう一度よく考えてみて、大学病院の特徴が自分にメリットになるのか、デメリットになるのか判断してみましょう。

大学病院と民間病院を比較し大学病院の特徴をおさらい

大学病院のメリットとデメリットが理解できたところで、他の病院との比較をし、さらに大学病院について知識を深めてみましょう。

  大学病院 民間病院
仕事内容 採血や点滴は行わないが、高度な医療現場で看護に専念できる 介護よりの看護が多く、仕事がマンネリ化しやすい
教育支援 勉強会も頻繁にあり、教育のサポートが手厚い 大学病院ほどサポートされていない
勤務体系 日勤と夜勤の2交代制が多い 日勤のみや夜勤のみなどさまざま
年収 公務員並に上がっていく 初任給は高いがその後は上がりにくい
福利厚生 公務員並に充実している 病院によって差がある
求人情報 非公開求人が多い 多くが公開されている

大学病院というと新卒が多くて中途採用はしていないのかな?と不安になりますが、実は非公開求人で募集をしている大学病院が多いんです。

看護師の中途採用で大学病院に働こうと思ったら、まずは看護師の求人サイトに登録してコンサルタントに相談してみてください。

大学病院は民間の病院と違い、サポートが手厚く年収も上がっていくため、向上心のある看護師には人気の病院です。

大学病院にしか運ばれない患者もいるので、幅広い看護や治療を学ぶことができるのが民間病院との大きな違いですね。医療系のドラマを見て緊迫したオペ室で働く看護師などに憧れていた人は、大学病院で働くことをお勧めします。

大学病院に向いている看護師チェックリスト

大学病院で働く看護師についていろいろ説明してきましたが、ここで大学病院勤務に向いている看護師を紹介します。

  • 看護業務に専念したい
  • 最先端医療に携わりたい
  • 難病や特定疾患の看病をしたい
  • いろんな診療科を経験したい
  • スキルアップを目指したい

大学病院ほど大きな病院には保育所を完備している病院も多く、子育て中のママ看護師にも働きやすい職場と言えます。

大学病院のメリットで紹介した項目をデメリットと感じず、メリットとして受け入れることができれば大学病院はお勧めの転職先です。

大学病院は中途採用枠があり、中途で復職しても教育熱心な先輩看護師が手厚くサポートしてくれるため、不安なくスキルアップしていくことができます。

大学病院の求人を探しても非公開求人が多くて見付からない場合があるため、看護師求人サイトに登録してコンサルタントに大学病院の求人について相談してみましょう。

大学病院は教育に対してサポートが手厚いので、医療の分野からしばらく離れてしまった復職希望の看護師でも安心です。ブランクがあっても学ぶ意欲があれば、大学病院はとても働きやすい職場になりますよ。

看護観や働き方を見直して大学病院に転職しよう

大学病院は新卒の看護師が多いですが、その大半が別の病院へ転職してしまいます。しかし、辞めてから大学病院の良さが理解できたなど、転職を後悔する人も多いんです。

残業や夜勤で仕事がきつく思えても、その分給料や福利厚生などは公務員並みに手厚いので安心してください。また、大学病院は勉強会が頻繁に開催されるため、看護のキャリアアップも望めます。

大学病院で働くメリットが、看護師によってはそのままデメリットになります。

自分の看護観や働き方に対してもう一度確認し、将来のことも意識しながら検討してください。