保険料の無駄を防ぐ!医療保険で必要な特約だけを選ぶ方法
医療保険の特約って、「ほとんど役に立つものがない」という意見があるとご存じでしたか。
とにかく特約をつけておけば安心だと思っていろいろ追加しているあなた、もしかしたらそもそも保険で備えるべきリスクではないものに保険をかけていたり、保険料に対して保険金の額が少ない「コスパが悪い特約」に入っているかもしれません。
無駄な特約にお金を払わないために、使える特約と使えない特約に仕分けしていきましょう。
必要なのは大きなリスクに安い掛け金で備える特約
特約とは保険商品に追加するオプションで、特約単体では契約できません。
保障範囲を広げる特約、給付金額を上乗せする特約、特定の状態になった時に保険料支払いを免除する特約など、たくさんの種類があります。
- 通院特約
- 三大疾病特約
- 女性疾病特約
- 健康祝金特約
- 先進医療特約
- 生活習慣病入院特約
- 退院後療養特約
- 死亡・高度傷害特約
これはほんの一例ですが、たくさんあって、どれを選んだらいいのか判断に迷いますよね。特約を選ぶコツについて考えてみましょう。
特約は必要か?考え方のコツはリスクの頻度と大きさ
ズバリ、「起こる可能性は低い(頻度少)けど、なったときには貯金ではどうしようもないほど経済的な負担が大きい(影響度大)」リスクに備えられる特約は、追加で契約しておくべきです。
もともと保険は、発生頻度は小さいけれど起こった時のダメージが大きい出来事への対処法です。このダメージというのは精神的・肉体的ダメージのことではなくて、経済的ダメージを指します。
リスクの種類 | 具体例 | 対応 |
---|---|---|
頻度大 金銭的ダメージ小 |
風邪 | 低減 (手洗い・うがいで予防) |
頻度大 金銭的ダメージ大 |
雨のたびに自宅の裏山が崩れる | 回避 (引越し) |
頻度小 金銭的ダメージ小 |
台風で網戸が壊れる | 保有 (自己資金で対応) |
頻度小 金銭的ダメージ大 |
高額の治療費がかかる病気 | 移転 (保険加入) |
「なる可能性は低いけれど、なったときには経済的なダメージが大きい」病気などへの保障が、もともとの医療保険の契約内容では不十分なら、特約をつけておくべきです。
発生頻度が高いリスクに備える特約は、保険会社からすれば保険金を支払う頻度が低いため、掛金が安いのが特徴です。
保険料に見合った保険金が受け取れるのかもチェック
支払った保険料に見合うだけの保険金が受け取れるのかも確認しておかないといけません。
特約に限りませんが、保険には保険金をもらうための条件が厳しいものも多いです。「せっかく特約に入ったのに、条件をクリアできずに保険金が下りなかった」という人もいるので注意が必要です。
通院特約は必要か?がん保険の通院保障以外はコスパが悪い
では具体的に、主な特約の必要性について考えていきましょう。まずは通院特約です。
通院特約は、病気やケガで通院した時に通院給付金が出る特約です。治療処置を行わない場合は対象外になるなど会社によって条件は違いますが、多くの保険会社では特約で通院保障を追加できるようになっています。
「最近は入院を早めに切り上げて通院での治療を行う病院が多いので、通院特約をつけておいたほうがいいですよ」が売り文句ですよね。
本当に必要なのか、検討してみましょう。
普通の医療保険に通院特約は不要!
まず、一般の医療保険には、わざわざ通院特約をつける必要はありません。
例えばA社の保険で、入院前後の通院に1日3,000円の通院給付金が出る特約をつけると、月々の保険料はこのようにアップします。
- 30歳男性:321円アップ
- 40歳男性:432円アップ
※2016年自社調べ
これくらいならつけておいた方がいいような気もしますが、支払う保険料ともらえる保険金を照らし合わせてみるとどうでしょう。
5年間の保険料(40歳男性) | 25,920円 |
---|---|
入院後10日間通院したときにもらえる保険金 | 30,000円 |
※アフラック医療保険シミュレーションより算出
しかも通院給付金を請求するためには、病院で診断書や通院証明書を発行してもらわないといけません。診断書発行には2,000~5,000円程度の手数料がかかります。
保険料、手数料、手間と、もらえる給付金の額とを比較して考えると、コストパフォーマンスが悪い特約になる場合もあります。
がん保険には通院保障をつけておくのがおすすめ
ただし、がん保険の場合には状況が違ってきます。
がんの通院治療は年々増えていて、しかも長期間の通院が必要になります。がん保険に付帯できる通院特約は給付金も10,000円くらい出るものが多いですからコスパもかなり良いといえます。
例えば保険会社B社のがん保険では、30歳男性の場合月々410円で、通院給付金10,000円が出る特約を付帯することができますよ(2016年自社調べ)。
最近ではもともとの契約に通院保障がついていることもありますが、通院保障がないがん保険や医療保険の場合は、通院特約をつけるのがおすすめです。
ただ通院特約ならなんでもいいというわけではありません。追加するならこんな特約を選んでください。
- 入院していなくても通院保障を受けられる(入院なしで治療することも多いため)
- 通院給付の支払期間や日数が十分ある(通院治療が長引くことが多いため)
また、診断給付金(がんと診断されたときにもらえるお金)が多い保険なら、診断給付金から通院での治療費用を出すことができるので、わざわざ通院保障をつける必要はありません。
保険全体のバランスを見て特約を追加するか決めてください。
三大疾病特約は不要論の王様だが検討すべき特約も
三大疾病とは日本人の死因ベスト3である「がん・脳卒中(脳梗塞など)・急性心疾患(急性心筋梗塞など)」を指し、これらの病気になったときに使えるのが三大(特定)疾病関連の特約です。
三大疾病関連の特約には、このようなものがあります。
- 三大疾病で「特定の状態になったとき」に保険金がもらえる特約
- 三大疾病になると、入院給付金の支払限度日数が無制限になる特約
- 三大疾病になると、以後の保険料が不要になる特約
この表を見てください。三大疾病になると、入院日数も金額もかかることがわかります。
病名 | 平均入院日数 | 平均医療費(3割負担額) |
---|---|---|
胃がん | 28.5日 | 約36万円 |
脳卒中 | 102.1日 | 約60万円 |
急性心疾患 | 20.4日 | 約26万円 |
「費用が高額になるし心配だから、やっぱり三大疾病特約はつけておきたい」と考える人が多いようですが、ニーズが高いのに「使えない」と言われるのはなぜでしょう。本当に使えない、不要な特約なのか、検証してみましょう。
三大疾病治療給付金特約の給付条件は厳しい
三大疾病の特約が「使えない」と批判される最大の理由は、「三大疾病で特定の状態になったときに保険金がもらえる特約(名称は三大疾病治療給付金特約など)」の給付条件の厳しさにあります。
例えば、一番入院日数が長く、医療費も高額になる脳卒中については、このような条件を満たさないと保険金がおりません。1ヵ月入院して回復した場合は、給付金がもらえないのです。
- 脳卒中の対象はくも膜下出血、脳内出血、脳梗塞のみ
- 脳卒中と診断された日から60日以上言語障害、運動失調、麻痺などが続いたとき
最近では下記のような支払い条件を緩和している保険会社もありますが、その場合には給付金額が少ないのがデメリットです。
- 治療を開始した時点で給付金がもらえる
- 20日以上入院したとき、または所定の手術をしたときに給付金がもらえる
急性心疾患だと20日くらいで退院する人も多いですから、「20日以上入院」という条件でも、給付金をもらえない可能性もあります。
特約を契約しているのに給付金がもらえないとか、給付金が降りるまで時間がかかりすぎるというケースがあるのです。
三大疾病治療給付金特約で保険料が1,000円以上アップ!?
次に三大疾病治療給付金特約をつけた場合の保険料について見て行きましょう。給付条件が異なる特約の、保険料と給付金をまとめました(30歳男性の場合)。
<60日以上所定の状態になったとき500万円の給付金がもらえる保険A>
特約なしとの保険料差額/月 | 1,830円 |
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20年間でかかる特約保険料 | 439,200円以上※ |
※特約が10年更新のため保険料が上がる可能性あり
<20日以上入院または所定の手術で50万円の給付金がもらえる保険B>
特約なしとの保険料差額/月 | 1,135円 |
---|---|
20年間でかかる特約保険料 | 272,400円 |
保険Aの場合は、月々の負担額がかなり増加しますね。Bでは負担額は少し安くなりますが、給付金の額が大きく下がってしまってコスパが悪い印象です。
退院できる三大疾病なら、本契約と貯金で乗り切れる
三大疾病の給付金特約をつけなくても、入院時の入院給付金や手術時の手術給付金は他の病気と同じように出ますし、高額療養費制度を使えば1ヶ月毎の医療費を抑えることができます。
高額療養費制度というのは、保険証を持っていれば誰でも使える、健康保険の制度です。医療費が高額になったとき、収入によって定められた自己負担額の上限を超えた分がキャッシュバックされます。
高額療養費制度を使うと、70歳未満で年収約370~770万円の人が、脳卒中で102日間入院し、60万円の自己負担額がかかったときにはこうなります。
返ってくる金額=347,712円
※医療費が全て保険診療の範囲内と仮定して計算。入院が3ヶ月に渡り、それぞれの月に20万円ずつかかった場合。
三大疾病払込免除・入院日数無制限特約は要検討
「三大疾病で特定の状態になったときに保険金がもらえる特約」の必要性は高くないことをご説明しました。
ただ、注意しておきたいのは、要介護者の中で脳卒中にかかっている人の割合が一番多いことです。
平均的な入院日数で退院できる場合は貯金や公的制度の活用で乗り切れそうですが、寝たきりになってしまうと負担はどんどんかさんでいきます。重度の脳卒中で寝たきりになる確率は低そうですが、なってしまったときには経済的なダメージが大きいですよね。
もちろん障害年金を受けられるはずですが、保険でも備えておきたいところです。このリスクに備えておくために、この2つはおすすめしたい特約です。
- 三大疾病になったら、入院給付金が出る日数が無制限になる入院日数無制限特約
- 三大疾病になったら、それ以降の保険料の払込が不要になる保険料払込免除特約
入院給付金が途切れる心配や、保険料の負担を心配しなくてよくなります。特に貯蓄がなかなかできない人にはおすすめです。
女性疾病特約・健康祝金特約はどちらも女性に人気だが必要?
次に取り上げるのは、女性に人気がある女性疾病特約と健康祝金特約です。
「女性特有の病気が心配」とか「保険料が無駄になっちゃうのは嫌だ」と考える女性のニーズに応える特約ですが、不要だといえるでしょう。その理由をご説明します。
女性疾病特約は普通の医療保険とのダブリが多い
まず「女性疾病特約」です。その名の通り、女性特有の病気を手厚く保障してくれる特約です。
具体的には、女性特有の病気になったら入院給付金や手術給付金が上乗せされます。
しかし、特約をつけなくても、入院給付金や手術給付金はもちろん本契約から給付されます。しかも、女性特有の病気だからといって治療費が高くなるわけでもないですし、そもそも、女性だからといって女性特有の病気にだけなりやすいわけでもありません。
保障内容の重複になるので、本契約の内容が充実していれば、女性疾病特約は必要ありません。
女性疾病への保障の必要性について詳しくは「女性保険って必要?女性が知っておきたい保険の選び方」で解説しています。
健康祝金特約は払ったお金が返ってきているだけで意味なし
健康祝金特約は、一定期間入院せずにいると、祝金やボーナスという名目でお金がもらえる特約です。
「掛け捨てじゃないから、保険料が無駄になってない感じがして嬉しい」と考える人も多いのですが、自分が払ったお金が返ってきているだけです。しかも、入院したらもらえなくなってしまうので、多めに払っていた保険料は全く返ってこなくなり、かなり損をしてしまいます。
そもそも、入院に備えて医療保険に入っているのに、入院しないときに備えて特約をつけるということ自体が矛盾しているのではないでしょうか。
実は、私は以前にこのタイプの保険に入っていたのですが、保険に入る目的を十分に考えていなかったゆえの失敗だったなぁと後悔しています。
先進医療特約は必要!大きなリスクに安い保険料で備える
最後に先進医療特約について説明します。先進医療というのは、厚生労働省に認められた「ある程度実績を積んだ、新しい治療方法」です。
先進医療を実施している病院は限られていて、しかも自分の症状がその治療法にあっていないと受けられません。
「実際に先進医療を受ける可能性は低いし、自分で受けるかどうか決められるので、先進医療特約は不要」という意見もあるのですが、「発生頻度は低いが、発生時の経済的ダメージが大きい」ことから、特約をつけることをおすすめします。
先進医療は健康保険の対象外なので、全額自己負担になります。すべての先進医療が高額なわけではありませんが、がんの治療などで行われる重量子線治療などは、300万円程度かかります。受けるとなると、大きな経済的負担ですよね。
それに対し、先進医療特約はたいてい100円程度で追加でき、保険料は大きな負担ではありません。
月々100円ほどで300万円の治療にも備えられるなら、コスパもいいですよね。
必要な特約、不要な特約まとめ
おすすめしたいのは、がん保険の通院特約、三大疾病入院日数無制限特約、三大疾病保険料払込免除特約、先進医療特約です。
特約を選ぶとき、保険料と給付金のコストパフォーマンスは大事な指標になりますが、それに加えて「可能性は低いが経済的ダメージが大きいリスクに備える」という視点も大切だとご理解いただけたでしょうか。
特約って勧められるとつけておきたくなるものですが、月々負担できる保険料にも限りがあります。本当に必要な特約だけを選ぶようにしてください。